大学教授を競争させることの是非を問う
教授間の競争が教育を劣化させるか?

   16歳でMITに入学し、オバマ政権の経済顧問を務めるサマーズは28歳で終身雇用を約束された 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images

 前回は、大学教授の終身雇用保障権(テニュア)という長期契約を巡る競争が、アメリカ学界の活力の源になっている様子を紹介した。多くのアメリカの大学教授(フル・プロフェッサー)候補者は、博士号を取り、まず助教授として就職する。ほとんどの場合、これは長期契約ではない。日本のように「助教授になった場合ほぼ終身雇用」とはいかない。

 日本でも任期制の採用は増えてきたが、それでもほとんど場合、任期が来れば、任期は更新されることとなっている。(日本でも制度的には色んなものができているようなのでのちに紹介したい)アメリカではテニュア審査を通らない限り、終身雇用はあり得ない。通常は7年契約の6年目にテニュア審査を経て、この狭き門をくぐり抜けたものに終身雇用が与えられる。

 例外もある。クリントン政権の財務長官をつとめ、オバマ政権の経済アドバイザーでもあったローレンスサマーズ前ハーバード大学総長のケースがそれだ。16歳でMITに入学し、28歳でハーバード大学で経済学博士号を取得したサマーズ氏。彼は史上最年少である、28歳(博士号取得の翌年となる)でハーバード大学からテニュアを獲得している。これは異例中の異例である。

 このテニュア制度には根強い批判もある。大学に就職できた助教授たちのうち、終身雇用を求めるものは、その審査のレール(テニュア・トラック)に乗る。この候補者たち誰もが不安を抱きながら、テニュア審査までの数年間、人生のほぼすべてを捧げ、緊張感あふれる生活を送る。

 もちろん、テニュアを目指さない者もいる。 “ノン・テニュア” 、いわゆる短期契約の助教授の場合がそうだ。教育と学生指導に集中するか、ポスドク(博士号取得後の若手研究者)のように研究室に所属して研究を行うものだ。彼らは昇格や終身雇用に移行できるチャンスは少ない。

家族を捨ててテニュア!

 就職したばかりの助教授たちに課せられる任務はだいたい以下の通り、ポスドク時とは違い、すべて期間内に一定の成果が責任を持って求められるストレス・フルな内容だ・

1・独創的研究成果を上げて学界で認められる
2・授業と学生指導
3・グランド(研究費)を獲得する
4・大学雑務

 終身雇用の教授たちの高齢化や大学基金の運用難で大学経営が悪化する中、米国の大学は終身雇用の枠を減らしており、テニュア獲得の競争は激化する一方だ。2005年のアメリカ教育省の統計によれば、アメリカ大学教員の68%がテニュアを取得していないかテニュアを目指さない者である。またアメリカ大学教員の約半分がパートタイムの教員であるという。

 アメリカの大学内では「テニュアを取ったと同時に離婚した」とか「家族を捨ててやっとテニュアを取った」といったただならぬエピソードが出回っている。前回紹介したように、テニュア審査を巡って、殺人事件も起きている。

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