平松邦夫×内田樹「『教育はビジネス』という勘違いがクレーマー親を生む」
「教育は誰のためにあるのか」とことん語ろう 第1回
写真向かって左から平松邦夫市長、内田樹教授、本誌編集長

 現代思想から政治、教育、武道やマンガ論まで、現代を代表する論客であり、1月に21年間勤めた大学での「最終講義」を終えたばかりの内田樹・神戸女学院大学教授。実は昨年6月から大阪市の市長特別顧問という役職を務めている。その内田氏が、平松邦夫大阪市長と、「教育のあり方、果たすべき役割について」というテーマで語り合った。

 『おせっかい教育論』という座談本の共著もある2人のトークセッションは自在に広がり、大阪から考える、刺激と示唆に満ちた教育論となった。その模様を再構成し、3回に分けて紹介する。司会は、現代ビジネス編集長の瀬尾傑。

[構成:松本創]

瀬尾: 教育というと、最近新聞で気になる記事がありました。ある小学校で親御さんが学校から訴えられたという報道です。

 学校の中で子どもにトラブルがあり、これに対して問題解決を親御さんが要求したんですが、これがなかなかうまくいかない、と。それで何度も何度も先生に要求をするうちに、先生のほうが精神的に参ってしまった。学校側としては常識はずれの要求で、先生も休職に追い込まれ、業務にも支障をきたす状況ということで、結果的にクレーマーとして訴える騒ぎになった、というのです。

 事件の中身については、まだよく分からないこともあります。ただ学校の現場はこれほど追い詰められているのか、と。親と教師が、ともにこんな緊張関係といいますか、萎縮するような状況でやってるのだということをあらためて思い知らされた。内田先生はこの件についてどういうふうにお思いになられますか。

 クレーマーはなぜ学校に食ってかかってくるのか

内田: 僕は初等教育・中等教育の現場はよく知らないんですけれども、自分自身が大学の教師で、一昨年まで教務部長をやってたんで、親の側からのクレームがどんなものかは現場で経験してます。端的に言うと、そういうこと言って来る人たちっていうのは心理的に非常に未成熟な方なんですよね。

 自己利益の追求にはきわめて熱心なんだけれど、公共性についての配慮がない。さまざまなロジックを駆使するんだけれども、長い目で考えて、教育現場を改善して、質のよい教育環境を形成していこうという発想が欠如している。