選挙
当初は柔軟だった公明党をキレさせた菅直人の「稚拙な言動」
民主党内からも信頼されない首相の人徳
公明党の対決姿勢で菅首相は窮地に     PHOTO:gettyimages


公明党が首相・菅直人と対決するようになった経緯を振り返ると、政治は人間の営みだと、つくづく痛感する。

政治家は政策が正しいかどうかだけで判断するのではなく、その時々の力学や信頼関係を踏まえて態度を決めていく。当然、感情も交ざる。

公明党が態度を硬化させたのはあまりにも配慮に欠ける菅の言動が原因だ。これでは、菅が施政方針演説や、衆参本会議での代表質問に対する答弁で、公明党に平身低頭して協力を呼び掛けても、受け入れられるわけがない。

公明党は昨秋の段階でまだ柔軟だった。代表・山口那津男は昨年10月2日、公明党大会後の記者会見で「倒閣そのものを目的にしない。国民の望む政策実現に力を発揮する」と語り、「是々非々路線」を打ち出していた。このころ、公明党幹部は「2010年度の補正予算案には、金額が多かろうと少なかろうと、賛成する」と語っていた。

ところが、菅が9月26日、公明党の支持母体である創価学会の最高指導者・池田大作名誉会長が設立した東京都八王子市の東京富士美術館を訪れた経緯が次第に明らかになる。この訪問は公明党幹部にとって寝耳に水のこと。幹部の誰かは知っていたのだろうと思って情報交換したが誰も知らされず、さらに創価学会の中枢部も知らなかったことも判明した。

この訪問は菅と官房長官・仙谷由人(現・民主党代表代行)が決め、首相補佐官・阿久津幸彦(現・内閣府政務官)が交渉役となって進めた。学会側の窓口は副会長クラスだが、政界との窓口ではなく、学会内でも異端とみなされている人物だった。

そもそも、学会内では、学会批判の急先鋒だった菅に対する不信感が強い。その菅が参院で過半数割れし、代表に再選されると、闇雲に接近をしてきたことで「かえって信用できない」となってしまった。


そうしているうちに、中国漁船衝突事件の事後処理や日中首脳会談の悪化などによって菅政権が急速に失速した。

 そして、11月3日の秋の叙勲で、政府は公明党・創価学会の宿敵である元公明党委員長・矢野絢也に旭日大綬章を贈った。同5日には、中国漁船の衝突場面を写したビデオが流出した。この日夕、知り合いの公明党幹部はこうつぶやいた。

「この政権は末期症状だな。付き合っても意味がない…」

小選挙区では自民党と選挙協力

 この2つの出来事が公明党が態度を硬化させる転換点だった。この直後から、公明党は当初は賛成する方針だった補正予算案反対に傾いていく。

 その後も、法相・柳田稔の失言による辞任、仙谷や国土交通相・馬淵澄夫の問責決議可決-と続き、昨年暮れ、公明党は次期総選挙で小選挙区でも戦うことを内々に決めた。

公明党が小選挙区で戦うということは、自民党と選挙協力することを意味する。自民党の票がなければ小選挙区での当選は到底見込めないからだ。

 こんな公明党の内情を知っていたのだろうか? 菅は野党を刺激し続けた。

「昨年の臨時国会で真面目に国会対応し、それに集中し過ぎたのが私の反省だ」(12日、民主党全国幹事長会議)

「野党が(与党との協議に)いろいろな理由を付けて積極的に参加しようとしないなら、歴史に対する反逆行為」(13日、党大会でのあいさつ)

「ややもすれば野党には(税と社会保障などの)議論から逃げようという姿勢が見える」(24日、党両院議員総会)

協力しない野党が悪いかのような発言を聞いて、野党が協力しようと思うはずがない。ものを頼む時には辞を低くするのは当たり前のことだ。


菅の発言が衆参両院本会議における山口や幹事長・井上義久の政権批判につながった。

「公明党は、あなたの政権担当能力に大きな疑問を持たざるを得ません。マニフェストを修正するのであれば、改めて信を問うべきです。それができないのであれば、総理の職を潔く辞すべきです」(27日の衆院本会議で井上)

「歴史の審判を受けるのは、国民を見失い、自己都合で内閣の延命だけを考え、欺瞞と変節に満ちている総理、あなた自身ではないですか」(28日の参院本会議で山口)

山口も井上も、菅に対して衆院解散か、内閣総辞職の選択を迫った。公明党首脳が強硬方針を打ち出した以上、公明党が赤字国債発行特例法案、子ども手当法案など予算関連法案に賛成に回ることはないだろう。

そうなれば、政権は行き詰まる。その責任の大半は民主党内でさえも信頼されない菅自身にあることは言うまでもない。(敬称略)
 

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