経済の死角

特別レポート 会社の急所なのに
ああ、人事部の人事知らず

 取材・文 井上久男

2011年02月03日(木) 週刊現代
週刊現代
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この不況なのに、人事まで仕事の邪魔をするなんて・・・ 〔PHOTO〕gettyimages

[文:井上久男(ジャーナリスト)]

「ベンチがアホやから野球ができへん」---。かつてプロ野球の江本孟紀氏が語ったとされる言葉だが、「人事がアホやから仕事ができへん」と嘆くサラリーマン諸氏は多いだろう。なんで、人事部は肝心の人事で間違えるのか。その理由は至極簡単、人事が社員のことを知らないから。そんな人事部なんていりません。

システムをいじってばかり

「あなたたちは優秀な人材を囲い込んでいる。会社が危機的状況にあるのにその危機感がない。これから人事制度を大きく変えてそれができないようにしますので、そのつもりでいてください」

 大手電機メーカーNECの遠藤信博社長は、昨年11月12、13の両日、同社玉川事業場であった社長主催の幹部研修で、約200人を前にこう宣言した。同席した牧原晋人事部長を名指しし、「牧原君すぐにやってくださいよ」と命じる厳しさだった。

 遠藤社長の怒りの背景を、NEC関係者が解説する。

「クラウドコンピューティングなどの新規事業や海外事業を強化するために、優秀な人材を配置転換させようとしていますが、各事業部は人材を囲い込み、新事業にエース級を送り込もうとしない。ビジネスと連携した人事になっていないことに遠藤社長の怒りが爆発したのです」

 パソコンでは国内トップのシェアを誇るNECだが、すでに海外からは撤退するなど危機的状況にある。2010年度の中間連結決算では大手電機8社の中で唯一、最終赤字(270億円)を計上し、「電機業界の一弱」と揶揄されている。この20年間、同社は家電、プラズマ、半導体などの事業、中央研究所や横浜事業場といった資産を売り払い、リストラと人員削減で凌いできたが、それも限界に達しつつある。

 こうした苦境の中、昨年4月、15人抜きで常務から新社長に抜擢されたのが「NEC最後のエース」と呼ばれ、海外事業に実績のある遠藤氏だった。遠藤氏の計画は明快だ。少子高齢化で国内市場には期待できないから、売り上げに占める海外比率を'17年度までに50%に引き上げる。そのためには、優秀な人材を海外向け事業に振り分けなければならない。

 ところが、とりあえず収益の上がっている国内パソコン事業にばかり人材が集中し、新規事業をやろうにも、現場の上司が人を出さない。なによりも問題は、どこに優秀な人間がいるのか、人事部が把握できていないことだ。

「うちの人事部は、査定制度などの人事システムを机上の空論で構築することは得意ですが、どの人材をどのビジネスに起用していくかを考える前向きな人事制度を作り出すのは苦手。会社人生をずっと人事部で過ごす人も多いため、事業の現場のことを知らない人事マンが多すぎる」

次ページ  あるNECのOBはそう語るが…
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