牧野洋の「ジャーナリズムは死んだか」
2011年01月27日(木) 牧野 洋

日本の大新聞は「マックペーパー」だ! 「日付モノ」「逆ピラミッド型」と決別しアメリカのジャーナリズムを変えたWSJの改革

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25日付のUSAトゥデイ1面。短いニュース記事を寄せ集め「マックペーパー」とも皮肉られたが、近年は独自のフィーチャー記事にも力を入れている

 ファーストフードのマクドナルドをもじって「マックペーパー」と呼ばれた新聞をご存じだろうか。発行部数180万部を誇るアメリカ最大の全国紙USAトゥデイだ。

 短い記事、派手な色使い、スポーツ報道重視---これがUSAトゥデイの伝統的な特徴だ。マクドナルドでさっと食事を済ませるようにさっと読めてしまう新聞という意味で「マックペーパー」と皮肉られた。来年で創刊30周年だが、ジャーナリズムの世界で最も栄誉あるピュリツァー賞を1度も受賞したことがない。

 紙面作りの点ではUSAトゥデイは最も日本の全国紙に近い。アメリカの新聞として異例なのだが、日本の新聞と同様に「ジャンプ」しない記事が多いのだ。アメリカの新聞ではジャンプ、つまり1面から中面へと記事が続く長い記事が当たり前だ。ジャンプしない短い記事が中心であるからこそ、さっと読めるのである。

 USAトゥデイと対極にあるのが経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)だ。長文の読み物である「フィーチャー記事」中心のスタイルを確立したパイオニアとして知られている。第2次大戦中の1940年代に、いわゆる「日付モノ」「逆ピラミッド型」が象徴する速報ニュース(ストレートニュース)をわきに追いやったのである。

 前回(「脱記者クラブ」を宣言したWSJ)では、「WSJ中興の祖」バーニー・キルゴアが推し進めた改革の一環として、WSJがデトロイトの自動車記者クラブを脱退したいきさつを書いた。デトロイト支局が送ってくる「プレスリリース原稿」がキルゴア改革にそぐわなかったからだ。

 キルゴア改革こそWSJ流フィーチャー記事の生みの親だ。これによってアメリカの新聞ジャーナリズムに大きな変化が起きるのである。WSJ出身のベテランジャーナリストであるディーン・スタークマンによれば、ジャーナリズムの世界でキルゴアが果たした役割は、精神分析の世界でフロイトが果たした役割に匹敵するという。

 WSJの新編集局長にキルゴアが就任したのは1941年2月。若干32歳だった。前回に続いて『ワールドリー・パワー』と『レストレス・ジーニャス』の2冊を基にしながら、WSJの1面記事がどう変わったのか紹介したい。新聞報道の質を高めるにはどうしたらいいのかを考えるうえで、1つの物差しになる。

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