政治

雑誌 ドクターZ
天下りですが、なにか?

 年末年始は慌ただしい。情報チェックもつい疎かになりがちだ。官僚はこうした間隙をついて、ちゃっかり天下りをする。

 今年は1月1日付で、過去に例をみない「悪質な」天下りが行われた。わずか4ヵ月前まで経済産業省資源エネルギー庁長官だった石田徹氏が、所管企業である東京電力の顧問に天下ったのだ。報酬は支払われるが、公表されていない。

 東電は、通産省時代から同省OBを受け入れてきた典型的な天下り先だ。エネ庁長官経験者も石田氏で2人目。'00年にはエネ庁で部長を務めた元通産省基礎産業局長の白川進氏が東電入りし、昨年6月に副社長で退任した。石田氏も6月の株主総会で取締役に就任するのだろう。ちなみに、経産省は各地方の電力会社を有力な天下り先としているが、最も格上が東電で、関西電力、その他の地方電力という序列になっている。

 読者もご記憶だろうが、民主党は天下り根絶を訴えて政権交代を成し遂げた。だが、政権の座につくと2ヵ月も経たないうちに、旧大蔵省事務次官の斎藤次郎氏を日本郵政社長に据えた。さらにその際、日本損保協会副会長だった坂篤郎氏(大蔵省OB)を日本郵政副社長に充て、空いた損保協会副会長には牧野治郎元国税庁長官が就任した。

 損保協会副会長ポストは代々財務省OBの指定席だったので、この時点で霞が関は民主党政権下での天下りは容認されたと受け止めた。それでも、損保協会は元は大蔵省所管だったとはいえ、現在は金融庁の所管。そのため、牧野氏は財務省が監督している業界に天下ったわけではない、という薄っぺらな言い訳がかろうじて通用した。

 しかし、今回の石田氏の天下りには、表面的な取り繕いさえもない。直前まで直接所管していた企業(業界団体ですらない!)に、監督官庁のトップがいきなり天下ったのだ。こうなると、石田氏がエネ庁長官時代、東電に対して何か特別な便宜を図ったりした可能性はないか、などと疑う余地が出てくる。

 なぜ所管先の企業に退官後わずか4ヵ月で天下れたのか。メディアは「国家公務員法では以前、退職後2年間は関連業界に再就職できない規定があったが、'08年の改正法施行で自ら就職先を探す場合は制限がなくなった」と解説しているが、事実の一面しか伝えておらず、ミスリーディングだ。

確かに再就職制限はなくなったが、実力での再就職を妨げないという趣旨であり、それを担保するために、退職前に便宜を図っていなかったか、役所の斡旋はなかったかなどをチェックする再就職等監視委員会の設置もセットになっていた。ところが、民主党政権は監視委の委員選定もせず、休眠状態にしている。官僚に迎合して、厳しいチェックを怠っているのだ。

 また、役所による天下り斡旋は法律違反なので、東電側が就任を要請したという書類が形式的に作られた可能性もある。そういう場合、文書自体は役所が用意し、天下りを受け入れる会社はサインをすればいい、というところまで段取りをするのが「役所の常識」だ。そんな茶番劇を監視するためにこそ監視委が必要なのに、それが機能していないから、官僚たちは堂々と天下りを謳歌するのだ。

 民主党は一昨年、2万5000人の天下りのために12兆円もの税金が使われていると訴えて政権を奪った。だが今は、天下りをよりいっそう拡大し、その一方で増税しようと目論んでいる。ふざけるにもほどがある。

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