第一回 村上もとか「『JIN-仁』に隠された坂本竜馬と南方仁の誰も知らない秘密をお教えしましょう」

 都内某所にあるという伝説のエスプレッソカフェ『Cafe de Shimaji』。著名な作家、気難しい学者、多忙な経営者たちがこっそり集い、至高のNespressoを楽しむ、このサロンの主宰者、島地勝彦氏が毎月、大物ゲストを招待。大人の遊びと人生の愉しみについて語り明かす。記念すべき第1回は、あの医療ロマンコミック『JIN-仁』の作者、村上もとか氏が訪ねてきた。

撮影:立木義浩

シマジ 『JIN-仁』の大ヒットは凄いです。発行部数はすべて合わせると800万部だそうですね。テレビ視聴率はいつも軽く20%を越えて、NHKの大河ドラマを喰ったという話じゃないですか。

村上 有り難うございます。おかげさまで、明日から約1年間、パリを皮切りに、世界各国へ漫遊の旅に出かけてきます。ゆっくり充電してまいります。

シマジ そんな大旅行の前の多忙のなか、貴重な時間を取っていただいき恐縮です。有り難うございます。

村上 いやいや、シマジさんには『JIN』を始める前に大変お世話になりましたから。じっさいシマジさんの紹介で脳外科手術に白衣を着て手術現場に立ち会えなかったら、あの作品は臨場感をもって書けなかったでしょう。すべてはシマジさんの人脈のお陰です。

作家と編集者の運命的な関係

シマジ 村上もとかファンの脳外科医がたまたまいたからうまくいったんです。さあ、まずはこのエスプレッソをどうぞ。

村上 ありがとうございます。うーん、すばらしい香りですね。強い味わいとともに、深い木のようなアロマを感じます。シマジさんが名編集者とは存じ上げてましたが、こんなにエスプレッソを淹れるのが上手とは知りませんでした。

シマジ ふふふ、大したことはありません。いまお出ししたのは「ローマ」というテイストで、私は原稿を書く前に、これを味わっています。この深い香りが海馬を刺激し、リラックスすると同時に脳の奥から新しいイマジネーションが沸いてくるような気がします。

村上 しかし、こんなに本格的なエスプレッソを淹れるのでは毎回、準備も後片付けも大変でしょう。

シマジ このカフェは私ひとりでやっているんですから、そんなに手間はかけられません。「ネスプレッソ」というエスプレッソマシンがあれば、簡単に誰でもすぐに淹れられます。すべてカプセル式なので、準備も後片付けも不要ですしね。

 実は、あるミシュランの星付きのフレンチレストランがこのネスプレッソを使っているのを知って、どうしても欲しくなって一台、買ったんですよ。家庭用なので値段は手ごろですが、味も香りも同じです。毎日、最高級のレストランと同じエスプレッソが飲めるのだから贅沢でしょう。私がお勧めした結果、自宅で愛用している作家の方も多いですよ。

 さて、話をもとに戻しましょう。そもそも「JIN」を書こうというきっかけは何だったですか。

村上 それは当時の「スーパージャンプ」の編集長だった集英社の鈴木晴彦さんです。

シマジ えっ!あのクンタ<鈴木晴彦のニックネーム>にそんな力があったんですか!?

村上 鈴木晴彦さんがまだ新人のころ、たまたま会ったとき「わたしが編集長になったあかつきには、村上先生、ひとつゴッツイ連載をやってくれるって約束していただけませんか、といったんです。