「民主党政権で『改革』も『成長』もできないのはなぜか」
エコノミスト、論客たちが徹底討論「2011年 どうなる日本経済」vol.2
左より岩瀬大輔 氏(ライフネット生命副社長)、池田信夫 氏(上武大学教授)

vol.1 『激論vol.1「日本の財政破綻は本当に起きるのか」』はこちらをご覧ください。

岩瀬: いま私、池田さんに勧められた「This time is different」という、過去500年くらいの間に起こった金融危機やデフォルトについて書かれた本を勉強しているんです。

高橋: これから読むの? あの本は面白いですよ。内国債と外国債のデフォルト確率なんて一緒だとか、ギリシャなんて破綻するのが当たり前だ、2年にいっぺん破綻してるんだからとか、そういうことが書いてある。

 そういうデータからいえば、日本のデフォルト確率なんてものすごく低い。G7だってほとんどデフォルトなんてないじゃない。たまにあるけれど、圧倒的に確率は低いですよ。だから日本の財政を語るのに、ギリシャをひきあいに出すのはおかしいのが、よくわかりますよ。

岩瀬: 現時点では日本の財政に問題ないにしても、将来は社会保障が膨らむじゃないですか。高齢化にともなって。そうすると発散していくんでしょうか。

高橋: 社会保障は、はっきりいえば財政と関係ありません。社会保障は社会保障で収支相等の原則って数理があるからね。年金数理です。私、これを(財務省で)担当してたからからわかるんだ。高齢化しても給付がすごく少なくなっちゃうので、結論からいえば発散はしません。

岩瀬: 給付がなくなっていくということですか。

高橋: そうそう。少なくなる。もしくは給付を上げたかったらどうなるかといえば、保険料を上げるんですよ。

岩瀬: 本来はそのはずですが、年金にしても医療にしても、公費負担の割合が増えていったり、自己負担を上げようにも上げられないという状況があるじゃないですか。

高橋: それは保険の考えではおかしいでしょ。保険料ではできないから。

岩瀬: そうです。筋としてはそうあるべきです。現状の、高い水準の社会給付を維持したいなら保険料を高くしなければいけないわけですが、それが政治的にできないというのが今の民主党ですよね。

高橋洋一氏(嘉悦大学教授)

高橋: 実は、政府の中で収支相等の保険数理でやるべきなのに、そうしてない分野が多いんです。例えば、農水関係の共済とか、保険のくせに全然、保険ではやらない。役所の人間がそもそも補助金だって言ってる。そういうのはまずいですよ。

岩瀬: いま基礎年金の半分は国庫負担です。医療も、賦課方式なので現役世代が負担していますが、バランスが悪い。本来であれば、高齢者の中にも、資産を持っている方がいて、28%の人は3000万円以上持っている。それも含めて、あるいは後期高齢者でわけようとしたら姥捨て山だといわれて、そこもできない。本来であれば保険料にすればいいんですが、どんどんバラマキになっている。なぜ改善できないのでしょう。

高橋: 年金もね、すぐ消費税というけど、年金は年金できちんと数理でやっていない。消費税でやりますなんて、言うこと自体が話を混乱させています。世界の中で年金を消費税で賄う国なんてほとんどないですよ。ほとんどの国は保険料です。

 ごくまれに、税方式はあるけれど、あまりない。保険料か税金かというのはトラックレコードを取るか取らないかだからね。それをね、保険料方式で消費税なんていったらめちゃくちゃになりますよ。そういうのに話に乗ってることが問題でしょう。

岩瀬: 保険料は引き上げられないから消費税の方が上がるという話ですね。

金利急上昇の破局シナリオはなぜ起きないのか

長谷川: ちょっと高橋さんの話で注釈しておきたいんです。トラックレコードとはつまり、払った人の記録ですよ。払った人の記録があるのが保険料で、記録がないのが税方式です。そこで消えた年金のような、払った人の記録がきちんとされてないという問題が起きてしまった。

 本当はどっちでもいいと思うし、これまではトラックレコードがしっかりしているという前提のもと、保険料でやってきたわけだから、今さら税方式に直すとなると大変です。理屈のうえでは税方式が望ましい部分もあるけれど、今から現実的にやろうと思ったら、これはもう・・・。

高橋: 税方式も社会保険方式も、どっちがいいかは議論できない。ただし、税方式から社会保険料方式、あるいはその逆に移行したケースはない。面倒くさいというか、ものすごく間違える。

山崎元 氏(経済評論家)、長谷川幸洋 (東京新聞論説副主幹)

長谷川: 余命3年、つまり3年後に破綻するという話ですが、私が01年に出した本でまさにそういう話を書いたんです。もう日本の財政に余命はほとんどない。だから増税しないともたないといけない。長期金利が上がったら日本経済が破綻する。そう書いた僕の本の副題が『日米破局のシナリオ』でした。

 それを書いたのが9年前で、その時は真面目にそう思ったんだけど、10年経っても破綻しないどころか、長期金利はまだ1.2くらいです。当時よりもっと金利が下がっている状況ですよ。

 だから、破局シナリオというのは10年間、ずっと言われていて、僕も書いたんだけど、起きなかった。僕も借金の方が税収より多いのは異常だし、再建できるならしたほうがいいと思う。でも、それには条件があるんです。

 いまの財政の議論は、たとえば現状の国と地方のあり方については何も触らない。そこから変えていくべきです。ところがいまは、このままで行く、改革はしないということを条件にして財政が大変だという議論になっている。

 本当に大事なことは、今の政府の仕組み、制度の中に山のようにあるムダ、二重行政、三重行政、こういうことに手をつければ、23兆の赤字だけど、相当の部分は改善して、ひょっとしたらプライマリーバランスが黒字になるかもしれない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら