「ヤフー・グーグル提携」は日本経済にとってプラスかマイナスか 後編
シンポジウム 検索エンジンの未来を考える
写真左より町田 徹 氏(済ジャーナリスト)、牧野二郎 氏(弁護士)、近藤三津枝 氏(衆議院議員)、堂山昌司 氏(マイクロソフト代表執行役 副社長)、玉井克哉 氏(東大先端科学技術研究センター知的財産権大部門教授)、栗山浩樹 氏(NTT経営企画部門企画担当部長)

『「ヤフー・グーグル提携」は日本経済にとってプラスかマイナスか』前編はこちらをご覧ください。

町田: 今回のヤフー・グーグルの提携問題では、最初の時点で公正取引委員会の事務局長が記者会見で、「検索エンジンという市場があるわけではない。引き続き検索広告の市場でヤフージャパンとグーグルの競争は続く。だから問題はない」と言っています。

 この公正取引委員会の決定のプロセスについてご意見をお聞きしたいと思います。牧野先生、いかがでしょう。

牧野: かなり早い段階で問題なしという話しになりました。おそらくその背景には、検索というマーケットがないということと、サービス自体が無料サービスであるとということがあったのでしょう。契約があるわけではなく、別に他の事業者を排除するような不正な取引行為があるわけでもないと。

 その意味ではいままでの独占禁止法違反の象徴的な事例がドンピシャでは当たらない。どのカードにも当たらないので、いまの段階では問題ないだろうと一番最初に判断してしまった。公取はそこにずっと引きずられてしまっています。

 ところが検索エンジンで直に問題が出てこなくても、実は広告の問題でものすごい影響が出てくる。もう少し究明していくともっと違う問題が出てきたでしょう。

「強者」に弱い日本の公取

町田: そもそも「検索エンジンにマーケットがない」という発言には違和感がありますね。

牧野: そうですね。検索エンジンでは検索者の質問だとか、どこにいてどういう頻度で検索していたかといった個人の検索履歴も、相当程度吸い取れるわけですね。そうすると個人情報の集中という問題が出てくる。

 ヨーロッパがものすごく敏感になっているのは、ヨーロッパの情報をヨーロッパ域外に出す場合には、EUディテクティブというのがあって、EUの個人情報保護とまったく同一の制度がない限りは絶対出してはいけないという命令があるからです。実はアメリカのシステムではプライバシー保護はできないから本来は持ち出せないという、争いがずっと続いていたんです。

 行動ターゲティング広告の場合は裏側で個人情報、あるいはプラバシー情報がかなり集まってくる。そのマーケットが日本ではほとんどグーグルに掌握されて、国民のほとんどの個人情報がグーグルのエンジンの中に入っていく。それがある意味では彼らの自由になるというのは個人情報保護法上問題はないのか、その部分での切り口が必要だったでしょう。

 さっき申し上げたカードとして、不正な取引行為があったとか、排除しているといったことがないから、個人情報の独占だとか情報の独占だとか、独占の間接効果というところに公取は思いが至ってない。一番最初のギアを入れてしまったことが最後まで行っちゃったというところでしょうか。

町田: 玉井先生は公取の決定に大きな危惧を持って、御厨貴東京大学教授らとともにネット上で「ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論を」をいう署名活動を始めてています。この独禁法の問題についてはいかがですか。

「ウェブ検索とネット社会の将来に関する国民的議論を」について

 
*1 米グーグルが日本のヤフーに検索技術を提供する提携をめぐり、東京大先端科学技術研究センターの玉井克哉教授や御厨貴教授ら4人の有識者が提携に反対の立場で始めた、ネット上で署名活動。昨年11月30日、専用サイトを立ち上げた。ほかに元最高裁判事の園部逸夫氏、安念潤司・中央大法科大学院教授をあわせて計4人が呼びかけ人となった。
 
  「検索サービスは、ネット社会の基幹的インフラとなっており、個人情報や位置情報と組み合わせることにより、ますます高度化しつつある。その将来は、わが国の経済の根幹に影響するだけではなく、文化的な多様性や言論の質をも左右する。
 
  しかし、検索サービスは、いったん独占が生み出されると、元に戻すことは困難である。2010年7月に発表された上位二事業者の提携についても、このような観点から、オープンな国民的議論が必要である」(全文はこちらから)として、ネット上での署名を集めている。
 
署名はこちらから。

玉井: 独禁法の論点については、いまの牧野先生の言葉に付け加えることはほとんどございません。「タダで検索をやっているからマーケットはない。だから大丈夫だ」っていうならば、日テレとテレ朝とTBSとフジテレビが番組を一緒にして、広告は別々に集めますということをやっても、視聴者はタダで見ているんだから関係ないと言えるのか。「天気予報とか味付けも違ってくるんで競争は続けます」と言って、そういう話しを信じる人はどこにいるんだろうという気がします。

 少なくとも検索結果がどっちで検索しても同じになるのかどうか。同じにならないとすると、どういうふうに技術的に別々になるようになっているのか。そういうことはまったく分からないわけです。

 そういったことが国民にオープンにされていない以上は、調査権限を持っている公正取引委員会がちゃんと調べてほしいっていうのが、彼らに権限と予算を与えている国民の当然の期待ではないですか。そういった点についてきちんと調査をしたという形跡は、少なくとも外から見ている限りありません。

 本来は海外の事情も調べなくてはいけないし、あるいは2年前の2008年に非常に似た計画がアメリカで持ち上がって、その時にはアメリカの司法省が待ったを掛けて潰れているわけです。それについて司法省に問い合わせをして、日本は全然違うんだという心証を得た、そういう形跡も全然ない。まともな調査をやったんだろうか、疑問というか非常に疑わしいわけです。

 ここから先は法律論ではなくて下世話な実情論になりますけど、その意味で役所として根性がなさ過ぎるんじゃないかと。強いものには巻かれると。

 携帯ゲームをやっている会社が相互に排除したとかいうのは話題性はありますけど、まあどうなったって日本国が浮き沈みするもんじゃないですよ。しかし、こういうまさに日本国にとって大事な問題について、公取は根性がない。

 副社長の隣に座っていてこんなことを申すのもなんですけど(笑)、マイクロソフトさんにしてもアメリカでは会社を潰されかかったりしましたし、欧州委員会は2,400億円というメチャクチャな課徴金を課したわけです。ところが日本の公取は、強いものを相手にすると全然根性ないなというのが、いままでの印象なんです。今回もその癖が出たんじゃないかという気がしております。これは法律論じゃありません。

会場 (笑)

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