井上久男「ニュースの深層」
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朝日がん大賞の疑問
新聞社は「読者目線」が欠落しているのではないか

2011年09月18日(日) 井上 久男
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 朝日新聞社の外郭団体である公益財団法人・日本対がん協会(箱島信一理事長)が9月1日付で、今年度の「朝日がん大賞」に福島県立医科大副学長の山下俊一教授(長崎大学を休職中)を選出したことが物議を醸している。

 福島県では、山下氏は「100ミリシーベルトまでなら大丈夫だ」と言って避難を遅れさせた張本人とされ、こんな賞をもらっていいのかといった声が出ているからだ。「朝日新聞社には抗議の文書や電話も殺到している」(朝日新聞関係者)という。

罷免と求める記事と同じに「ひと欄」で紹介

 朝日新聞は9月1日付の朝刊ひと欄で山下氏を「がん大賞」受賞者として紹介。記事では、山下氏が旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後の医療協力に現地に100回を超えて出向いたことや、福島第一原発の事故直後から現地入りして、福島県放射線健康管理リスク管理アドバイサーとして住民に放射線の健康影響を語ったことなどに触れている。

 一方で、同日付朝日新聞福島版では、3つの市民団体が福島県に対して県民健康調査の見直しを求める要請書と、放射能汚染で県民に退避を呼びかけなかったなどとして山下氏のアドバイザー罷免を求める6662筆の署名を8月29日に提出した、と報じている。

 ひと欄では受賞を称える記事、県版では罷免要求の記事を同じ日の紙面にそれぞれ載せるとは、それがニュースという価値判断であったとしても何となく不自然に感じる。

 市民団体のひとつである「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」事務局は筆者の取材に対してこう説明した。

「震災直後から山下氏は福島県内で講演しており、ラジオなどメディアにも頻繁に登場していました。山下氏が『大丈夫だ』と言ったおかげで、本当だったら避難して被ばくしなくて済んでいた人が被ばくしてしまった可能性があります。『がん大賞』受賞には、ふざけるなという気持ちです。抗議文を朝日新聞社や他メディアに送りました」

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