政治政策 経済・財政
「反IFRS活動家」を金融庁参与に任命した自見金融相「政治主導」の危うさ
国民新党に金融行政を丸投げする野田政権

 野田佳彦内閣の誕生で、当然交代するだろうと思われていた自見庄三郎・金融担当大臣が残留した。大多数の国民が選んだわけでもない国民新党に日本の金融・資本市場行政を丸投げする民主党の経済音痴ぶりもさることながら、国民新党が金融相ポストにここまで固執するのも不思議だ。郵政民営化阻止という以外に何かあるのだろう。

  金融には素人の大臣が残留することになって、金融庁内には明らかに失望の色が広がっている。金融庁長官が政治家にはめっきり弱かった三國谷勝範氏から現場に人望のある畑中龍太郎氏に代わり、果たしてどう大臣に対処していくのか、注目される。

 そんな金融庁の現場と大臣の火種の1つが、自見氏が菅直人内閣総辞職の直前に行った「政治主導」人事だ。三菱電機顧問の佐藤行弘氏、日本労働組合総連合会(連合)副事務局長の逢見直人氏、住友化学工業副会長で日本経団連の企業会計委員会委員長でもある廣瀬博氏の3氏を8月29日付で「金融庁参与」に任命したのだ。

 参与にした理由について、自見氏は「国際会計基準(IFRS)についてのご意見を賜るのにふさわしい方だと判断」したと述べているが、3氏はいずれもIFRS適用についての慎重な姿勢を示している。中でも佐藤氏は反IFRSの急先鋒とも言える人物で、国会議員や幹部官僚、大物経済人にIFRS反対を説いて回っている"活動家"として知られている。

突然、参与に任命したのはなぜか

 実は、これには伏線がある。IFRSへの日本の対応を議論する企業会計審議会が6月末に開かれた際、政治主導で反IFRS派の面々を、10人も臨時委員として追加任命。大臣の「政治的決断として」、IFRSの日本企業への適用義務付けを先送りしたのだ。この間の経緯についてはこれまでも何度かこのコラムで記事を書いた。今回、参与に任命された3人は、6月の審議会で臨時委員に選ばれた人たちだ。

 そんな佐藤氏らを突然「参与」にしたのはなぜか。

 国際的な金融規制の当事者でもある金融庁の現場は、この段階で日本がIFRSに背を向ければ、様々な国際交渉での日本の発言力が落ちると強く警戒している。このため、大臣の無茶な注文にも面従腹背を貫いているとされる。

 6月に開いた審議会を、反対派が多数を占めた「企画調整部会」として開催するのではなく、本委員会と合同の総会にしたのも、強引な多数決によるIFRS揺り戻しを恐れた金融庁の現場の智恵とされる。

 委員になった佐藤氏は繰り返し「企画調整部会」単独の開催を主張していたが、現場は無視していたと言われる。審議会の一臨時委員ではなく、参与にすれば現場も言うことを聞くだろうというのが、今回、参与に任命した大臣側の思惑と見られる。

「特定の目的を持った人を参与にし、審議会の委員まで兼務させれば、金融庁の意思がそこにあると思われ兼ねない。独立性、中立性を基本とする公務員組織としては禁じ手だろう」と金融庁のOBは言う。「ましてや政治主導など論外だ」と語気を荒げる。

 もともと金融庁設置法では金融庁のトップは金融庁長官とされ、内閣総理大臣に直属している。金融担当大臣は内閣府の特命担当という立場で、組織上はトップではない。金融行政への政治介入を防ぐのを目的に、政治家を排除する形になっているのだ。過去には関係する金融機関への便宜供与などが疑われ辞任に追い込まれたケースもある。独立性と透明性を重んじる金融庁に、政治主導と言って堂々と踏み込んでいる自見氏の手法は異常さが目立つ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら