クラウド・ディバイス---日本の選択3
グーグルの神通力はM2Mに通用するか?

グーグルのクラウド戦略を解説するエリック・シュミット会長  (グーグル開発者会議で筆者撮影)

 まず、これまでの話を簡単にまとめてみよう。現在IT業界でブームになっているクラウドは4つの段階で進化する。過去4年ほど、仮想データセンターやクラウド・アプリケーションで技術革新が進み、企業システムのクラウド化が進んだ。これが第1段階のクラウド・コンピューティングで、企業ITシステムを中心に広がっている。

 その一方、日米ではWiMAXやLTEなどの次世代高速モバイル・ネットワークの整備が始まり、アップルのiPadを筆頭にモバイル分野ではタブレット・ブームが広がっている。これまで携帯電話一辺倒だったモバイル端末は、タブレットの台頭で新たな展開が始まった。

 しかし、現在のモバイル・ブームは第2段階のクラウド・コミュニケーションや第3段階のクラウド・ディバイスとはほど遠い状況にある。モバイル版パッケージ・ソフトとも言える「アプ・エコノミー」に牛耳られているからだ。

モバイルOSの二頭立てで走るグーグル

 前回述べたようにグーグルは、ふたつのOSをサポートしている。ひとつは携帯OSのアンドロイド。もうひとつは、グーグルブラウザーのクローム(Chrome)から派生したクロームOSだ。

 両者は、どちらもクラウド・ディバイス戦略を担う重要な役割を持つ。クローム・ブラウザーは、パソコンやノートブックでクラウド・アプリケーションを高速に処理するために生まれた。

 クロームOSは、このグーグル特製ブラウザーにモバイル・リナックスというオープンソースOSを組み合わせている。グーグルは同OSを搭載した試作機『Cr-48』を2010年秋から一般テスターに配布して、改良を重ねている。

 では、グーグルはクラウド・ディバイス分野をどちらのOSで開拓しようとしているのだろうか。当初、クロームOSがモバイル用省電力チップをサポートしたことから「同OSを軸にクラウド・ディバイスをサポートするのではないか」と観測が飛び交った。しかし、グーグルのクラウド・ディバイス戦略はアンドロイドが主体となっている。

 一口にクラウド・ディバイスといっても、多種多様なタイプがある。そこで私は、クラウド・ディバイスを4象限に分けて考えている。(図クラウド・ディバイスの分類を参照)これは端末のタイプをモバイル(Mobile)と固定(Fixed)に、通信対象をH2MとM2Mに分ける。

 H2Mとはヒューマン・ツー・マシーンの略で、テレビやパソコンなど人と機械のコミュニケーションを指す。一方、M2Mはマシーン・ツー・マシーンの略で、電力メーターの遠隔検針など機械同士がおこなうコミュニケーションのことだ。

 最近、家電メーカーはアンドロイドをテレビやセット・トップ・ボックスなどに採用している。その理由は、オープンソースのアンドロイドがライセンス費用を必要としないことやアンドロイド・マーケットを利用することでアプリケーションの配布や課金が容易なためだ。

 また、グーグルがテレビ広告への参入を狙って開発したGoogle TVでは、アンドロイドとクローム・ブラウザーを組み合わせるなど、その自由度は高い。当面、アンドロイドはスマートフォンから情報家電へとその対象領域を広げてゆくだろう。

 一方、クロームOSの主要領域はネットブックやタブレットなどモバイル・パソコン分野だ。アンドロイドに比べるとクロームOSは開発途上で、カメラやタッチパネル、各種入出力、電源管理などの実装面をこれから充実させてゆかなければならない。当面は、クローム・ブラウザーに最適化したモバイル・パソコン用OSとして開発・整備が続けられるだろう。

 アンドロイドとクロームOSを持つグーグルは、LTEやWiMAXなどの高速モバイル通信が整備されるに従い「家庭で録画したビデオを職場やホテルなどで見る」「掛かってきた電話やメール、テキスト・チャットなどを家だけでなく、喫茶店やオフィス、ビーチなどで応答する」といったサービスを展開することだろう。グーグルは「好きなサービスやコンテンツを好きな場所でいつでも楽しめる」時代を切り開くわけだ。

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