首謀者は仙谷由人
「小沢殺し」最終局面

2011「永田町門外の変」
紛れもない、小沢潰しの計画立案者。しかし、自ら手は下しませぬ(左)
"神霊"に頼るも、もはや自分が怨霊になるしか・・・(右)
〔PHOTO〕gettyimages

 菅首相は突貫する。小沢を"殺れば"自分の人気は再び上がる。心の底からそう信じている。じっと見守るのは策士・仙谷だ。猛獣同士の潰し合いを眺める眼鏡は、光って、その奥がよく見えない。

小沢の"崇り"に怯える菅

 その人物が、「黄泉還りの地」とされるその場所を訪れたのは、自らがすでに、政治的には"死者"に近いことを察しているからなのかもしれない。

 年明けの1月8日、民主党の小沢一郎元幹事長は、和歌山県の田辺市にある熊野本宮を訪れた。

「無心、無心」

 記者団にはそれしか語らなかった小沢氏だが、宮司に対しては、「国の状況への憂いの中、少しでも国がよくなるようにお参りに来た」と話したという。

 同氏が熊野を訪れるのは、昨年6月に幹事長を辞任した直後に続き、2度目となる。熊野といえば、いま流行りの言葉で言えば、全国有数の"パワースポット"だ。小沢氏の前には今後、国会での政倫審、強制起訴、そして離党勧告・除名といった、"裁きの日々"が待ち受けている。

 そんな中、霊験あらたかな聖地を散策し、その空気を吸い、神々を詣でることで、「再生と復権」への決意を新たにした・・・それが、常識的な政界関係者の見方だろう。

 しかし、小沢氏の熊野参拝に隠された「真の意味」に気付いた者は、おそらくほとんどいない。熊野本宮に祀られている神は、「スサノオ」だ。そして、熊野の名所のひとつでもある那智の滝は、前号で本誌も触れた、大黒様こと「大国主命」の象徴とされている。

 スサノオと大国主、この神々に共通するのは、「時の中央政権により失脚させられた有力者」だという説があること。大国主命を祀る出雲大社と同様、熊野の地もまた、権力闘争に敗れて死んでいった"祟り神"を祀り、封印するための地だと言われているのだ。

 その熊野を訪れ、再起を誓った小沢氏---。およそ800年前、小沢氏と同様に、熊野を熱心に参詣していた有力者がいる。天皇退位後もその剛腕で陰から権力を振るい、「院政」の語源にもなった後白河法皇と、その孫、後鳥羽上皇だ。

 二人は険路を踏み越え、それぞれ約30回も熊野を参詣しているが、なぜそこまでして熊野詣でをしたかと言えば、かつて権力争いに敗れ、無念の内に死んでいった神=怨霊の力を借り、時の政権に反旗を翻すためだった・・・という。

 そして、後鳥羽上皇は、最後となる29回目の熊野参詣の3ヵ月後、鎌倉幕府に対し、ついに叛乱の狼煙を上げ、決戦を挑んだ。当時の日本を二分した鎌倉初期の大乱、「承久の乱」(1221年)である。

 小沢氏は熊野参詣の心境を「無心」と語った。だがその真の意味は、

「無心にして敵を討つ」

 つまり、自らを政治的な死へと追い込もうとする、菅直人首相や仙谷由人氏への"宣戦布告"なのだ。

「オレは簡単には死なんぞ。たとえ死んでも、必ず復讐を果たしてやる」

 暗に、そう語っている小沢氏に対し、首相らは、いよいよ決着をつけねばならない。昨年来続いた民主党の党内抗争は、ついに最終局面を迎えた。

 表面上、菅首相は極めて強気だ。首相は年頭の会見で、自らの政治が目指す3つのテーマとして、「平成開国元年」「最小不幸社会」「不条理をただす政治」を挙げた。そのうち、「不条理をただす」とは、要するに、カネの問題を抱える小沢氏を追放する、ということ。

「政権交代にも、従来の政治がなおざりにしてきた不条理を解消してほしい、という国民の期待が込められている。残念なことに、政治とカネの問題に対する私たちの政権の姿勢に疑問が投げかけられている」

 国民が感じる「不条理」とは、普通に考えれば「努力しても就職ができない」「頑張っても給料が上がらない」「そもそも仕事がない」などという、切実かつ切迫した問題だ。

 だが首相は、「カネに汚い小沢がいることが悪い。小沢が消えれば日本はよくなる」という論理にすり替え、新年早々から、小沢氏への対決姿勢を露にする。親しい中堅議員の一人には、こうも言い放ったという。

「国民が求めているのは、かつての田中角栄と同様、小沢を消し去ることだ。国民の声に応えるのが政治家の使命だ。小沢は、消し去らねばならないんだ」

 ただ、これほど激越な口調で放言する反面、首相はその口ぶりほど、明瞭簡潔に腹を括れる政治家ではない。基本的に、気が小さいから怒鳴りまくり、他人を威嚇する。本心では「小沢殺し」に手を染めることに戦慄しているからこそ、自分を無理矢理に鼓舞して過激な言動を繰り出す。

「首相はこの年末年始に、不安に駆られて各界の知人・識者に意見を聞きまくり、『どう小沢を切ればいいか』『切ってしまって自分の政権は大丈夫か』と相談しました。

 その際、反小沢の面々から『総理が決断すれば世論はついてくる』と言われたため、安心して年明けから急に、『オレはやるぞ!』と強気になっただけです。現実には、小沢氏を切れば支持率が上がる、という生やさしい状況でない。躁と鬱みたいなもので、相変わらず内心は迷っている」(民主党ベテラン議員)

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