野田内閣の躓き
問題発言を繰り返す閣僚、国民のための公僕として全身全霊を捧げる覚悟を

〔PHOTO〕gettyimages

 鉢呂経産大臣が辞任した。8日に福島を訪ねた鉢呂大臣は、報道陣に防災服をすりつける仕草をしながら、「放射能をうつしてやる」と言ったり、9日の記者会見では、原発周辺について「人っ子一人いない。まさに死の町だった」と発言したりしたことの責任をとったものだ。

 大臣としてのセンスを疑うし、福島県民の心を傷つける思慮に欠ける行いである。臨時国会召集を前にして、野田首相も辞表を受理せざるをえなかったようだ。当然、首相の任命責任が問われる。

素人では大臣は務まらない

 私は、野田内閣を党内に配慮した内向きの「気遣い内閣」と特色づけてきた。論功行賞、派閥均衡などに気を配れば、党内融和は可能である。だが本来、大臣は国政の重大責任を負う。適材適所でなければならない。しかし、どうもそうではない。大臣としては問題が多い人物がいるから、国会は開いても本会議のみで、予算委員会は開かないのである。

 平野国対委員長が言うように、「未完成」な内閣かもしれないが、それでは困る。政治には一瞬の停滞も許されない。「未完成」ではなく、つねに「準備万端」で国政に臨む必要があるのである。

 この内閣の最重要課題は、震災からの復興・原発事故の収束、そして日米関係の修復である。原発問題の担当である鉢呂経産相が、就任9日にして辞める羽目に陥った。経産相には、TPPの推進という重い課題もある。農業地帯である北海道を地盤とする鉢呂氏に、そもそも経済産業大臣のポストが適していたのかどうか。最初から適材適所ではなかったのではないか。

 外交分野では、日米関係、とくに沖縄の普天間基地の移設問題が重要である。「最低でも県外」と大見得を切った鳩山由起夫内閣は、まさにこの問題で退陣に追い込まれた。すると、次の菅内閣では、自公政権時代に決めた辺野古移転に、あっさりと回帰してしまった。

 沖縄県民に言わせれば、「一体これはどういうことなのか」と呆れかえるしかない。アメリカは、年末までの解決を要求しており、その要求が満たされなければ、普天間を固定化することを示唆してきている。

 そのような難問を解決すべきときに、「素人」を辞任する一川氏が防衛大臣に就任した。しかも、素人であることがシビリアン・コントロールだという。これまた、開いた口が塞がらない。年末までに普天間問題解決の糸口が見いだせなければ、野田内閣は鳩山内閣の轍を踏むことになるかもしれない。素人には荷が重すぎる。

 一川氏と同じ小沢一郎グループの山岡国家公安委員長は、消費者行政のトップでもある。彼を小沢氏の公判を控えた時期の警察のトップにし、しかもこのマルチに関係深い人物を消費者の護民官にするというのは、ほとんどブラックジョークに近い。

 小宮山厚労大臣にしても、たばこ一箱700円という増税案を公表してしまった。政治家は、政策を実現させなければならない。そのための準備や根回しもないまま、思いつきを述べるのはいただけない。大臣は省庁のトップであり、その発言は個人的なものではない。

 このように閣僚が問題発言を繰り返すようでは、とても適材適所で人事を行ったとは言えまい。党役員人事なら、党内融和第一の内向きでもよいかもしれないが、内閣は日本国民の生命と財産を守る重要な仕事をせねばならない。素人では務まらないし、派閥の親分や業界を向いている政治家も不的確である。私利私欲を捨てて、国民のための公僕として全身全霊を捧げる覚悟がなければならない。

 自民党が政権を追われたのは、政官業の癒着、カネへの執着、政治屋に成り下がった議員達に有権者が愛想を尽かしたからである。だから、世間交代で旧態依然たる政治への決別を民主党に期待したのである。ところが、野田内閣は、古くさい自民党型の政治に逆戻りしているように思えてならない。

 族議員に跋扈させないために、党と政府を一元化したのではなかったのか。それが、党高政低となってしまった。民主党が堕落していく道が見えてきた。野田内閣は、発足してすぐに躓いてしまったようである。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら