歴史的な大和証券との株価逆転
「巨額のサブプライムローン訴訟」だけではない野村の苦悩

〔PHOTO〕gettyimages

 ちょうど1週間前の9月6日のこと。国内の証券界で「ガリバー」と呼ばれ、長年にわたってトップの座に君臨してきた野村ホールディングスと、同業界2位の大和証券グループ本社の株価が逆転し、経済界の注目を集めた。

 直接の株価逆転のきっかけは、その4日前に、米連邦住宅金融庁(FHFA)が住宅ローン担保証券(MBS)の販売などを巡り過失があったとして、野村を含む日米欧の金融機関17社に対して損害賠償を迫る訴訟を起こしたことだ。米経済は、いまだにサブプライムローン問題の傷跡が深く、17社には賠償額が予想外に膨らむのではないかとの報道も存在した。結果として、野村株は3日間の急落となり、その株価が大和株を下回る事態に陥った。

 しかし、FHFAの提訴と野村、大和の株価逆転だけに目を奪われていては、米政府の債務削減問題や欧州の財政危機に揺れて、新たな構造転換を余儀なくされつつある、世界の金融・資本市場の流れを見失うことになりかねない。

 今回は、話題の株価逆転劇から、何を読み取るべきかを考えてみたい。

賠償額は200億ドルを超える可能性

 野村株は6日、FHFAによる提訴の発表を受けて、きつい下げを繰り返した。終値は前日比17円安の291円。問題の発表があった2日から3日間の続落で、この間に36円も下げた計算になる。

 一方、大和株の6日の下げは前日比9円安と野村株ほどでなく、終値は293円を維持した。この結果、両社の株価は、わずか2円の差ながら、歴史的な逆転劇となった。記録が残っている1980年以降の電子データをみる限り、こうした逆転現象は初めてという。

 そこで、まず、直接の引き金となったFHFA提訴の内容を確認しておこう。

 FHFAは、2008年7月、それ以前から顕在化していたサブプライムローン危機の反省から、乱立していた政府機関を統合する形で発足した。現在は、1400億ドルの公的資金の注入を受けた連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の経営の健全化と、MBS市場の健全な発展を促すことが使命だ。加えて、両社に投入された公的資金の回収も重要な役割となっている。

 FHFAの発表によると、提訴対象は、アライフィナンシャル(旧GMAC)、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズ銀行、シティグループ、カントリーワイド・フィナンシャル、クレディ・スイス、ドイツ銀行、ファーストホライゾン・ナショナル、ゼネラル・エレクトリック、ゴールドマンサックス、HSBC北アメリカ、JPモルガン・チェース、メリルリンチ、モルガン・スタンレー、野村ホールディングス・アメリカ、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、ソシエテ・ジェネラルの17社。

 FHFAは、この17社が連邦証券法やコモンロー(判例法)に違反して、MBSにサブプライムローンを組み込む際に適切な査定を怠ったり、ファニーメイとフレディマックにMBSを販売する際にて的確な情報開示を行う義務を怠っていたことから、両社にかわって賠償請求裁判に踏み切ったと説明している。

 FHFAが賠償の対象にしたMBSは17社の合計で約2000億ドル(15兆円)。賠償請求額は不明だが、ロイター通信は「関係者の話」と断ったうえで、賠償額が「200億ドルを超える可能性がある」と報じている。ちなみに、野村の場合、FHFAが賠償対象としているのが、2005年11月から07年4月までの間に発行された7本のMBS(7本合計の発行額は20億ドル)なので、同じ比率で考えると150億円程度の賠償の可能性があり得るとの観測が浮上している。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら