原口一博×郷原信郎 菅政権を語る 最終回「いまこそ原点に返り、古い衣を脱ぎ捨てよう」

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郷原: 指揮権発動の話に戻しますと、14条の法務大臣の権限の問題になる事項が、一つが外交問題、一つは検察の組織的な不祥事なんですね。その検察の不祥事がまさにあの大阪地検を巡る問題なんですけども。

 検察の在り方検討会議の第3回が昨年12月24日に開かれて、そこで最高検の検証結果が公表された。あまり時間がなかったんですけども、質問の時間があったものですから、最高検側に質問したんです、「この検証結果とはどういう性格のものですか」と。

 いままでも無罪判決が出たりしたときには、検察が部内で実務的に、こういう問題を起こさないようにする再発防止策を検討する、そのための調査をするということはあった。今回もそういう検察の部内で基本的に使うというものなのか、それとも検察が客観的な視点から問題を明らかにし原因を分析して、再発防止策を社会に対して明らかにしていくという性格のものなのか。

 後者だとすると、法務大臣が一般的な指揮監督権を持っている。法務大臣の権限を背景としたものになるんではないですか、と聞いたんです。

 そこではっきり最高検の刑事部長が答えたんです。当初は検察の内部的な調査ということで始めたことだったんだけども、後から法務大臣の指導を受けるようになったと。法務大臣が第三者のアドバイザーを入れなさいと、あれは柳田法務大臣の指示であったと。検証チームの立ち上げのときには、法務大臣が直接来て訓辞をされた。そういったことから考えて、法務大臣の指導、指示によって行われているという側面があると言われた。

 私はそこの面に関しては、柳田法務大臣はその14条の権限を背景にして、しっかり仕事をされたんだなと改めて認識したんですね。

原口: そこ大事ですね。消えた年金の問題の検証委員会、これも郷原先生にお願いして、結局、あの時に民主党は徹底的に消えた年金で追求して、私もネクスト総務大臣でしたからやりました。

 ただ、そこで抜けていた、先生と確認した視点が一つあって、それは個々の社会保険庁の職員を分限免職したり、あるいは個々の人たちを責めるだけではなんにも生まれてこない。

 むしろさっきのマーケット・アビューズと同じで構造ですね。

 年金がもともと企業年金で、多くの人たちが小さな手続きでやれていたものを、国民全体に広げたときになにが起きたのか。社保の出先は東京都内に30しかない。

 その中で、あの時先生の出された報告書は衝撃的なんですが、企業が1円も年金を払わずとも、そこに年金が行く仕組みがあるんだと。

郷原: そうです。厚生年金というのは、保険料の支払いと将来貰える年金額とは切断されています。要するに、企業の側の滞納金額が膨らんでいくだけで貰える年金額は変わらないんですね。ですから個人事業主なんか、会社が潰れて膨大な金額を滞納していても将来しっかり貰えてしまう。そこが消された年金の問題の根本なんです。

 ところが世の中は明らかに誤解をしていて、社保庁の職員が自分たちの成績を上げたいためにインチキをした、社保庁の職員が一方的に悪い事案だと、個人が悪い事案だと考えてしまったんですね。

原口: 勘違いしたんですね。そこは年金の部門会議でやりましたけども、当時の厚生ネクストが長妻さんで、蓮舫さんが副でしたか。

 1980年代の終わりに年金が変わったときにやっておかなくてはいけない政治的なツケが現場に回っているんだと。その回っているツケを変えるためには、いまの徴収制度そのものも、あるいはいままでの年金でなにが起きたかということを俯瞰的に見て、そして外に出さなきゃいけないと。これをやったわけですけど。まだそこは不完全で、さっきの虫とカビで言うと、虫だけ捕まえて元の素地は変わっていない。

「まだその程度の認識しかないのか」

郷原: まさに今回の最高検の検証は似てますね、そういう意味では。虫と言っても、社保庁の職員のような小さな虫ではなく、大きな虫ですけれども。

 それにしても、あの検証結果が基本的にどういうトーンかと言うと、まず、改竄などというとんでもないことをやっていた前田元検事が悪い。そして前田元検事がなぜそんな悪いことをやったかと言ったら上司の大坪前部長が悪い。

 これはとんでもない男で、特捜部長にあるまじきイケイケドンドンばかり言っていて、消極的な話は聞きたくないと、叱り付けるようなことをやっていた。

 だから前田元検事が上司に対して消極的なことが言えず、結局改竄にまで走ってしまったと。大坪特捜部が悪かったんであって、その前の大阪特捜部は悪くなかったし、ましてや東京や名古屋の特捜は問題ない。ただ、第二の大坪という虫が出てこないように予防措置は執っておかないといけないと。こんな話なんですよ。

 こんな話なのか。こんな話として、世の中に対して検察が今回の問題を説明するというのは、私は大変な問題だと思うんですね。まだその程度の認識しかないのかと。金曜日は私が口火を切ってガンガン批判しましたし、他の委員からも相当厳しい批判が出て、新聞でもそこはずいぶん出てましたね。

 口火を切った私と江川(紹子)さんの二人を、強い意志で検討会議に入れたのは柳田前大臣なんですね。そういう意味では、いろんな評価はありますけども、非常に重要なところで法務大臣としての仕事をされたなと思っているんですね。

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