高橋洋一「ニュースの深層」
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あえて「失言辞任」に異論を唱える。なぜ新聞、テレビは自分たちが知っているはずの「鉢呂発言」の事実を報じないのか

本来、失言よりも問うべきは政策だ

2011年09月12日(月) 高橋 洋一
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今回の辞任報道は果たして正しいのか  【PHOTO】Sankei via Getty Images

 鉢呂吉雄経済産業相が9月11日、失言で辞任した。2日に野田新内閣で就任にしたばかりなので、9日の在任期間だった。

 昨年11月の柳田稔法相の国会軽視発言、今年7月の松本龍復興相の被災地での不適切発言に続いて、民主党政権になって失言による引責辞任は3回目だ。

 その失言は、東京電力福島第1原発事故周辺を8日に視察した際の感想である。9日の記者会見で、感想を「残念ながら周辺市町村の市街地は人っ子一人いない。まさに死の町という形だった」と述べたことと、視察を終えた8日夜、取材記者に対して「放射能をつけたぞ」と述べたことと報道されている。

 あらかじめ断っておくが、私は鉢呂氏を擁護するつもりは一切ない。鉢呂氏の政策についても、既存の原発の耐用年数を考えながら原発は基本的にゼロにするというのは現実的な話で評価するが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の消極姿勢はいかがなものかと思う。ただ、今回の辞任が、政策失敗ではなく失言ということだけだと、かなり違和感を覚える。やはり政策議論をしてもらいたい。単なる揚げ足取りではこの国がどうなるのか心配だ。

 鉢呂氏の発言は、政治家として脇が甘いが、辞任するまでの失言なのかとあえて言いたい。

各新聞によって違う「鉢呂発言」の中身

「死の町」という表現はたしかに被災地の人を失望させただろう。しかし、半年もたつのに、何も将来に対する展望を与えられない、この現実を放置しながら言葉尻だけを捕らえても仕方がない。本当に罪深いのは、人が住めない状況を放置しているのことなのだ。現状を厳しくみれば、一定地域には当分人が住めないのは認めざるを得ない。その場合、そこに至った原因追及とともに、これからどうするかという展望が必要だ。

野田総理は、鉢呂経産相が失言で辞任したことを受けて、「福島県民の心を傷つけ、深くお詫びいたします」と謝罪した。言葉で謝罪するだけでなく、きちんと展望を与えたなくてはいけない。そのために必要なのはおカネだ。

野田総理は財務省にいたときに教えてもらえなかっただろうが、かつては政府紙幣さえも省内で極秘に検討したことがある。少しの法律を変えれば、例えば10兆円政府紙幣を一枚作って、それを日銀に持ち込めば、それで政府は10兆円の財源が作れる。今のようなデフレならインフレになる心配もないし、むしろデフレ脱却にも役立つし、円高対策にもある。それを被災者に一時金として配布すれば、政策としてもまっとうな話だ。
 

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