「ヤフー・グーグル提携」は日本経済にとってプラスかマイナスか 前編
シンポジウム 検索エンジンの未来を考える
左:牧野二郎 氏 (弁護士)   右:近藤三津枝 氏 (衆議院議員)

町田: インターネットは1990年代からものすごい勢いで普及し、いまや生活になくてはならないもの、人間の五感で言えば目であり耳である存在にです。

 そのインターネットで情報を得ようとするとき、いまのところ玄関口としてなくてはならない検索という機能に、大きな変化が起ころうとしています。世界中で、検索機能が一つの会社の独占状態にになる動きが出ているのです。

 EUはこの問題について本格調査を決め、時を同じくして日本でも自民党がヒアリングを開いたなか、公正取引委員会は「直ちに独占禁止法上問題とはならない」としてヤフーとグーグルの提携を承認しました。日本でインターネットの検索エンジンの独占が一気に強まろうとしています。

 お集まりいただいたパネラーの方々は、政治、法律、ビジネス、アカデミック、それぞれの世界の第一線で活躍されている方々です。ご紹介を兼ねて、今回の公正取引委員会の決定について、お一人ずつお話をお聞きしたいと思います。

町田 徹 氏(経済ジャーナリスト)

 まず、自民党衆議院議員の近藤三津枝先生にお願いします。近藤先生はジャーナリスト出身で、経済、環境問題などをテーマに幅広く活動されています。この秋、自民党のインターネット検索問題調査研究会を立ち上げ、その事務局を務められ、精力的にこの問題についてヒアリングをされています。

近藤: 12月2日にインターネット検索問題調査研究会の中間取りまとめを行いました。それを中心にお話をさせていただきたいのですが、その前に、なぜこの問題に取り組んだのか、その経緯からお話しさせていただきたいと思います。

 この問題に最初に触れたのが7月27日ごろだったと思います。ヤフーとグーグルが提携するという新聞報道が目に飛び込んできました。

 公正取引委員会が「ヤフーの事前説明が事実であれば独占禁止法に抵触するものではない」というスタンスをとったことに、正直、非常に驚きました。

 インターネットには光と陰の部分があります。私たちは、インターネットの技術力、その力を享受し、いろいろ便利になったと思います。

 インターネットの普及によって、いままで得ることのできなかったようなグローバルな情報が、家に居ながらにして手に入れることができ、サービスを受けることもできます。一昔二昔前では考えられないよう便利な社会になった。光の部分を数え上げればキリはありません。

 しかし、光には必ず陰の部分もあります。例えば送り手の匿名性があります。不正な情報がインターネットを通じて流出したり、個人情報が無断で閲覧される可能性も出ています。インターネットを使った犯罪まで出てきているのが現状です。

 今回のヤフー・グーグル問題については、広告料、広告の掲載順位、インターネット上のビジネスでの不当な扱いなどの問題が、陰の部分としてわが国に影響を与えるのではないかという疑問がわきました。これは取り組んでみたいと思ったわけです。

 最初に記事を目にした時点では通常国会は閉じておりましたので、国会閉会中に公正取引委員会から今回の問題について聞き取り調査を行い、説明を受けました。その後、参議院選挙が終わった後の9月の臨時国会で、独占禁止法問題を取り扱う経済産業委員会で質問の機会があり、9月8日にこの問題を取り上げました。おそらくこの問題を国会で取り上げたのは初めてだと思います。

 その後、楽天、マイクロソフトの2社が、この問題について公正取引委員会に申告申し立てを行いました。そこで、10月27日、改めて同じく経済産業委員会で質問に立ちました。質問の内容は、私のホームページ議事録を添付しております。

「匿名」を条件に出席した広告会社

 10月27日の国会質問の中では、公正取引委員会の竹島一彦委員長から次のような答弁を引き出しました。

「申告を受けての調査結果を早ければ11月中に出したい」

 この時点で、年内にもヤフーの検索エンジンがグーグルのシステムに移行する動きも見えてきました。そこで川崎二郎代議士と相談して、11月11日、インターネット検索問題調査研究会を議員連盟として立ち上げ、毎週、勉強会、調査会を行ってまいりました。非常に精力的に行ったと思っています。この勉強会で、公正取引委員会、経済産業省、楽天、マイクロソフトから話を聞き、議論をさせていただきました。

 新聞などでもずいぶん報道されましたが、インターネット広告の会社経営者の方に、特に匿名でというご希望がありましたので、匿名でご出席をいただいて現状をお話しいただきました。

 で、これまでのお話、議論をまとめ、中間取りまとめとして発表させていただいたのが、12月2日のことです。

 インターネットの広告会社の方が「匿名で」と仰った。この条件を出さなければならないところに、この問題の陰の部分を象徴しています。関係者は「今回、ヤフー、グーグルを批判することで、今後のビジネスで不利な状況に追い込まれはしないかという思いが頭の中をよぎった」と、仰ってました。

 中間取りまとめは先程申しましたように12月2日に行いました。11月30日に欧州委員会がグーグルの独占問題について本格的な調査に入ったんですが、そのニュースが飛び込んできたのがこの12月2日なんです。そして、われわれは午前中に中間取りまとめの記者発表をしていたんですが、午後からは公正取引委員会の調査結果が発表されました。

町田: 非常に慌ただしい12月2日でしたね。

近藤: では、ではこれからは「インターネット検索問題調査研究会 中間取りまとめ」のペーパーに沿って、われわれの考え方をお話しさせていただきたいと思います。

 経緯はいま話したので、「1.議連の検討の視点」から説明させていただきたいと思います。この研究会が検討の視点をどこに置いたか記しています。

  一点目は、ヤフーがこれまで使用してきた同社の検索エンジンに代わって、グーグルの開発したインターネット検索技術、検索連動型広告配信システムの二つのシステムを導入するということです。わが国のインターネット検索、検索連動型広告配信システムの9割がグーグルのシステム上で行われることになります。

 これでわが国における公正かつ自由な競争が今後とも本当に確保できるのか、今後もこの分野におけるイノベーションなどの視点から容認できるのか、調査検討を行うというのが一点目の視点です。

 二点目。技術の共有がこの二社の間でなされた場合、インターネット広告分野での事業においてグーグルのシステムの支配力が高まります。そのことによって、不当な広告料の値上げだとか、広告掲載順位の不正な操作などの弊害を回避していくための手立て、方策を検討する必要がある。これが二つ目の検討の視点です。

 「2.今後の技術提携による問題の広がり」。これは、どのような問題が広がる可能性があるのか研究会としての懸念を表明した部分です。まず第一に、本件は一度独占状態になると後戻りはできない課題です。さらにシステムが導入されて時間が経過すればするほど、いまは予想できないような問題が顕在化していく可能性が高いということです。

 システムの独占によって不当な広告料の引き上げや、意図を持った検索順位の操作は、結果的に広告の対象の製品、サービスなどの価格の値上がりに繋がります。また、検索情報がグーグルのシステムの集中による個人情報の取り扱いによっては、日本国民の利益に直接関わる可能性がある問題です。

 三つ目。わが国の検索連動型広告市場は、現在およそ2000億円、近い将来、5000億円の規模に成長するといわれています。その世界で、多数の弱い立場となりやすい中小企業が事業に関わっていることに配慮すべきであると指摘しています。

 四つ目。すでにグーグルが9割以上のシェアを占めているヨーロッパでは、11月20日、欧州委員会がグーグルに対して、EU競争法に基づく調査を開始するなどの報道がなされています。このような海外でおきている問題、これに対する各国、各地域の視点、対応を十分に注視してウオッチングし、わが国として適切な対応を行うべきです。

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