スイスの無制限為替介入の影響=円高に是か非か?
スイス国立銀行〔PHOTO〕gettyimages

 9月6日、スイス国立銀行は、1ユーロ=1.20スイスフランに制限するために無制限の為替介入を行うと発表した。今回の措置の背景には、スイスフランの過剰な上昇が国内の産業に重大な影響が発生しているという認識があった。スイスフランの上昇を力づくで抑えるため、無制限にユーロ買い・スイスフラン売りのオペレーションを続けるのである。

 ただ、ペレーションは劇薬だ。投機筋からスイスフランが狙い撃ちされる場合には、スイス中銀のスイスフラン売りによって、スイス国内で流通する通貨の量も、理論上、無制限に拡大することになる。それが現実のものになると、スイスフランの対ユーロ為替レートを安定できる一方、国内ではインフレ懸念が台頭することになる。今回の政策決定は、そうしたリスクを冒してでも、スイスフランの上昇を止めたいという、スイス政府の決意表明と受け取るべきだろう。

 また、決意表明によって、スイスフランの上昇を止められるか否かについては疑問の余地がある。為替レートは市場で自由に決定されるものである。そのため、市場参加者の多くがスイスフラン買いに走ると、いくら中央銀行が一人で頑張ってみても、その勢いを止めることは難しい。問題は、スイス政策当局の意思表明が、市場参加者を説得できるかどうかにかかっている。

ソロス対バンク・オブ・イングランドの戦い

 かつて、大手ヘッジファンドを率いるジョージ・ソロス氏はポンドに多額の売りを浴びせ、英国の中央銀行であるバンク・オブ・イングランドに戦いを挑んだ。結果は、ソロス氏が中央銀行に対し勝利を収めることになった。それは、市場参加者の多くが、「ソロス氏の言っていることに理がある」と認めたことが主な要因と考えられる。今回のスイスの措置が、そのような結果になるか否かは別にして、いかな中銀と言えども、市場の動きを完全のコントロールすることはできない。

 また、スイス政策当局が本気でスイスフランの上昇を阻止しようとすれば、中期的に、海外からの投資資金や資本の流入を制限する、資本規制を実施する可能性は小さくないとみる。資本規制は、基本的に、国際金融市場での資金の流れを制限することになる。むしろ、今回のスイス政策当局が採った措置の最大のリスクは、そうした資金の流れを阻害するような規制が、世界的に広がることだろう。

 今まで、世界経済は、自由な資金の流れや取引の自由が保障されていたことで、グローバリゼーションの進展という果実を手にすることが出来た。グローバリゼーションには弊害の部分はあるものの、人、モノ、金、情報が瞬時に国境をまたいで動けるからこそ、新興国経済は高い成長を享受することができた。世界的に規制が強化されると、その動きを阻害することにもなりかねない。

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