原口一博×郷原信郎 菅政権を語る 第2回「尖閣問題の対応で露呈した民主党の野党体質」

第1回 はこちらをご覧ください。

郷原: 昨年の具体的な問題というと、まずは尖閣の中国人船長釈放問題ですね。

原口: そうですね。

郷原: いま私は検察の在り方検討会議に入って、大阪地検を巡る不祥事の問題を中心に、検察の改革の在り方を議論しています。私は検察にとってこの問題は大阪地検を巡る問題よりも、むしろはるかに大きな問題じゃないかと思ってます。

 政治という面から見るんじゃなくて、私は検察という面から見るんです。検察が絶対に逸脱してはならない、とにかく政府としての責任で行わないといけない外交の問題に、自分たちの権限を逸脱してそこに手を出した。そういうコメントした。それを訂正もしてない。それを官房長官が了とした。

 私はこの問題は、検察の百年の歴史の大きな汚点になりかねない、大変な問題だと思うんですね。

原口: 仰るとおりですね。日本の検察は公訴権から何から、よその国と比べてもかなりいろんな権限がありますね。

郷原: 強いです。

原口: ものすごく強い。それに政治的判断を、国際的判断まで負わせるとしたらオールマイティです。

郷原: そうです。

原口: そんな権限は誰も与えてませんし、私はそれを内閣が追認したのも疑問です。一番申し訳ないのは国民に対してであって、国家・国益・主権を侵されるようなことは決してあってはならない。

 尖閣の事件でいうと、船長も船員も身柄をしっかり拘束し、船も押さえ、接見禁止をかけて、その中で結論を出すべきでした。

 その後、政治の判断としてどうするか。僕は外交は毅然とした対応が一番だと思います。毅然とした屁っ放り腰ってないんですよね。しかもあれを検察の判断に委ねたような答弁っていうのは・・・。私が内閣にいたときに起きた事件なんです、9月7日ですから。

郷原: 逮捕の時ですね。

原口: ええ、逮捕の時はですね。そのときの閣内の議論は外に出せませんが、なんであそこまで違うのかなっていうのが、私には同じ党の中にいてもまだ分からないんです。

郷原: 政治が介入したんじゃないかということばかりが強調されています。しかし、その問題と別に、少なくともいまは内閣側から、官房長官側から言われているのは、検察が独自に判断したんだと、その独自の判断の中に外交上の配慮が含まれていると。

 このこと自体が大問題で、検察は外交上の判断をするんだったら法務大臣に請訓を上げて、法務大臣から指揮を受けてやる。それによって政治の責任を明らかにする。これが当たり前のことだと思うんですね。ところがそうはなっていない。検察の権限を逸脱して終わってしまっている。

 それとは別に、どうも検察が独自に判断したことではなくて、やっぱり官邸からやらせたんではないかという疑いが相当指摘されています。もしそうだとすると、今度は逆に政治は責任を負わないといけないわけだから、「検察が勝手にやったことだ」ですまされる問題ではないですね。

原口: ないですね。

誤解されている指揮権発動

郷原: ところがこの間、テレビのBSの番組で仙谷さんが言われたのを見ていたら、「一旦司法の手に回ったものは、そんなに簡単に政治が手を出せるものではない」と。どこからそんな解釈が出てくるんですかねえ。

原口: 指揮権の発動ってことも前に郷原先生とずいぶん議論しましたけど、指揮権発動の定義と運用について誤解している人たちが多いんですね。

郷原: そうです。

原口: そこのところを少しお話しいただければ、これを見ている人にもよく分かると思います。

郷原: 指揮権というのは、検察庁法14条の本文と但し書きの問題なんです。

< 検察庁法第14条/法務大臣は、第4条及び第6条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる >

 本文とは、法務大臣の検察庁職員を含む法務省職員全体に対する一般的な指揮監督の問題です。ただ、その指揮監督の中で個別具体的な事件の権限行使に関わる部分は、但し書きで、検事総長を通じてしか指揮が出来ませんよ、と書いてあるんですね。

 本来は検察も行政機関ですから、すべての問題について法務大臣の指揮監督下にあるというのは、行政機関であれば原則なんです。

 しかし検察が行う事務、権限行使のかなりの部分が刑事事件について、法と証拠に基づいて淡々と、政策判断もなにもなく、証拠があれば起訴する、なければ不起訴にする、こういう作業です。この部分は政治的な判断、行政的な判断に馴染まないということで、原則は検察官の独立性を認めているんですね。

 ただ、それは原則であって、そういったことに馴染まない刑事事件もあるんです。例えば証券市場に重大な影響を与えるライブドア事件のような事件、あるいは政治資金規正法なども、これは政治のルールですから、政治のルールをどう運用していくのかという問題、これは政治的な影響も非常に大きい。

 これは単に検察が法と証拠に基づいて適切に判断していくというだけでは、なかなかすまない問題です。そういった問題に関しては、指揮権をどういうふうに機能させていくのかということは当然問題になります。

 ただ、そこが問題になる、ならないということ以前に、絶対に検察だけでは判断できない、当然指揮権によってやらないといけない部分があるんですね。それが外交問題です。これは誰が考えたって検察の権限外です。それともう一つは、検察庁法14条の本文の問題ですが、検察自身が組織的に問題を起こしたとき。これは検察の独立性を問題に出来ないんです。問題の性格上、当然法務大臣が関わるべきです。

 今回の大阪地検の問題がまさに14条本文の問題であり、そして尖閣の船長釈放の問題が但し書きの問題です。典型的な指揮権発動の問題が二つ出てきてます。それが実際にどういう実情であったのかが、あまり明らかになってないですね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら