雑誌
キリン・サントリー、経営統合破断の可能性
カギを握るのは98歳のゴッドマザー
社員も知らない全内幕
キリンは昨年、ビール事業で9年ぶりにシェア1位(課税ベース)を奪回した。今後世界市場に挑戦するためには、サントリーとの大型合併を断行するしかない。しかし、不穏な情報が流れ始めて―――。

交渉がピタッと止まった

サントリー・佐治社長(上)、キリン・加藤社長(下)の「トップ会談」で交渉がスタートしたが

 ついに「破談の可能性」まで語られはじめた。

 昨年7月、日経新聞のスクープによって発覚したキリンホールディングス(以下キリン)とサントリーホールディングス(以下サントリー)の経営統合交渉だが、関係者から聞こえてくるのは、不穏な話ばかりだ。

 あるサントリーの現役幹部はこういう。

「向こう(キリン)が最初に投げてきたボールが、予想以上に低すぎた。交渉ごとだから、最初は低いところから始める、というのも分からないではないが・・・・・・」

 別のサントリーの役員は、知人に現在の交渉の様子をこう表現している。

「(交渉は)7合目で、ピッタリ止まった。そこからどうにもならない。今後? あまり楽観的にはならないですね。お互いの社風が違いすぎて、どうにも(難しい)」

 一方、深夜帰宅したキリンのある役員は、自宅前で本誌の取材に答えた。

「いまは、お互いに数字(互いの主張する統合比率)を出して、適正な評価をしている最中だということです。時期が延びている? 特に1月何日までと期限を区切ってやっていたわけではないですから」

 統合交渉について取材しているジャーナリストは、「昨年11月末、互いに統合比率の数字を出し合ってから、交渉がフリーズしてしまった。少なくとも1月下旬までは、交渉は進展していない」と証言する。

 当初昨年末までにと見られていた統合時期の発表は延び延びとなり、2月中旬以降にずれ込むのは確実。3月末に予定されているキリンの株主総会に間に合うのかさえ、微妙な情勢になってきた。

 サントリーの総帥・佐治信忠社長の東京・元麻布にある豪邸には、連日深夜各紙の記者が訪れているが、警備会社の車がピタリと横付けされ、佐治社長は記者の前に姿を見せようとしない。

 両社の合併交渉が明らかになった当時は、「勝ち組連合」と話題になった。

 キリン、サントリーともに'08年は最高益を記録し、業績は好調。得意とする事業分野も、「キリンラガー」「一番搾り」「のどごし<生>」などビール部門が強いキリンと、洋酒部門で長い伝統と大きなシェアを持ち、清涼飲料水分野にも強いサントリーは、絶妙の補完関係にあり、「結婚相手」として理想の組み合わせに思われた。

 両社の売上高('08年)は、キリンが2兆3000億円、サントリーが1兆5000億円。あわせて3兆8000億円もの巨大企業となり、世界5位の規模の食品メーカーに躍り出る。世界最大のビール市場・中国の攻略に向けて、両社の製品開発力、資本力を結集すれば、欧米メーカーに対抗できるというのが、もう一つの統合メリットだった。

「交渉は、キリンの加藤壹康(かずやす)、サントリーの佐治信忠両社長の“トップ会談”で始まった。業界団体の会合で顔を合わせた際、佐治社長のほうから声をかけ、'08年年明けに都内の日本料理店で昼食を共にしている。'08年中に何度か、会食し、'09年明けに佐治社長が経営統合を持ちかけた。

 加藤社長も結果的にゴーサインを出すのですが、それにはサントリー側の出した“条件”があったといいます」(全国紙経済部デスク)

 佐治社長のつけた条件の一つは、「サントリー」の社名を何らかの形で残すこと。そしてもう一つが、経営統合後もサントリーの大株主「寿不動産」の所有株の割合を3分の1以上に維持することだった。株式の3分の1を握る大株主は、経営の重要事項に対する拒否権を持ち、経営方針の決定に強い影響力を行使することができる。

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