石油の高騰もある 2011年アメリカの金融緩和で資産・商品価格に上昇の気配
政治無策の日本はそのお裾分けに期待
内閣改造ばかりが話題になって肝心の経済政策は有効策のないまま

 新しい年がはじまった。例年ではあるが、どういう年になるのか、景気はどうなるのかと聞かれる。正直言えば、景気は政策次第でどうにもなる。だから景気を占うということは、政策がどうなるかを予想することになる。

 政策は人がやることなので、どうすべきかをいうのは簡単だが、どうなるかを予想することは難しい。特に、菅政権は、経済財政諮問会議のようなマクロ経済の司令塔がなく、経済理論からみても標準的でない人がスタッフにいたり、経済政策の芯がない。「増税すれば景気が良くなる」、「乗数10の経済政策がある」という菅総理の迷言もあった。文明史観の話はできても喫緊の経済政策には役立たない。

 そうした実績を考えると、菅政権ではなんらまともな経済政策は出てこないだろう。もっとも、政局は混沌としている。菅政権の逆張りをすると、不思議といい経済政策になる。一般論として政局は経済の混迷要因であるが、現状ではむしろ政局が一つの救いになるかもしれない。皮肉なモノだ。

 いずれにしても、菅総理は、年頭所感で6月までに消費税増税問題を片付けるといった。この話では、増税の前にやるべきことは山ほどある。私の近著『消費税増税はいらない!』などを参考にしてもらうとして、その一つとして、公務員の天下り問題がある。

 この点で民主党は自民党よりも酷い。元旦付けで、経済産業省資源エネルギー庁の石田徹前長官(58)が退官して4カ月余りで、東京電力顧問になっていた。民主党が政権交代前にいっていた「天下り根絶」が跡形もなくなったどころか、自公政権より悪い方向に向かっている。

一昨年の政権交代後、日本郵政人事でも酷い天下りがあったが、今回の天下りはそれ以上の悪のりだ。というのは、直前まで直接所管していた企業に、所管庁のトップがいきなり天下りしたからである。こうなると、石田徹氏が資源エネルギー庁長官時代に、電力業界の便宜を図るために、例えば電力自由化をサボタージュしたのはないかとか、行政全体を疑ってかからなければいけない。

 なぜ所管していた企業に4ヶ月で行けたかというと、役所側は「国家公務員法では以前、退職後2年間は関連業界に再就職できない規定があったが、自公政権時代の2008年の改正法施行で自ら就職先を探す場合は制限がなくなったからだ」と説明している。しかし、これはミスリーディングだ。
 

 
たしかに、退職後2年間の再就職制限はなくなったが、それは実力での再就職を妨げないという趣旨である。それを担保するために、退職前に便宜を図っていなかったかどうか、役所があっせんしていたかどうかなどをチェックする、再就職監視委員会の設置もセットになっていた。ところが、民主党政権は、再就職監視委員会で委員を選定せず休眠状態で、天下りについてチェックなしの野放し状態だ。霞ヶ関はおいしいとこ取りをして、厳しいチェックは怠っている。

 これを一穴に、こうした所管業種でも4ヶ月でいいという悪のりした天下りは確実に各省に広がるだろう。すると官僚が自分の天下りのために税金ムダ使いを増やすだろう。それで、消費税増税に政治生命をかけるというのはとんでもない話だ。

アメリカ経済のお裾分けに期待するしかない

 こうして経済を語ると、お先真っ暗だが、他力本願であるものの、海外経済は明るい兆しはある。そのお裾分けを日本は受けられるかもしれない。特に米国経済だ。

 米国は、2008年9月のリーマンショック以降、猛烈な金融緩和を行っている。実は、米国連邦準備理事会(FRB)は、物価の安定とともに雇用の確保も法律上要請されている。物価と雇用の関係は、完全雇用まではトレードオフの関係になるので、物価と雇用の二つの責務は矛盾しない。米国経済はインフレ率が2%程度であれば、いい雇用状態になって、失業率は5-6%程度になるようだ(下図参照)。

 リーマンショック以降、失業率が高くなっているので、FRBとしては金融緩和して物価を上げ失業率を下げようとするのは当然である。そこで、ポイントはどこまで物価を上げるかであるが、債券市場から算出されるインフレ予想が鍵を握る。どうも、インフレ予想率を2%程度(それより少し高い程度)にしたいようだ(図参照)。

 そう見ると、リーマンショック以降、第一次の量的緩和に続いて、昨年10月から第二次の量的緩和(これを、豪華客船のクイーン・エリザベス2をもじってQE2という)も説明できる。もちろん金融緩和してもすぐに物価が上がり失業率が下がるわけでないが、その方向に動くことは確かだ。12月の失業率は9.4%であるので、まだ効果が出ているとは言い難いが、インフレ予想率がやや高めになっても、量的緩和は続けるだろう。


その場合、価格が上がりやすい市場とそうでない市場がでてくる。金融緩和の効果は広く経済全体に及ぶが、その効果を分野別に予測することは難しい(逆にいえば特定市場や特定価格への影響がわかると、フェアな政策とはいえなくなるので、わからないことが金融政策のメリットだ)。

 一般的にいえば、資産・商品価格は上昇しやすくなる。価格の変動を先取りするからだ。特に、原油市場などは景気回復への需要期待とともに価格が上がりやすくなる。日本的な感覚でいえば、そうした市場へは多少とも規制をすればいいとも思うが、米国ではそれも立派な経済の一部であり、下手に規制するよりも自由のほうがましと思うはずだ。そうした市場が活況になることで、資産効果が生じて消費活動が盛んになるというメリットもある。米国の金融緩和の恩恵は日本の株式市場にもでてくる。

 ちょっと情けないが、それなら日本でも金融緩和すればもっと大きな効果があるのだが、今の菅政権では全くの望み薄だ。日銀は政府の子会社であるので、もっと意思疎通を頻繁にやらなければいけないが、菅政権は政局で頭が回らず、それにかこつけて日銀は引きこもり状態だ。

 米国に限らず世界各国のマネをして、日銀ももっと量的緩和すれば、国内雇用情勢もよくなる。そしてデフレからも脱して名国成長率が高くなる。菅政権は毎年社会保障費が1兆円増えていくから増税というが、その程度なら毎年名目GDPを1%高くするだけで税増収でまかなえる。さらに、金融緩和で円がドルに対して相対的に増えることで、円安になる。

そうなれば、懸案のTPPでも、輸出環境がよくなる一方、輸入価格が高くなって国内生産者の保護が容易になるので、国内対策になる。今時、通貨を無視した貿易問題はありえない。TPPについての国内説得のためにも為替問題、金融政策はポイントになる。

 いくら米国経済が回復基調としても、デフレ脱却なくして、6月までに消費税・TPPを処理できるとも思えない。また、鳩山前総理の二の舞になるのではないか。
 

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