田原総一朗×孫正義「教育に格差をどう持ち込むべきか」
白熱激論! 電子教科書は日本を救うか 第5回

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田原: 愚問かも知れませんが、パソコンで文章を書くようになった。手紙を書くようになった。するとみんな漢字が書けなくなった。ITになるとそういうことが起きません?

孫: ある意味での退化と進化だと思います。要するに漢字が書けないというのはある意味での退化なんですけども、逆に言うとそれも進化だと僕は捉えている。

田原: もっと言うとね、今の退化の典型は携帯電話なんです。

 新聞記者は政治家への取材を携帯ですませる。フェイス・トゥ・フェイスで会いに行かない。で、(政治家も)携帯で返事するのはいい加減な返事なんですよ。そんな話を新聞に書いちゃう。便利になると、みんな苦労しない。そのかわりでどんどん退化するんじゃないかと思うんです。

孫: いや、それは両方だと思うんです。要するに、携帯の前の時代に電話を使っていても「人間が目と目を見て話をしないとダメだ」と言われていた。でも目と目を見て話せる一日あたりの回数、人数って何人ですか。

 それに対して、電話が出来ることによって、しゃべれる人の数ははるかに増えた。メールが出来たり、ツイッターが出来たりすると、はるかにコミュニケート出来る人数が増えた。しかも双方向で。

 だから便利になって効率を上げていく部分と、たまにはこうやってお会いして目を見ながら雰囲気を見ながら、場合によっては拳骨の届く範囲で、という緊張感のなかで・・・(笑)。

田原: そう。拳骨の届く範囲っていうのは大事です。唾を掛けてね。唾が掛かるのが大事。

孫: 大事。

田原: 要するに、携帯じゃ唾は掛けない。

孫: だからそれは急所でやるべき。

田原: え?

孫: 急所。

田原: ああ、急所。

孫: 要するに、いつもそれではなくて、ここぞという急所のときに、「やっぱりお会いして話をしましょう」というトドメを刺す。そこはやらなきゃいけない。

田原: 孫さんもそうしてらっしゃる?

孫: 僕もそうですよ。だから僕は毎月海外に行っていますもん。

田原: それを聞いて安心した。やっぱりフェイス・トゥ・フェイスって大事なんだ。

孫: 大事ですよ。だから時間の効率は悪いですけど飛行機に乗らなきゃ行けないけど、毎月アメリカに行ったり中国に行ったりシンガポールにいったり。それは目を見てフェイス・トゥ・フェイスで。

田原: やっぱりそこが一番大事なところですね。僕はITに反対じゃない。電子教科書も反対じゃない。だけど、効率がいいもんだから、だんだん教師がサボタージュして、手抜き手抜きになるんじゃないかというのが心配なの。

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日本の先生は雑用が多すぎる

孫: そこでね、ちょっと面白いデータがある。

 小学校の先生方が生徒に直接指導するために費やしている時間のパーセンテージは、実は全体の37%なんです、日本は。

田原: あとは何をしているの。

孫: あとは点付とか事務連絡とか明日の授業の準備とか、そういうことに残りの63%を費やしている。で日本の先生方は、労働時間は結構長い。

 だから労働時間は割と長くて、過酷な労働をしているんだけれど、授業というものに費やせる時間は約40%。他の国々と比べると、かなり低いんです。

田原: つまんない仕事をいっぱいしているわけだ。

孫: そう。身体はいっぱい使っているんだけど。

 アメリカですら57%、韓国は50%です。つまり50~60%を授業に費やしている。日本は直接指導に当てられるのは37%です。

田原: 雑用が多すぎるんだ。

孫: そう、雑用が多い。だから点付けなんていうのはね、電子教科書で自動的にやりゃあいいじゃないか。先生が時間を割くのはそこではなくて、赤ペン先生のように、手取り足取り指導をするところ、あるいは「正解率の低い問題については明日の授業でさらにもう一回復習しよう」とか、ディスカッションをしようとか、そういうふうに科学技術で出来るところは出来るだけ端折りましょうと。

 さっきの電話もそうです。事務連絡的なところ、あまり感情を伴わなくてもすむようなところは機械を使ってやりましょうと。で、肌で見て、抱き合ってやるようなところは、はやりハイタッチ(人間同士の触れあい)で。だからハイテク&ハイタッチだと。

田原: 両方必要だと。

孫: うん。だから仕事もハイテク&ハイタッチ、教育もハイテク&ハイタッチ、医療もハイテク&ハイタッチですよ。

 で、シリコンバレーの人たちほど、それぞれの自宅にプールがあって、庭には緑がある。一件当たりの自宅にプールがある率は、シリコンバレーが一番高いんじゃないですか。

田原: カネを稼いでいるから。

孫: カネを稼いで、仕事場に行ったらハイテクだらけ、家に帰ったら庭の緑とプールと家族とバーベキュー。

田原: 家にはハイテクはないわけ?

孫: あります。家の中でもそのハイテクでチャッチャッとこなして、で、あとは家族とバーベキューしたり歌を歌ったりというハイタッチの生活です。仕事の生産性はハイテクで徹底的に生産性を上げて、土日は家族とわーっと過ごす。そういうふうにものすごくメリハリがある。アートを愛するし、健康を愛するし。

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