田原総一朗×竹中平蔵対談 最終回「日本企業がサムスンに勝つために」
成功のロールモデルをつくろう
田原 総一朗

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田原 よく言われるのは、日本は国内での競争が激しすぎるから国際競争力を持つだけのゆとりがないということです。たとえば電機メーカーですね。これについてはどうですか。

竹中 そういう言い方があるんですけども、全面的にはちょっと賛成できないんです。なぜならば日本の自動車メーカーはなぜ強くなったかを考えて欲しい。それは9社でしのぎを削ったから強くなったんです。1970年代、60年代の終わりくらいに、通産省が集約しろと動いたことがある。9社も多すぎる、アメリカでも3社しかないじゃないかということで、集約を試みたことがあるんです。

田原 あ、やったことがあるんですか。

竹中 でもそのときに日本の自動車メーカーは反発して、結果的に競争してそれで強くなっていったわけです。むしろ電機メーカーが一緒にならないのは、株主の力が弱いからだと私は思いますよ。株主がちゃんとガバナンスをやれば、こんな状態じゃなくてサムスンに対抗できるようにやろうという働きが起こるはずですよ。

田原 これは竹中さんが仰ったのかも知れないけど、97〜98年にアジアで通貨危機が起きた。韓国も直撃しました。そのときに金大中が会社を整理したんですね。だからいまやサムソン1社の利益が日本の全電機メーカーの利益よりも大きい、こうなっちゃってると。では日本はどうすりゃいいんだろう。

竹中 理想的には関わっている金融機関とか、株主乃至は経営者自身が、自分たちの利益のためになるなら一緒にしようと動き出すべきですね。ただし、こういう状況だから政府が乗り出さなきゃいけないという議論は、私はどこか胡散臭いと思いますよ。政府がそんなことを主導してうまくいくのかと、ダイエーを潰すまいとしてあのとき走り回った人たちにそんな見識があるのかと、私自身は思いますね。

 結局ゾンビを生き返らせているからこうなるわけです。どこかが潰れることによってどこかが大きくなるわけですね。JALがきちっと整理されれば、全日空が大きくなって世界で活躍できたんです。今やっていることは企業を救って産業を潰すことです。

田原 なるほど。

竹中 そこは非常に健全に競争政策の中でやっていくんだと、そういう見識を日本の政府は持ってほしいですね。

格差が拡大する、それほど激しい競争は日本社会にはない

田原 そこがまた問題でです。大竹文雄さんという阪大の教授が書いた本によればこうある。世界の先進国はほとんど例外なく、つまり競争が大事、自由競争が大事であり、そのためにある程度の格差ができてもしようがないというのが70%くらい、国民の支持を集めている。どの国もそうなんだって。しかし日本だけは格差ができないのが大事っていうのが半数以上にのぼる。競争はどっちかっていうと反対なんです。

 で、竹中さんと小泉さんが叩かれているのは、あいつらは新自由主義だと、競争至上主義だと、ここなんですよ。

竹中 そこがまたものすごく事実の誤認があるわけです。日本にも格差がありますけども、それは競争によって生まれた格差か、制度が歪んでいるために生まれた格差かという議論をちゃんとやっていない。例えば、正社員と非正規社員というのは競争が生んだ格差じゃないんですよ。これは制度が生んだ格差なんです。

 競争の結果、格差が拡大することはあり得ます。でも競争の結果、格差が拡大する、それほど激しい競争は日本社会にはないですよ。

 繰り返して言います。競争の結果、格差が拡大することはありますから、それに対してセイフティネットは整備しなければいけないけれども、なんか、いまある格差が全部規制緩和で生まれたというような、こんなムチャクチャな議論はない。ほとんどが制度的な格差ですよ。

 たとえば雇用。1979年に東京高裁が変な判例を出して、その判例が制度、正社員を守りすぎている、そうすると、それ以外の形態が出てくる。そこで格差がついてくる。これは裁判所の間違った判例が生み出した格差なんです。

田原 とんでもないよね。この判例によると企業は正社員をクビにできない。

竹中 クビにできないんです。日本の正社員は守られすぎているんです。

田原 だから、クビにできる非正規社員をいっぱいとるしかない。

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竹中 それはもう、こんなムチャクチャに保護された正社員だけを雇ったら会社が潰れるから、この判例が適用されない人を雇おうと経営者は一生懸命考えてる。
だから非正規社員は90年代からずっと増えてくるわけです。繰り返しますけど、これは小泉改革の前に増えて、小泉改革の時代は増加はむしろ滑らかになったんです。

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