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ウェブ環境をもっと快適に!
野心的な"ネット構造改革"

日に日に増大する情報に対して、ネットの環境が追いついていない――。
そんなウェブの在りかたを根本から見直そうとするグーグルの計画とは?

from MIT Technology Review MITテクノロジー・レビュー USA Text by Erica Naone
DANA SMITH/MIT TECHNOLOGY REVIEW/TMSI

 グーグルにとって今日のインターネットは、もはや遅過ぎる――。

 その理由を知るには、グーグルのネットブック「クロームブック」を使ってみるといい。これは、グーグルが描くコンピュータの未来像の一つを体現している。私たちがコンピュータを使って行っているほぼすべての作業を“クラウド化”し、いつでもどこからでも情報にアクセスできるようにする構想である。

 だが、ネットにはグーグルの構想に対応する準備ができていない。これは、グーグルにとって由々しき問題である。なぜなら同社は、私たちがネットと密接につながることで、より快適な人生を過ごせるようにしたいと考えているからだ。

 そこでグーグルは、秀逸かつ野心的な解決策を打ち出した。自分たちのサイトだけでなく、ウェブ全体を高速化させようというのだ。

 人はほんのわずかな遅れにも敏感である。グーグルの調査によると、検索結果の表示に0・1~0・4秒の遅れを生じさせたところ、ユーザーが検索を行う回数が0・2~0・6%も減少し、その数は数週間経つとさらに減った。従来の表示速度に戻した後も、ユーザーが以前の検索習慣を取り戻すまでに時間がかかったという。

 グーグルで、「ウェブ高速化」計画の技術面を主導するアルビンド・ジャインは、ネットサーフィンは「テレビのチャンネルを変えるようなものであるべき」と語る。この計画は、現CEOのラリー・ペイジの命で2009年に発足した。

 ジャインは同社製品マネジャーのリチャード・ラバットらとチームを結成した。ラバットとジャインは自分たちのサイトを含め、ウェブをあらゆるレベルで高速化させるためにグーグルができることを細部にわたってじっくり考えた。

 ところがある会議の直前、1通のメールが届いた。それまでこの会議では、ネットワークの動作速度を2倍にする方法を模索していた。ところがラリー・ペイジは、メールで10倍の動作速度を求めてきたのだ。

「それまでも動作を加速する方法についてアイディアを出し合っていましたが、メールを読んだ瞬間、小さな積み重ねに意味がなくなりました」と技術部門を率いるレオニダス・コントサナシスは振り返る。手を加えられる箇所を探すのではなく、アプローチを完全に変え、ネットについて根本から再考せざるを得なくなったのだ。

 その一方で他のエンジニアたちは、自社ブラウザ「グーグル クローム」の高速化にも取り組んでいた。クロームは、ウェブアプリの人気が高まるにつれて生じるようになった問題を考慮して設計され、構築されたブラウザだ。クロームのソースコードは一般に公開されており、グーグルは外部の開発者がブラウザをさらに加速させるアイディアを思いつくことに期待している。

高速化はネット全体にとっての成功

DANA SMITH/MIT TECHNOLOGY REVIEW/TMSI

 グーグルの真の狙いは、すべてのブラウザを改良することだ。そこで次に、「速いブラウザこそが最善」という広告キャンペーンを展開した。以来、ファイアフォックスやサファリ、オペラ、インターネット・エクスプローラといった競合ブラウザの速度はみな著しく上がっている。

 ブラウザの高速化も必要だったが、ウェブサイトそのものも加速する必要があった。10年4月、グーグルは個々のウェブサイトに動作速度の向上を余儀なくさせるような手段を講じた。同社の検索エンジンが検索結果の表示順位を決定する際に、サイトの表示速度も考慮に入れると発表したのだ。ネットを使う者なら誰もが知る通り、グーグルの検索結果の1ページ目に表示されないサイトは、ほとんど存在しないに等しい。

 またラバットとジャインは、最良の解決策は人の手を介さないほうが、かえって広まりやすいものだと気付いた。つまりラバットの言葉を借りるなら、「人に問題点を伝えるより、それを自動的に解決できるようにしたほうが早い」のだ。

 そこで、グーグルはサイト管理者向けに無料でダウンロードできるツールを公開した。サイトを分析して動作を遅くしている問題を自動的に解決するツールで、たとえば画像の処理方法を変えて読み込み過程を効率化することができる。

 確かに課題は少なくない。それでもグーグルは、自らにウェブを変える力があると信じて疑わない。ジャインも次のように決意を熱く語る。

「グーグルだけでなく、誰もがウェブの高速化を求めています。高速化はグーグルだけではなく、ネット全体にとっての成功となるのです」

Copyright 2011 Technology Review,Inc. Distributed by Tribune Media Services.

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