雑誌
インチキは〝お家芸〟北電「12年前にもやらせメール」
発覚した'08年のプルサーマル計画だけではない。
3号機増設時にも「賛成意見を集めろ」と
一番右が営業運転を再開した3号機。12年前のやらせメールはこの3号機増設についての説明会で行われた〔PHOTO〕橋下 昇

 呆れたとは、このことを言うのだろう。泊原子力発電所3号機の営業運転を再開したばかりの北海道電力で、「やらせメール」が発覚したのだ。泊原発へのプルサーマル導入の是非について住民の意見を聞くために開いた3年前のシンポジウムで、社員に賛成意見を出すよう社内メールで促していたのである。

「やらせといえば、九州電力が玄海原発2、3号機の運転再開をめぐって、自社や関連会社の社員らに再開支持の『やらせメール』を投稿するよう指示していたことが7月に発覚しましたが、北電までやっていたとは。さらにその後、四国電力、中部電力も原子力安全・保安院の要請でやっていたことが判明している。もはや、やらせは電力各社の〝お家芸〟ということでしょうか」(全国紙社会部記者)

 やらせは北電関係者からの共産党への告発で明らかになった。本誌も入手した北電の社内メールには、「『プルサーマル計画に関する公開シンポジウム』への参加協力について」というタイトルがつけられている。発信は'08年10月3日付。原発周辺の自治体との折衝などを担当する泊原子力事務所渉外課が、社内21の部署に発送した。

 9日後に原発に近い岩内町で開かれるプルサーマル導入がテーマのシンポジウムについて説明した上で、「プルサーマル計画を確実に進めるためにも、数多くの方にご参加いただき推進意見を提出していただければと思っております」と、堂々とやらせを促している。

「当時は、北電が道や地元の4町村に申し入れたプルサーマルの導入計画をめぐって、国や道、北電が主催する説明会が相次いで開かれていた時期でした。なかでも、道が主催したこのシンポジウムは、一連の説明会の最後に開かれ、参加した住民の意見が道の有識者検討会議に反映されることになっていた」(地元紙記者)

 北電にとってはプルサーマル導入がかかった〝勝負どころ〟だったわけだ。

発覚した3年前のやらせメールの指示書。「推進意見を提出していただければ」と言い切っている
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 シンポジウムには、約380人が参加した。会場からは「プルトニウムは人間の手に負えないエネルギーだ」などと、プルサーマル計画に反対の意見が続出したにもかかわらず、参加者を対象に道が会場で行ったアンケートでは、「(プルサーマル計画に理解が)深まった」、「だいたい深まった」との回答が、合わせて約55%に上ったという。シンポジウムに参加した岩内町の大田勤町議は、

「道のまとめでは過半数が理解が深まったことになっていて、違和感をおぼえた」

 とアンケートの結果を訝しむ。

 にもかかわらず、このアンケート結果は道の有識者検討会議で判断材料とされ、プルサーマル容認の最終報告につながった。これを受けて翌'09年3月、高橋はるみ知事は道議会で受け入れを表明したのだ。真下紀子道議(共産党)は、この問題について次のように指摘する。

「公正な判断が求められるシンポジウムで北電による意図的なやらせがあったのであれば、アンケートそのものの信憑性が疑われる。知事はプルサーマル受け入れの判断をもう一度やり直すべきです」

 共産党などの追及を受けた北電は、やらせを促す社内メールを送っていたことは認めたが、会社幹部による関与は確認できないとしている。

 だが、今年7月に九電のやらせメール問題が発覚した際、北電は経済産業省の指示を受けて、国が主催した説明会やシンポジウムでやらせがなかったか調査し、「なかった」と報告していたのである。北電は道の主催は経産省の指示の対象外だったと言い訳するのだが、隠蔽していたと批判されても仕方がないだろう。

こちらは12年前のやらせメール指示書。「総力を挙げて行う」と、明確にやらせへの参加を誘導

 道議会の与党議員の一人は、

「問題の発覚が泊原発3号機の営業運転再開の後だったので、助かりましたよ。これがもっと以前だったら、道議会も早期の運転再開に反対せざるを得なかったはずです」

 と、いけしゃあしゃあと話すが、問題はそんなことではない。

 実は北電には、12年前にもっと大がかりな組織的やらせを行っていた〝前科〟がある。ここに本誌が入手した北電の内部文書がある。A4判4ページからなるこの文書こそ、北電のやらせ体質を裏づける決定的証拠なのだ。文書は北電の広報部原子力広報チームが、 '99年9月に作成。1ページ目に押された「厳秘」の印が生々しい。

やらせの方法まで指示

 当時は、泊原発の3号機を新たに増設する計画をめぐって道が道民から意見の募集を行っていた時期にあたる。文書は、社員の知人やグループ会社、取引先などに働きかけて、5000件を目標に賛成意見を出すよう指示していたのだ。本店に950件、旭川支店に550件などと支店ごとにノルマを課していたことまで記されており、会社ぐるみだったことが分かる。

 さらに、提出する賛成意見について、〈賛成の趣旨がはっきりわかるように簡潔、明瞭に記述する〉とご丁寧に指示した上で、意見の〝参考ひな形〟まで用意しているのだ。例えば、「喘息気味の27歳女性」による意見として、

〈電気のエネルギーは原子力に頼る以外にないと思います。(中略)私は小さい時から喘息気味で空気の悪い所には住めず両親も私のために勤務地を変えた程です。このかけがえのない地球を守るためには、石油や石炭に頼っていてはいけないと思います〉

 などと言わせている。さらに、「札幌市の39歳の男性」の意見はこうだ。

〈泊三号機の増設は絶対に必要です。(中略)風力や太陽光などで本当に北海道の電気を確保できるとは到底考えられません〉

 さらに呆れてしまうのは、応募方法についての注意書きだ。郵便、ファックス、Eメールのいずれでも良いとしながら、〈FAX、E-Mailの場合は社内からの発信は行わない(発信元が先方に通知される)〉とし、そこにアンダーラインまで引いている。やらせを隠し、あくまで一般住民からの意見だと見せかけるための狡猾な工作だとしか思えない。

「このやらせについては、当時、地元メディアでも取り上げられた。北電は『社員への指示自体は電力事業者として道民に理解を広げる取り組みで、改めるつもりはない』と強弁していましたが、道内の世論の反発が高まると、『行き過ぎだった』と社長が陳謝するまでに追い込まれた。それでもまた今回、やらせを繰り返したわけですよ」(前出・地元紙記者)

 本誌前号では、北電の南山英雄前会長が高橋はるみ知事の資金管理団体「萌春会」のトップを務めていることをスッパ抜いたばかり。こんなやりたい放題の会社に、自浄能力を期待できるわけがない。

「フライデー」2011年9月16日号より

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