理念、思いつき先行の鳩山・菅の失敗に学び、「地道な地ならし」で逆転した野田首相に期待する「指導力」

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 野田佳彦前財務大臣が先週、泡沫候補の逆境を跳ね返し、見事に第95代内閣総理大臣の座を射止めた。

 泥臭い「どじょう」のイメージとは対照的に滑り出しは驚くほど順調だ。「挙党態勢」を掲げて、最初のハードルだった民主党役員と閣僚の両人事を無難にこなし、崩壊寸前だった民主党の党内融和を演出した。

 さらに、組閣も終えない段階で、自民、公明両党との政策協議の場の設置や、経済界の意見を吸い上げる野田版・経済財政諮問会議の設置にも動き出した。コンセンサス作りを徹底することによって、前任者たちが失った「首相」職への信頼の回復を目指しているとみてよいだろう。

 代表選の大逆転劇と、順調過ぎるほどの滑り出しの原動力は、いったい何なのか。

 今週は、その人間力を探るだけでなく、順調な滑り出しの演出と引き換えに、野田政権が背負い込んでしまった弱点をどう補おうとしているのか探ってみたい。

野田氏を支えた財務省

 意外に思われるかもしれないが、永田町・霞が関には、「民主党の政治家の中から鳩山由紀夫、菅直人両首相の後継者を選ぶとすれば、野田佳彦氏しかいない」との見方が少なからず存在した。

 というのは、2人の前任者の時代は、理念が先行したきらいがあるからだ。

 鳩山元首相の東アジア共同体構想や米軍普天間基地の県外移設構想、あるいは菅前総理の浜岡原子力発電所の運転停止要請や脱原発依存構想を思い出してみてほしい。2人はサプライズの演出に拘り過ぎて、「思い付き」の域を出ない構想を生煮えの段階で持ち出してばかりいた。結果として、政府を混乱に陥れたばかりか、構想が実現する道理もなく、民主党政権は国民の信頼を失ったのだった。

 対照的なのが野田氏だ。「段取りを重視する、手堅い政治家」(財務省OB)との評価は高く、早くから永田町・霞が関の一部に野田総理誕生を待望する声が存在し、政、官界に応援団が形成されていた。

 中でも腰が入っていたのは財務省だ。同省は、野田財務大臣の下で、昨年9月、今年3月、同8月と3回も円相場への介入を行った。公式の狙いは、急激な円高の阻止だ。本来ならば、財務官僚は「市場の強大な力に抗うことはできない。効果がない」とか「国際協調の観点から、自国通貨安の演出は好ましくない」といった理由を並べて、介入に強いアレルギーをみせても何の不思議もない環境だったが、財務官僚たちは1度もそんな素振りをみせなかった。

 3回目となった8月4日の介入は特筆すべきだろう。この介入について、前述の財務省OBは、「『勝(栄二郎財務次官)主導の介入』と言ってよいほど、財務省は総力をあげて積極的に取り組んでいた」と明かす。その言葉を裏付けるかのように、この介入は史上最大の規模に達したという。

 もちろん、その背後にあったのは、財務大臣として、粘り強く段取り(手順)を踏んで、官僚の協力を取り付けることを厭わない、野田氏の日頃の政治姿勢への信頼感だ。

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