知られざる「ゼネコン妻」和子夫人の正体
解剖 小沢一郎 第2弾〔取材・文 松田賢弥〕

「お前、どういうつもりだ」

 低くくぐもった怒声の主は、民主党幹事長・小沢一郎(67)であった。怒りを向けた相手は、寵愛する総務相・原口一博(50)だ。何のことはない、1月に入って原口が自分が所属する財務副大臣・野田佳彦グループの勉強会に顔を出そうとしただけだ。だが、野田は小沢とは一線を画す。蟻の反乱をも許さぬ小沢の性格を知ればこそ、原口は参加を断念した。

 1月23日、多くの報道陣が東京・千代田区のホテルニューオータニを取り囲んだ。この一室で政権与党の現職幹事長が東京地検特捜部の事情聴取を受けたのだ。しかも事件の参考人としてではない。被疑者として、である。だが、前代未聞の事態を引き起こした当事者は、冒頭のとおり党内の支配体制を緩めようとはしない。

 小沢は淡々と事情聴取に応じたようだ。小沢案件の主任を務める木村匡良(ただよし)検事が黙秘権について説明すると、目を閉じたままうなずき、当初こそ緊張した様子で唇を潤そうと幾度もコップを口に運んだ。だが、東京・世田谷の土地購入に充(あ)てた疑惑の4億円について、父・小沢佐重喜(さえき)(元建設相)の遺産を投資信託で膨らませたカネだと説明。収支報告書の記載については、逮捕された元秘書で衆院議員の石川知裕(36)や元私設秘書の池田光智(32)らを名指しし、「実務について任せていた」との釈明に終始した。

 聴取後の夜、小沢は世田谷区にある居酒屋「ひもの屋」に入り、側近たちと一杯やった。メディアを意識してのことだろう。店から出ると記者からの質問を無視しつつも、酔って上機嫌だとばかり千鳥足で車に乗り込んで帰途に着いた。

 だが、間違いなく潮目は変わった。鳩山由紀夫首相(62)が「戦ってください」との“お墨付き”まで与えたvs.検察の構図であったが、聴取の翌々日、民主党本部で会見に臨んだ小沢は、いっさい捜査に対して批判めいた発言はしなかった。ここにきて小沢がトーンを落とした理由。それは和子夫人の存在が大きい。

「当初、メディアは特捜部が和子夫人の事情聴取を行うかのように報じました。だが特捜部は小沢への事情聴取で、夫人の処遇について触れもしなかった。何を意味するのか。特捜部は夫人というカードを利用し、小沢の態度次第では夫人を捜査網に入れる、少なくとも事情聴取はさせてもらうというブラフをかけたのです。現段階で検察は、和子夫人を呼び出す意思はないでしょう」(検察関係者)

 小沢にとっての和子―――。小沢は、こんな具合に周囲に触れ回ることがある。

「1カ月に一度は女房と飯を食うことにしているんだ」

 だが、その言葉を額面通りに受け取る者は少ない。古くから小沢を知る自民党関係者は、こんな言い方をした。

「不仲だよ、あそこは。別居しているという話さえある。小沢邸に上がってみればいい。まるで家庭の臭いがしないんだ」

 だが、小沢が和子への聴取を避けたがる理由は別にある。決して和子の身を案じての行動ではなかろう。実は和子もまた、あの世田谷の小沢邸にカネをうならせたキーパーソンなのだから―――。