田原総一朗×辻野晃一郎(グーグル日本法人前社長)「なぜソニーは凋落したのか」 『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』著者に訊く 第1回

2011年01月19日(水) 田原 総一朗
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辻野:ええ。ただ、本当に引き金になったのは新聞広告だと言われています。

 VHSとの戦いでベータが劣勢になったとき、ソニーが新聞に全面広告を出して、そこの一番上に「ベータマックスはなくなるの?」って書いたものがあったんです。いろいろベータマックスのいいところをいっぱい書いて、最後に「やっぱりなくならない、ベータマックスは素晴らしい」といったことが書いてあるんですけど・・・。

田原:みんなそこまで読まないよ。

辻野:そう。そこまでみんな読まないから、お客さんは「ベータマックスはなくなるんだ」と受け止めて、それが本当にトリガーになって、一気にベータのシェアが落ちたと聞きました。

「会社を辞めるときに読む本」を買ってみた

田原:僕はベータとVHS両方を買いましたけど、やっぱり機能はベータマックスの方がよかった。でも、さっき辻野さんも言いましたが、VHS陣営は仲間作りが上手かった。ベータマックスはソニーが独走しましたが、それに対してVHSの松下はどんどん仲間のメーカーを増やすことにした。

辻野:そうですね。

田原:それともう一つは中身ですよね。コンテンツです。つまりVHS陣営はアダルトビデオをやったんですよ。ベータのソニーは真面目でね。ソニーってセックスはダメなんですか? 

辻野:(笑)

田原:VHSはアダルトビデオをお店がおまけでつけたりした。その力で売りまくったんですよね。そんなことが言われていますが。

辻野:そうなんですか。まあ公式によく言われていたのは録画時間の問題でしたよね。アメリカだとフットボールの試合を録画するのに3時間ないといけないとか。それがちょっとベータの方が不利だったと。

田原:なるほど。

辻野:それが本当の理由だったかどうかは分かりませんが・・・。

田原:それで辻野さんはアメリカに留学してギャップを感じたと。でも、その後でしょう、VAIOとかスゴ録とかを成功させるのは。

辻野:それははるか後ですね。

 だから留学から戻ってきてズッコケた時に、もう辞めようと思ったんですよね。

 本屋に行って、「会社を辞めるときに読む本」とか、「人生をやり直すときに読む本」みたいなものを買い込んできて、結構読んでいたんです。脱力しちゃったんですね。

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 でもそうこうしているうちに、半導体設計改革プロジェクトという全社プロジェクトが立ち上がった。ちょうど自分が持ち帰ってきた問題意識と合致する話なので、「あ、これをやりたい」と思って、研究所勤務だった私は、その主体だった半導体事業本部の担当者に話を聞きに行ったんです。

田原:どういう提案をされたんですか、半導体で。

辻野:さっき申し上げたように、半導体の設計手法をもっとスピーディーにするような・・・。

田原:アメリカで体験したように?

辻野:ええ、ちょうどそういう流れをソニーも理解して、設計手法を改めようと動き始めたんです。それでそこのメンバーに加えてくれとお願いして入った。それで辞めるのを思いとどまったんです。

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