首相交代のあおりで9月末にずれ込む
[概算要求]12年度予算は復興費別枠で緊縮型に

 例年9月は財務省で新年度予算の査定が始まる時期だが、首相交代のあおりで各省の概算要求の提出期限が同月末へと1カ月延期された。財務省は予算編成の越年を避けるため概算要求に向けた異例の「作業手順」を各府省に通知。東日本大震災の復興費は別枠とし、それ以外の政策的経費は今年度当初予算比で一律1割削減を求め、12年度の予算の歳出は国債費を除き71兆円以下、新規国債発行額は44兆円を上限とする緊縮型とすることが確定した。

 新年度予算の編成作業は7月中旬の概算要求基準の決定、それに基づく8月末の概算要求提出、9月以降の財務省の査定作業を経て、年末に予算案決定という手順で行われる。しかし、今年度は菅直人首相の8月末の退陣が予想されていたため、概算要求基準は新首相の下で決定すべきとの考えから政令を改正して概算要求の締め切りを8月末から9月末に変更した。

 11年度の当初予算の歳出は約92・4兆円で、その内訳は一般歳出が54・1兆円、地方交付税交付金が16・8兆円、国債費が21・5兆円となっていた。一般歳出のうち年金・医療など社会保障費は28・7兆円の巨額に達し、公務員人件費は10・4兆円、公共事業など政策的経費は13・9兆円などとなっている。

「作業手順」では高齢化に伴う社会保障費の自然増分1兆1600億円を捻出するため、各府省に公共事業など政策的経費を一律1割削減するよう求めた。昨年は人件費・義務的経費も含めた1割削減を要求した経緯があるが、今回は東日本大震災の復興財源確保のため国家公務員給与の1割カットの方針をすでに決めていることから、概算要求時の削減対象から公務員人件費は除くことにした。

 民主党マニフェストのうち高校授業料無償化と農業戸別所得補償は11年度並みの要求は認めるが、子ども手当は民主・自民・公明の3党合意により約4000億円の減額要求となる。高速道路無料化については予算要求せず震災復興財源に充てる。

 一方、今年1月から始まった年少扶養控除廃止に伴う地方の増収分5000億円などを含め、6000億円を確保し、新首相が予算を重点配分する枠とする。各府省には歳出削減した金額の1・5倍までは新規事業を要求できるようにし、新政権はこの中から6000億円の枠内で予算を重点配分する仕組みとなっている。

 一方、歳入では新規国債の発行は11年度並みの44兆円以下に抑制する。日本国債の格付けが引き下げられるなどの状況下で、財政規律を維持する姿勢を明確にしておかないと、国際金融市場で日本国債が暴落しかねないからだ。

 この「作業手順」について、野田佳彦財務相(当時)は「あくまで機械的なもの」と説明、枝野幸男官房長官(同)も「(正式な概算要求基準は)9月中旬に閣議決定し、具体的なメリハリや方向付けを決める」と話している。しかし、9月中旬に正式決定される概算要求基準の内容が「作業手順」から大幅に変更されることは時間的な制約から考えにくく、新首相の新年度予算編成に向けた裁量はごく限られたものとなりそうだ。

 また、大震災の復旧・復興費とB型肝炎訴訟に絡む患者への給付金は新年度予算とは別枠で管理する。政府は「復興債」を発行して財源とし、所得税や法人税の期限付き増税で賄いたい方針だが、新政権がどう対応するかは不透明だ。財務省は12年度予算の編成作業と大震災対応の11年度3次補正予算の編成作業を同時並行で行う厳しい秋となりそうだ。

厚労担当主計官を2人に増強

 一方、財務省は予算編成を担当する主計局の陣容を8月の人事異動の際に大幅に改めた。陣容の変更は01年1月の省庁再編を控えた00年8月以来のこと。各府省の要求を査定する主計官(課長級)の人数9人に変わりはないが、これまで1人で担当していた厚生労働を2人の主計官が受け持つことになった。厚生労働第1主計官が医療・労働などを担当し、第2主計官が主に年金を担当する。54兆円余の一般歳出の半分以上を占める28兆円余の社会保障費の大きさに配慮したものだ。

 その半面、かつては10兆円以上あった予算額が年々減少し、今年度予算では5・4兆円となった公共事業を専任で担当する主計官はなくし、国土交通担当主計官が併せ持つ。これまで国交担当主計官が受け持っていた環境省は編成替えして「司法・警察、財務、経済産業、環境係」の主計官が担当する。また、「内閣、外務、経済協力係」の主計官も組み替えで新たに生まれた。総務・地方行政、防衛、文部科学、農林水産を担当する主計官の持ち場に変更はない。

 世の中の動きとは遠いところにありがちな財務省も変わらざるをえなくなったようだ。

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