欧米の信用低下で日本がとばっちり
[円高]メリット生かせる内需型へ構造転換が急務

大震災で低迷する日本経済が円高の追い打ちを受ける=東京都港区の外為どっとコムで8月3日

 欧州、米国発の信用不安に世界が揺れている。リーマン・ショックによる経済の落ち込みから抜け出し、成長軌道へ向かっていたと思われていたところに、ギリシャの債務危機が起こり、それをきっかけに債務不履行というリスクが頭をもたげてきた。その余波は円の急騰という形で日本にも及んでいる。対ドルで戦後最高値を更新した円高は、大震災から復興に向けて動きはじめた日本経済の先行きに影を落としている。

 金融バブルの崩壊に伴い発生した不良債権が民間金融機関から政府部門に付け替えられ、それによって政府債務が膨らんだ。それがちゃんと返済できるのだろうか。ギリシャのような債務不履行が他の国にも広がるのではないか。そうした疑問が広がっているところに、新たな要因が加わった。

 米国の政府債務問題についての政治的なもつれは米国債の格下げを招き、さらに欧米経済の先行きが暗いということが、ドル、ユーロに対する不信につながった。

 今回の事態に至る第1弾は、ユーロの導入で金利水準が下がり、借り入れが膨らんだ南欧諸国や、住宅建設ブームに沸いた米国の例に象徴されるように、金融緩和を背景にバブルが膨らんだことだ。

 それがリーマン・ショックをきっかけにはじけた。そのまま放置すれば金融恐慌につながるとして、欧米諸国はゼロ金利の導入など超金融緩和策をとるとともに、需要喚起のため財政支出を拡大した。そして、民間金融機関に公的資金を投入したり、保有債権を買い上げるなどの措置をとって金融機関を支援した。

 その結果、政府債務が急速に拡大したが、EU(欧州連合)がギリシャ危機の収束に失敗し、債務危機はアイルランドとポルトガルに飛び火。さらにスペインやイタリアにまで波及するに至る。

 一方、米国では、国債の発行上限の引き上げをめぐる民主党と共和党の折衝が難航し、債務不履行が現実味を帯びる状況まで招いてしまった。両党の妥協は成立したものの、妥協の内容では債務削減の道筋がはっきりしないとして、格付け機関のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が米国債の格下げを行った。

 バブル崩壊に伴って生じた不良債権は、欧米諸国の金融機関や国家のバランスシートを大きく傷つけてしまった。そして、その修復がままならないことが、経済成長の足かせとなり、成長率の鈍化は債務問題の更なる悪化につながるのではないかという疑念を想起させているというのが現状だ。

 景気の失速懸念に財政出動で対応することは欧米諸国にはもはやできない。残る手立ては金融緩和ということになる。ただし、これは中央銀行のバランスシートの肥大化を招き、それによる信用力の低下によってユーロやドルが売られ、金価格が急騰するという現象につながった。

 大震災に原子力発電所の事故が重なっているという状況下で、円高の進行に悩まされている日本は、とんだとばっちりを受けた格好だ。

 欧州と米国は、日本がバブル崩壊後にたどったのと同じ道を歩んでいるといえるが、自国通貨安につながる金融緩和措置の実施は、戦前の大恐慌期に行われた通貨切り下げ競争を彷彿とさせる。

 それによって拡大したマネーが新興国や商品市場に流れ込んで、インフレリスクを増大させ、経済成長に黄信号をともすことにもなり、世界経済全体のリスクを増大させる結果となっている。

 問題は、日本がこの状況にどのように対処すればいいのかということだろう。

 日銀が金融緩和を行えば為替相場は円安に向かい、経済成長にもつながる。そして、政府の特別会計などに隠された埋蔵金を用いれば、増税なしで財政再建は可能というのが、いわゆるリフレ派の主張だ。

 しかし、中央銀行が市中にいくらマネーを供給しても、資金需要がないところではマネーは市場に滞留するか、投機筋に流れてバブルのふいごとなるだけだ。

 バブル崩壊後の日銀の措置について効果が乏しかったことについてリフレ派は、緩和措置が不十分だったためと、批判してきた。

 しかし、米国がリーマン・ショック後に財政出動とともにとったQE2と呼ばれる超金融緩和については、その効果に疑問が示されている。そして、景気低迷下のインフレというスタグフレーションにつながるのではないかという懸念が出ている。

市場介入は対処療法

 景気が下降局面に入っているのに、次のQE3の実施に米国で反対論が強いのはそのためだ。

 円高の進行となると、政府・日銀に対して、円売り介入の実施と追加金融緩和が唱えられる光景が繰り返されている。ただ、その効果は、為替市場については一時的なものに過ぎないのは、ニクソン・ショックから40年も続いてきた円高の歴史をみれば明らかだろう。

 円高は輸出産業に不利に働く。それに対処するため、海外での生産拡大などの対応策を日本企業はとってきた。

 ただし、日本全体で考えると、輸出企業にいつまでもけん引される経済でいいのかという問題もある。日本の貿易依存度は先進国の中でも米国に次いで低い水準にある。国全体で考えると円高はデメリットよりメリットの方が大きいということも考えるべきだろう。

 しかも、日本が成長する過程で欧米の製造業を苦境に立たせたのと同じ現象が、今度は新興国の台頭で日本に起こっている。これは構造的な問題だ。

 日本の需要不足は過剰貯蓄の結果でもある。そして、供給過剰は生産設備の能力を満たすだけの外需も見込めなくなっているからだ。

 過剰な貯蓄が必要のないような安心して暮らせる仕組みをつくり、外需に向かっている産業を内需型に変える。

 過去の教訓から何も学んでいないと言われないよう、日本は経済構造の転換が必要だ。

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