特別インタビュー ケビン・メア元国務省日本部長 「私は見た!何も決められない日本の中枢」アメリカは何もかも知っている

2011年09月06日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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 その欠点とは「決断できない」というとてもシンプルなものです。日本ではいまだ「和をもって貴しとなす」という考えが尊重されているようですね。しかし、これは平時においては長所となるかもしれませんが、危機的状況においてはむしろデメリットの方が大きいのです。

 まず、全員の考えをまとめていけば、結論を出すのに時間がかかります。さらに問題なのは、もしその結論が間違っていたとしても、誰に責任があるのかがまったく分からなくなることです。責任の所在が明確でなければ、大胆かつスピーディーな決定は下せませんからね。

 ここでもうひとつ衝撃的なお話をしましょう。少し古い話になりますが、1985年に御巣鷹山で飛行機の墜落事故が起こったとき、米軍は日本政府に「御巣鷹山と横田基地はそれほど離れていないから、すぐにでも捜索部隊を救助に向かわせることができる」と提案しました。ところが日本政府は、この提案を断ったのです。

 おそらく仮に問題が起こったときに、誰も責任をとりたくなかったのでしょう。しかし、私はもしこのとき米軍の支援を受けていれば助かった人もいたはずだと、今でも思っています。震災対応のタスクフォースで働く中でこのときのことを思い出しながら、日本政府が今回もまた「決断できない」という病を再発させてしまったことに、とても残念な気持ちになりました。

決断できる総理を

 ただ、誤解をしてほしくないのですが、確かに日本政府の対応に落胆することは多かったけれども、だからといって日米関係にヒビが入った、ということはありません。地震が発生した後、ワシントンでは「どんな支援で日本を助けられるか」という方法についての議論はありましたが、「日本を助けるべきかどうか」については、一切議論はありませんでした。日本を救うことは、われわれにとっては話し合う必要がない当然のことなんです。日米関係は地震が起きたぐらいでは揺らがない、ということです。

 しかし、日米関係は別として、私は震災以後の日本の国際的な地位---特に経済力のプレゼンスが低下することを危惧しています。

 最も分かりやすいのは、いまだに電力が十分に供給されていないこと、そしてこの状況がすぐには改善されないことです。電力は経済活動の源であり、十分な電力が供給されないのであれば、日本が世界に誇る強力な経済は維持できません。これから日本の原発をどうするかという議論がなされていますが、もし誤った結論を出せば、世界経済における日本のプレゼンスは低下することになるでしょう。

 それ以上に、根本的な問題として日本人が日本の将来に対して自信をなくしてしまっていることが心配です。これはみなさんの方が思い当たることは多くあるでしょうが、いまの日本の状況はアメリカが'70年代に陥った危機とよく似ているのです。ベトナム戦争によるショックとスタグフレーションをはじめとする経済問題に見舞われたアメリカでは、「このまま衰退の道を進むしかない」と皆が思いこんでいました。そこにレーガン大統領が現れて、様々な改革に着手しました。

 私はレーガン氏の支持者ではありませんが、しかし彼が変化のための決断をいくつも下して、国民に自信を与えたことは否定できません。日本にも強いリーダーが現れ、国民に強い自信を与えてくれればよいのですが。

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