特別インタビュー ケビン・メア元国務省日本部長 「私は見た!何も決められない日本の中枢」アメリカは何もかも知っている

2011年09月06日(火) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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 冒頭でアメリカの高官が「9万人の在東京アメリカ人の避難」を検討していたことを明かしましたが、これも情報が不足していたために、こうした事態を予測しておく必要があったのです。しかし危機管理という意味では、最悪の状況を考えることも重要です。そして、あらゆる可能性を検討した上で、様々な対応策のなかからどれを選ぶかを、責任ある立場の人が最終的に判断する。これが政府の役割です。

 ところが3月11日以降の日本政府の対応を見ていると、この基本的な意思決定のシステムがまったく機能していなかったように思えるのです。

責任を取るのが大嫌い

 具体的な事例をひとつ示しましょう。原発事故の後、アメリカは日本側に「こうしたことなら支援ができますよ」という品目を連ねたリストを送りました。ところが、日本からは「ヘリコプターを何台支援してほしい」という回答ではなく、「そのヘリコプターはどんな仕様なのか。もしも放射能で汚染されてしまった場合は、どんな補償が必要になるのか」といった100項目にわたる「質問」が返ってきたのです。

 一刻を争う状態なのですから、とにかくまずは「ヘリコプターを貸してくれ」と支援を受け入れるべきでしょう。ところが、彼らはもし問題が起きたとき、自分たちがその責任を取ることをおそれて、何も決めようとしなかったのです。まさに決断ができないのです。

 これは現場レベルにとどまる話ではありません。日本のトップである菅直人総理も、「自分は関係ない」と言わんばかりに責任を逃れようとしていたフシが各場面で見られました。たとえば、電源喪失から1週間が経過し、東電にも打つ手がなくなってしまったとき、菅総理の命令で自衛隊のヘリを1機飛ばして、空から放水したことがありましたね。

 この光景を見たときの、アメリカ政府のショックは大変大きかったのです。仮にも大国である日本ができることが、ヘリ1機を飛ばして放水するだけだったのか・・・と。しかもこの放水は、原子炉冷却にはまったく効果がなかったわけですから。

 実は、この放水の前日、アメリカ政府は藤崎一郎駐米大使を国務省に呼び出して、「日本政府は総力を挙げて原発事故に対処するように」と異例の注文を付けていたのです。というのも、ホワイトハウスは菅政権が原発事故の対応を東電任せにして、自分たちにはまるで責任がない、これはあくまでも一企業の問題だとでも言いたげな姿勢でいることに懸念を持っていたので、「このままでは日本が大変な危機に陥る」ということを伝えたかったのです。東電は発電が本業で、事故対応のプラント会社ではないからです。

 ところがその要請のあとに行われたのが、あのヘリでの放水だったので、「これが日本の総力か」と悲嘆に暮れたのです。別の見方をすれば、ヘリ1機を出してそれでよしとする菅総理の姿勢をみて、やはりこの問題を東電任せにしようと考えているのだな、とさらにホワイトハウスは疑念を強めたはずです。

「もし菅内閣でなければ、もっとスムーズに原発問題を処理できたのではないか」との声も聞かれました。たしかに菅内閣の対応に不信感を持ったことは事実です。しかし、別の内閣であればうまくいったかというと、そうとは言い切れません。というのも、日本には致命的な欠点があり、残念ながら私が日本に携わったこの19年間、それはほとんど改善されていないからです。

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