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「NHK次期会長最有力」安西前慶応学長の弱点は「日テレ応援団」
巨大メディアトップの座を巡る「早慶戦」の内幕

 天皇誕生日の祝日にあたった12月23日の新聞報道で、NHKの次期会長候補として、慶応義塾大学の前学長である安西祐一郎氏 (64)が最有力であることが明らかになった。

 対抗馬としては、早稲田大学の前総長である白井克彦氏(71)と、日本郵船で会長を務めた草刈隆郎氏(70)の2人の名があがっているものの、3 人の中では安西氏が最有力であり、来年1月12日の経営委員会へ向けて最終調整に入ったというのである。

 安西氏は、外部の血を多く導入することによって慶応大学を改革しようと試みた人物として知られ、NHK会長にも相応しい人物と評されている。筆者 も、これには同感だ。

 ただ、気掛かりな問題がある。それは、安西氏を推す応援団の問題だ。というのは、本来ライバルである民間放送局の出身者らが熱心に安西氏の会長就任を後押ししており、これが逆効果になりかねない、と懸念されている。

 今回のNHK会長人事は、1月24日に任期満了を迎えるアサヒビール出身の福地
茂雄会長(76)の後任を選ぼうというもの。

 そもそもNHKは、菅義偉元総務大臣時代に受信料の10%引き下げを公約させられており、この実現のために経営手腕の確かな財界出身者を福地氏の後任として招へいすべきだとの意見が強かった。

 だが、NHKの会長職と言えば、海老沢勝二、橋本元一と2代にわたり、 現職会長が辞任に追い込まれた、いわくつきポスト。引き受けてくれる財界人を捜し出すのは、容易なことではない。

 そうした中で、唯一、受諾の意向と言われたのが、東芝相談役の西室泰三氏だ。しかし西室氏の場合、就任には放送法の改正が不可欠だった。現行の放送法は、電機メーカー出身者がNHKの会長に就くことを禁じているからだ。

結局、政治の混迷に伴い、期待された放送法の改正が先の特別国会で実現しなかったため、西室氏の目はなくなった。福地氏の続投以外の選択肢が閉ざされたとみられた時期もあった。ちなみに、事情通の関係者によると、「西室氏のNHK会長を強く推していたのが、日本テレビ放送網代表取締役の氏家齊一郎氏だった」という。

 こうした中で、福地氏が留任を固辞したため、急きょ、会長候補としてクローズアップされたのが、安西氏だ。前述の関係者によると、「安西氏は、 福地氏を会長に担ぎ出したときにも対抗馬として有力候補だった人物だ」そうだ。「安西氏の場合、当時から、単なる学識経験者と違って、学長として 大学経営の実績を持っていることが高く評価されていた」という。

 とはいえ、ここへきて安西氏のアキレス腱として注目され始めた問題もある。


読売新聞政治部や、日本民間放送連盟の専務理事職を経て、現在、NHKの経営委員に付いている北原健児氏が、熱心に安西氏の会長就任を後押ししていると言われていることである。

民放の影響力が強まる懸念

 実は、北原氏が今年6月にNHKの経営委員に付いた際も、氏家色が強過ぎるのではないだろうかとか、特定の民間放送局のNHK経営に対する影響力が高まるのは好ましくないのではないかとの批判が強かった。それだけに、前述の関係者も「逆効果だ。日本テレビ放送網が後押しするという行為は、安西氏の候補としての芽を摘む結果を招きかねない」と当惑を 隠さない。

しかも、NHK会長の選任には、12人の経営委員のうち9名の賛成が必要という要件があるものの、慣例的に首相官邸の意向が尊重され、経営委員会は追認の評決を行うことが常態化していた。こうした多数派工作は、不要とされてきたのである。あえて、その不要な行為を熱心に行うのは、 「安西氏に恩を売りたい証左ではないか」と怪しむ関係者がいる。

あまりに熱心な応援団の多数派工作が、むしろ仇になって、安西氏のNHK会長就任を危うくすることになれば、なんとも皮肉な話である。
 

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