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1ドル50円、日経平均7000円時代到来
「超円高・超株安」ニッポン何が起きるか、読み切る

〔PHOTO〕gettyimages

 異常な円高・株安は「炭鉱のカナリア」。この国に目に見えない「有毒ガス」が充満しているという市場からの警告だ。針路を誤れば即死が待っている。戸惑うニッポンの迷走が始まった。

初めて見る光景

 円高・株安が止まらない。

 米国の「格付けショック」を契機に円買いが加速、76円から75円、そして70円を目指す動きに突入した。株式市場ではホンダ、パナソニック、ソニーといった優良銘柄が年初来最安値を更新、トヨタ、任天堂なども株価が〝低空飛行〟を続けている。

 こんな超円高・超株安で影響を受けるのは企業や投資家だけではない。企業が一斉に「自己防衛」のため海外脱出を開始、いわゆる企業城下町を中心に大変な事態が起きている。

 愛知県はトヨタを中心とした自動車工場、部品工場などが集まる日本の製造業の中心地。北見昌朗氏は常時200社以上の中小企業を顧客に持つコンサルタントとしてこの地をつぶさに見てきたが、最近の惨状は目を覆うばかりだという。

 北見氏が名古屋市内を歩いて回ると、名古屋駅前にタクシーがやたらと多い。2列3列で客待ちをするのは「初めて見る光景」。不況にあえぐ企業がコストカットを余儀なくされているのだろう、地下鉄やJRの構内を歩くと広告ボードはガラガラ。

 つい1~2年ほど前まで行列ができていた高級レストランや和食店は閑古鳥が鳴いている。「家族4人で1万円というようなお店にはもはや庶民は寄り付けなくなっている」のだ。

 背景にあるのは円高。中小企業は輸出でダメージを受けているうえ、大企業が発注先を海外に移転する「空洞化」で受注量が激減するか、納入価格を大幅に削られている。

 北見氏は愛知県に本社を持つ中小企業社員約2万人の給与明細を収集、その実態について調査している。さきごろ最新調査をまとめたところ、次のような悲惨な結果が出たという。

「50代の一般職男性で年収500万円に満たない人が54%と〝多数派〟になっており、賞与(ボーナス)をもらっていないのが5人に1人となった。不況がないと言われてきた土地が一変、深刻な事態に見舞われている」(北見氏)

 鹿児島県出水市も「産業空洞化」の煽りを受けている。

 かつて企業城下町として栄えた面影はもうない。プラズマテレビのパネルを製造するパイオニア鹿児島工場、液晶パネル製造のNEC鹿児島工場が撤退してから2年。同市商工労政課長の樋口孝志氏は関東、関西をまわって企業誘致の声掛けを続けるが、「跡地に新規参入してくる企業はいない」。16万m2の土地が野ざらしになっている。

「パイオニアさん、NECさんが撤退してから雇用が1000人規模で減りました。彼らの所得は合わせて約50億円あったので、市財政への圧迫も著しい。夜も賑わっていた飲食店が閑散としている」(樋口氏)

 残っている企業の工場があるうちはまだ耐えられるが、さらに「撤退」が続けば市経済は壊滅的なダメージを受けるという。「この円高がどこまで続くか、心配です」と樋口氏は語った。

 円高で国際競争力を失いかねない大企業は、争って海外進出を図っている。しかし、それで困るのは国内に残された個人である。

 国内の雇用がどんどん失われ、失業率が高まる。並行して給与水準も下がり、働いても働いても一向に収入が増えない〝ワーキングプア〟が大量発生するのだ。

 実はこれとそっくりなことが、すでに米国で起きている。
それは「アップル化現象」と呼ばれるもの。米国アップル社は生産・販売拠点をほとんど海外に置いているため、いくら業績好調でも米国国内に新たな雇用を生まない。「勝ち組」経営者が数十億円の報酬を得る代わりに、多くの人が2ドルのハンバーガーをかじる「二極化」が広がっている。

 要は企業が栄えても、国民は潤わない。今後は日本でも同様の現象が起こることは確実なのだ。

「自動車・電機メーカーだけではない。ユニクロを展開するファーストリテイリング、イトーヨーカ堂、無印良品といった小売企業からヤマト運輸、セコムといったサービス企業がすでに海外進出、成果を上げている。もうこの流れは止まらない。力のある企業はグローバル企業として発展するが、一方で日本という国は荒廃していくだろう」(コンサルティング会社ローランド・ベルガー会長の遠藤功氏)

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