ソフトバンクの名前も報じられた「日銀社債買い取り拒否」の衝撃
2010年末の株式市況がもたつくわけ

 今年4月に付けた年初来高値さえ抜けない日本株と対照的に、リーマン・ショック以前の株価水準を回復したあとも上値追いを続けようとする米国株 ――。日米両国の株式相場の“格差”はこのところ広がる一方だ。

 その原因について、多くのアナリストが挙げそうなのが、両国の経済見通しだ。

 年内で終了するはずだったブッシュ減税の延長が決まり、来年の実質経済成長率が、これまでの予測より1ポイント前後高い3%台半ばに跳ね上がると 期待される米国と、所得税や相続税の増税を柱に据えた税制改正の閣議決定によって、従来の予測されていた1%台半ばという低成長さえ覚束ないと懸念され始めた日本との彼我の差を象徴しているというのである。

 確かに、菅直人政権の経済無策には弁護の余地がない。しかし、日本株低迷の原因は、それだけとは言い切れない。もうひとつ別の深刻な問題が秘められているのではないだろうか。

 それは、最近、日本銀行が流動性供給策の一環として行った社債買い取りで浮き彫りになった、日本企業のデフォルトリスクの存在である。日銀が社債を買い取りを拒否した会社は少なくとも5社あるというのだ。

米株式市場は22日も、ダウ工業株30種平均が26㌦33㌣高の1万1559㌦49㌣と続伸、リーマン・ショック以前の2008年8月28日以 来、約2年4か月ぶりの高値に沸いた。

米国では、「100年に一度」と言われた世界的な経済・金融危機の中で採られた一連の対策が相次いで終了の時期を迎えており、経済の失速が懸念 されていた。しかし、中間選挙で大敗したオバマ政権がブッシュ前政権の大型減税の延長に合意したことによって、この懸念が払しょくされた。それ以 来、景気回復期待が保たれており、この日は買いの手が金融株にまで広がったとリポートされている。

 一方、その半日前に取引を終えた日本株は、この日も、対照的な動きに終始した。取引時間中にこれといった悪材料が出たわけでもないのに、ポジショ ンを保持したまま休日を迎えたくないと言わんばかりの弱気な整理売りが先行した。トヨタやソニー、TDKといった、売り上げに占める輸出比率の高 い企業の株価が反落したのだ。そして、日経平均株価は24円05銭安の1万346円48銭で取引を終えた。

米国のブッシュ減税の延長措置は、「長い目で見れば、もろ刃の剣」(米系証券会社)に過ぎない。というのは、巨額の財政赤字をさらに膨らませ て、将来の米国経済の足かせになりかねないからだ。

 しかし、「来年(2011年)、それも来年前半に限定すれば、根強かった減速懸念を払しょくする効果がある」という。あえて、この辺りを前向きに 評価して、もともと楽観的な投資家の多い米国株相場の地合いが好転しているというのである。

これに比べれば、内外の日本経済への期待値は低い。

 最大の問題は、あの税制改正だ。法人税の実効税率の5%引き下げを盛り込んだとはいえ、もともと上場企業の手元流動性は書こう最高水準にある。つ まり、投資にあてるカネがないのではなく、カネは貯め込んであるのに投資をする気がないのである。こうした中で、税率を引き下げて、さらにカネを 持たせたからと言って、企業がすんなり国内投資を増やすとは考えにくい。

 むしろ、年収1500万円超の給与所得者の控除額を245万円で打ち切ることや、相続税の基礎控除額引き下げと最高税率引き上げを柱とした個人増 税が経済の足を引っ張るのは確実とみられている。


ここへきて、日本の株式市場への不安感を膨らませている、もうひとつの問題の存在も見逃せない。 

それが、冒頭で記したデフォルトリスクだ。日銀は今年10月、経済の下支えを狙って「金融の量的緩和策」を拡充する方針を表明。その一環として、 12月3日に1000億円分の社債の購入を実施した。対象になったのは、「格付けがトリプルB格相当以上」「残存期間が1~2年」の社債で、日銀 が選定した38の金融機関から社債を買い取った。

 ところが、衝撃的な話だが、実際の買い取りにあたって、「格付けがトリプルB格相当以上」「残存期間が1~2年」であっても、日銀が買い取りを拒否した銘柄があったという。
 

 そのことをスクープしたのは、米系の市況情報会社のブルームバーグだ。同社は買い入れの前日の2日夜、複数の関係者の話として買い取りの対象に 「ソフトバンクやエルピーダメモリ、アコムは含まれていない」「IHIやプロミスも外れた」とのニュースを伝えたのだった。

2011年の実体経済を反映しているのか


 日銀の広報担当は、本サイト「現代ビジネス」の取材に対して、「その記事が事実かどうかも含めて、当方ではお答えしません。判断理由を個別にお答えすることはございません」と語るのみだ。ソフトバンクテレコムの渉外部も「そのような話は聞いていない」と素っ気ない。

 しかし、日銀が、これらの銘柄を除外したとの情報が事実だとすれば、「これらの会社が1~2年の間に経営破たんして、元利の回収が危うくなると考 えている証になる。日銀自身は、その資産内容の悪化を嫌って買い取りを拒否したのではないか」(銀行系証券のクレジット・アナリスト)との見方に直結する。

 当初、この報道は、限られた債券市場の関係者にしか知られていなかったが、次第に情報が伝播している模様だ。

例えば、ソフトバンクの株価の動きをみても、12月7日の終値で3030円を付けた後、11日あった取引日のうち8取引日で株価を下げている。この極端な下げは、株式市場関係者の間で言われている「スマートフォンの独占という強みが薄れ始めたからだ」という説明だけでは考えにくい。


アコムやプロミス、エピルーダメモリといったかねて業績不振が伝えられる会社と違い、ここ1、2年、ようやく業績改善イメージが出つつあったソフトバンクが、日銀から社債買い取りを拒否されたとしたのなら、その衝撃は大きい。

一般論を言えば、株式相場は、経済の先行きを占う先行指標だ。日銀のデフォルト懸念という、思わぬリスクの存在にもたつく2010年末の株式相場の動きも、その鉄則通り、2011年の実体経済の展開を織り込んだものなのかどうか。しばらく株式市場を注意深くウォッチし続ける必要がありそ うだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら