今こそ、「日米経済同盟」を模索すべきだ
対中交渉と雇用拡大の切り札になる

 安全保障を基軸に50年にわたって盤石だった日米の2国間同盟が揺らいでいる。もちろん、原因は、混迷する米軍普天間基地の移転問題だ。

 米国では、11月に中間選挙を備えた米議会で日本叩きの動きが出てきたほか、オバマ政権も苛立ちを隠さない。

 一方、鳩山由紀夫首相は、1月29日に行った就任後初の施政方針演説でも、「日米同盟を重層的な同盟関係に深化させる」と言いながらも、具体論には触れず。

 普天間問題も「5月末までに移設先を決定する」と述べるにとどまる、相変わらず煮え切らない態度だった。このままでは米国の対日不信は強まる一方だろう。

 打開策はないのだろうか。実は経済の側面からみると、軋む日米関係を修復できるだけでなく、回復の遅れる両国経済の立て直しにも役立つ妙案がある。

 それは、自由貿易協定や経済協力協定を軸にした「日米経済同盟」の推進である。この同盟のメリットは、双方の輸出が増え、雇用を含めた拡大均衡の道が開けることにとどまらない。EU(欧州連合)を凌駕する世界最大の自由貿易市場を構築することになり、世界中の国々が参入を目論む市場を作り出せるのだ。

 日の出の勢いの成長軌道に乗り、世界第2位の経済大国の地位をほぼ掌中に収めながら、いまだ保護主義的な通商政策を貫く中国に対し、経済自由化を迫る切り札を日米両国が手にすることにもなる。

腰砕けになった民主党の「日米FTA構想」

 総選挙を間近に控えた昨年8月7日、民主党の腰砕けを記憶している読者も多いのではないだろうか。民主党はその10日あまり前に公表したマニフェストで、「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」と意欲的な通商政策を掲げていた。にもかかわらず、これをあっさりと撤回したのである。

 肝心の「締結」という単語を削除、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資の自由化を進める」と骨抜きにする修正をしてしまった。

 さらに、できあがったマニフェストには、「食の安全・安定供給、食糧自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない」という文章も盛り込まれた。自由貿易の振興よりも、国内農業の保護を優先する姿勢を鮮明にしたのだ。

 菅直人・民主党代表代行(当時)はこのときの記者会見で、「方向性を変えたものではない」と釈明してみせた。しかし、誰の目にも、全国農業協同組合中央会(JA全中)など農業関連団体の強硬な抗議に驚き、民主党があっさりと自由貿易の旗を降ろしたのは明らかだった。

 もともと全面的な貿易の自由化には、日本だけでなく、米国でも、農業従事者の激しい反対が存在している。米国も農産物を対象にした自由貿易の推進は容易ではないのだ。

 その一方で、日米両国はともに、国際的にみても突出して、工業製品を対象にした関税の撤廃と引き下げが進んでいる。たとえば、乗用車の輸入関税は、日本が0%、米国が2.5%と低い。

 これに対してEUは10%、韓国は8%、豪州は5~15%、そして中国は実に43%と、主要各国はそろって高関税を維持している。こうした状況は、自動車に限らず、テレビやVTR、携帯電話などの電機機器でも似たり寄ったりである。

 それゆえ、昨年夏、民主党が日米FTAに対して腰砕けになった際にも、専門家の間からはそれほど強い批判の声があがらなかった。というのは、こういう専門家の多くは「農業製品を自由化したくない日米両国にとって、FTAは絵に描いた餅に過ぎない。

 実現が容易な経済協力協定(EPA)は、関税の引き下げ対象を工業製品に絞り込んだものになる。しかし工業製品の関税引き下げはすでに大きく進んでおり、EPAが実現してもメリットは小さい」と見ているからだ。

 しかし、そうした見方は、あまりに近視眼的ではないか。全体をきちんと検証すれば、EPAを実現できれば日米両国が受ける恩典が非常に大きいことがはっきりするはずだ。

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