『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』著者:適菜収 「B層」をキーワードに、ゲーテが予言した大衆社会の末路を読み解く!

2011年09月01日(木)
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 大衆社会では徹底的に「知」が攻撃されるからです。

 かくして、その本質そのものから特殊な能力が要求され、それが前提となっているはずの知的分野においてさえ、資格のない、資格の与えようのない、また本人の資質からいって当然無資格なえせ知識人がしだいに優勢になりつつあるのである。(同右)

 ここで語られていることは、まさに現在のわが国の状況にほかなりません。

 ありとあらゆるプロの領域、職人の領域に素人が参入するようになった。無責任な人々が大衆に媚びへつらい、社会のB層化を進めています。

 当時の大衆は、公の問題に関しては、政治家という少数者のほうが、そのありとあらゆる欠点や欠陥にもかかわらず、結局は自分たちよりいくらかはよく知っていると考えていたのである。ところが今日では、大衆は、彼らが喫茶店での話題から得た結論を実社会に強制し、それに法の力を与える権利を持っていると信じているのである。(同右)
オルテガの予言は的中しました。

 B層社会では、「喫茶店での話題から得た結論」が政治の原理となり、「お茶の間の正義」を政治家が代弁するようになります。かつては、A層は踊らせる側、B層は踊らされる側という明確な区分がありました。ところが現在では、その境が曖昧になりつつある。発達したB層が、社会の中心に居座るようになって以来、B層の世界観・歴史観がA層を侵食するようになっています。

 今では戦後認識さえ、B層を釣るためのエサになった。

 たとえば、小泉純一郎はタカ派と見られがちだが、基本的な発想は戦後民主主義者です。

 小泉は、靖国神社に合祀されている「A級戦犯」に対して「戦争犯罪人である」と言い放ち、二〇〇五年に森岡正宏厚生労働大臣政務官が東京裁判のやり方に疑問を呈すると、すかさず厳重注意をしています。

 要するに、小泉にとって靖国神社は「釣りのエサ」に過ぎず、どうでもいい存在なんですね。靖国参拝に政治的信念があるわけではない。事実、小泉は民間調査会社に世論調査をさせ、政権の支持率が上がることを確認してから参拝を決定しています。

 小泉は自作自演のタウンミーティングを全国各地で開催し、「やらせ質問」を行ったシンパ、関係者にカネを流し続けました。一流の芝居を見ていないから、三流の茶番に騙される。

 B層に足りないものは教養です。

教養は知識の集積ではない

 誰でも二〇歳になったら大人になります。

 しかし、法律上は大人でも、子供っぽい大人、子供っぽい老人が巷にあふれている。彼らはB層の住人です。気分は子供時代の延長のまま。それで非難されるどころか、むしろ「いつまでも子供の心を失わないこと」が尊重されるような世の中です。

 彼らは個人主義者であり「理想の大人像」は成立しないと嘯く。そう考えた世代が現在の日本をつくってきました。子供だらけの社会では大人の意見は軽視される傾向にあります。ゲーテも言うように、「女子供」の正義が横行します。

 だから、大人の中の大人、男の中の男であるゲーテの指摘は価値があるのです。

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