企業・経営
広州自動車ショーで見えた「中国市場で日産がトヨタを圧倒する理由」
なぜ巨大企業が苦戦しているのか
広州自動車ショーでの「日産サニー」発表の様子

 12月18日に中国・広州に入った。第8回広州自動車ショーを取材するためだ。昨年、同ショーを取材した際に宿泊した同じホテルに泊まっているが、周囲の景色は大きく様変わりした。建設中だったビルは完成し、きれいなホテルになり、バラック風の建物もなくなった。

 アジア大会が開かれたため、その準備で急ピッチにインフラなど様々な工事が進んだという。通訳の大学院生は「夏休みが終って戻ってきたら、地下鉄の線が増えて変化していたため、通学に使う路線が分からなくなってしまった」と話す。

 この1年間で4度、中国に取材にやってきたが、来るたびに街が変わるという印象を受ける。街を走っている自動車も変化する。今回、訪中して3日間、トヨタ車をほとんどみかけなかった。

 その代わり、日産自動車や韓国の現代自動車の車をよくみかけた。トヨタが中国で苦戦している話は本コラムでも取り上げたが、20日に始まった広州モーターショーを訪れ、その原因がある程度分かった。

 トヨタは中国で努力を怠っている。まず、中国の消費者に受け入れられるような商品を出せていない。豊田章男社長は商品を大切にした経営を目指していながら、トヨタは中国市場をなめているように見える。昨年、米国を追い抜き世界1位の市場になった中国で販売を増やせるかどうかはメーカーの生命線なのに危機感が乏しい。

 今回のモーターショーでトヨタが新商品としてアピールしたのは来年発売を予定している「E 'Z」と「Zelas」の2車種。ただし、「E 'Z」はトルコ工場で生産して欧州向けに輸出している「カローラバーソ」が原型であり、それを広州工場で生産する。「Zelas」は米国で「サイオン」ブランドとして売られているスポーツクーペを中国に輸出して販売する。

 いずれも欧米など先進国で売っていたモデルをそのまま中国に移したに過ぎない。中国の顧客の価値観に対応するという姿勢が感じられない。

 中国で車が一部の金持ちしか買えなかった時代はこうした商品戦略でも売れたが、その時代はとっくに終っており、大衆に車が普及し始めている現状では通じない。中国の自動車の普及状況は、1000人当たり約60台で日本のほぼ10分の1であり、まだまだ成長の糊代がある。

 こんな商品戦略をやっていては中国市場で置いてきぼりをくらってしまう。現にトヨタの主力車のひとつ「ヴィッツ(中国名ヤリス)」は中国では「値段が高くて小さい先進国のセカンドカーは中国では不要」と酷評され、日産の同タイプの「ティーダ」に打ちのめされている。2009年は「ティーダ」の約7分の1しか売れなかった。

中国の消費者が求めるのは「見栄え」

 新商品とは、ただモデルチェンジした新しい車のことではなく、新しい価値を創造するような車だと思う。トヨタは米国で、GMやフォードが創り出せない低燃費で高品質といった「価値」を創出したから販売を増やせたのだ。

 筆者の独断だが、中国で消費者が求めている価値とは、「お値打ち感」「使い勝手(スペースの広さなど)」、それにプライドが高くて見栄っ張りの国民性から考えて「見栄え」の3つではないかと思える。

 トヨタのメディア対応にも疑問がある。20日はプレスデーであり、報道陣向けへの公開日なのに、トヨタの発表会場では現地スタッフが遅刻した記者を会見場に入れなかったり、車をさわって確かめようとするとロープを張って締め出そうとしたりしていた。何のためのショーなのか分かっていない。今回の広州モーターショーからトヨタの驕りや油断が垣間見えた感じがする。

 こうしたトヨタの動きに対し、日産の中国市場への対応は謙虚だ。日産は20日、中国で販売を中止していた「サニー」の販売を来年1月から復活させると発表した。中国ではセダンは人気があり、30歳前後のヤングファミリーを狙った商品だという。

 こうした顧客層は中国の経済発展とともに拡大している。日本でもかつて、トヨタの「カローラ」がモータリゼーションを牽引したのと同じ構造だ。

 新型「サニー」は「マーチ」と同じ「V-プラットホーム」と呼ばれる車の骨格を採用。グローバルセダンという位置づけで日産の世界戦略車のひとつとして育てていく計画。

 今後、世界170ヵ国で発売していくが、最も顧客層が多いと見られる中国で先陣を切って発表した。日産は7年前から日本のメーカーではいち早く中国の開発拠点を強化しており、現地のニーズを汲み取った設計にしている。生産拠点は広州工場。価格も最廉価版が8・28万元。

 しかも中国のエコプロジェクトに入っており、購入時には3000元の補助金も出る。中国では5-10万元の間車が売れ筋となっているが、そこに照準を合わせた。月間販売目標は約1万台。ちなみに中国のトヨタ車には定価で10万元を切るタイプはない。

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