強気のようで防戦一方!小沢一郎「政倫審出欠」発言のぶれ

執行部の読みは「離党者は衆院最大50人」
               「守るために攻める」が小沢戦略                                             photo gettey images

「子どもじみている」-。衆院政治倫理審査会出席問題をめぐる民主党元代表・小沢一郎の言動を見て、公明党幹部はこうつぶやいた。

 今年前半まで政権の最高実力者と呼ばれ、68歳にもなる小沢にははなはだ失礼だが、子ども扱いされてもやむを得ない。16日夜、前首相・鳩山由紀夫らとの会談で、幹事長・岡田克也からの会談申し入れについて小沢は、「岡田君は党職員を通じて会いたいと言っている。直接言ってくればいつでも会うのに、何を恐れているのか。臆病なのではないか」と語ったというのだから…。

 役員会という党の正式機関で一任された岡田が、党職員に小沢側との日程調整を命じたのは当たり前の行動だ。それを「直接言って来い」というのは非常識だ。自称「一兵卒」の小沢が幹事長を自分の事務所に呼びつけたことも異常なことである。しかも、小沢は自ら指定した時間に10分程度遅刻した。

 合点がいかないのは政倫審出欠を関する小沢の言動だ。

「国会という憲法上最高機関、そして委員会や政倫審はその国会の中の機関ですから、国会で決めた決定に私はいつでも従う」(10月7日)

「裁判を今後行うことが確定している私が、国会の政治倫理審査会に自ら出席しなければならない合理的な理由はありません」(12月17日、岡田あて文書)

 前者は検察審査会で強制起訴が決まってから3日後のこと。東京地裁が第2東京弁護士会に強制起訴する指定弁護士を推薦するよう依頼した後、つまり、起訴手続きに入った段階で「国会の決定に従う」と表明している。にもかかわらず、民主党が今月初め、政倫審で議決する構えを見せると一転して欠席に変わった。

  その時点で論理的に見えても、2カ月前の言辞と比べると真逆だ。そのたびに小沢は自信たっぷりに言うので惑わされるが、一貫性に著しく欠けている。

 もう1つ、惑わされるのは小沢が動きだすと小沢が攻めているように見えることだ。この局面でも、小沢は首相・菅直人や岡田らを厳しく批判し、小沢に近い議員も頻繁に会合を開いて批判的メッセージを発するので、そう見えてしまう。

 しかし、実際には逆だ。攻めているのは菅や岡田で、小沢は防戦に追われているというのが実態だ。

「攻撃は最大の防御」

 小沢の政倫審招致の動きは今月8日に菅と岡田が会談し、招致議決を検討することで一致したことに始まる。実はこの前に、菅と岡田に加えて、官房長官・仙谷由人、幹事長代理・枝野幸男の4人が小沢に政倫審招致を働き掛け、応じないなら議決に踏み切る方針を内々決めている。

 議決は、今月3日に閉幕した臨時国会で行うことも可能だった。むしろ国会開会中に行ったほうが良かったかもしれない。だが、政権の首脳陣は議決に動きだすことによって小沢に近い参院執行部が反発し、補正予算案や重要法案が不成立に終わることを怖れた。

 一方、国会閉幕直前の11月末、2009年の政治資金収支報告書で小沢の資金管理団体「陸山会」が昨年7月、衆院が解散された直後に、民主党の衆院選候補者91人に計4億5000万円近くを配分していたことが明らかになった。いずれも小沢に近い候補者で、このことも菅らが招致議決に動きだす動機となった。

 招致議決の動きに対して、小沢や周辺の議員は政権批判のトーンを一気に上げた。しかし、小沢らは攻撃対象にした菅、岡田、仙谷を辞めさせる権限も持っているわけではない。逆に政権側には小沢を政倫審に送り込むことも、離党勧告を下すこともできる。

 招致議決に動きだすにあたり、政権側は議決に従わない時点か、来年1月にも行われる強制起訴の時点で、小沢に離党勧告を行う覚悟を決めている。その際、離党者が相次ぐことも視野に入れ、その数は「衆院でマックス50人」と読んでいる。

「斬れば血が 斬らねば化膿 一郎病」

 読売新聞16日付朝刊にこんな川柳が載ったが、政権首脳部の心理を見事に言い当てている。

 だが、こんな事態になっても、小沢は「守るために攻める、攻撃こそ最大の防御」という、従来の政治手法だ。これに、政権側はすっかりなれて「またか…」と受け流している。この先にあるのは離党勧告だ。

 小沢が激烈なことを言っても、もはや断末魔の叫びとしか聞こえない。(敬称略)
 

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