政策論争をする時間もなかった民主党代表選を経済政策から考える。
重要なのは「財務大臣」が誰になるかだ

「親小沢」か、「脱小沢か」などどうでもいい
事実上の次期首相選出にもかかわらず、政策論争はほとんどなし   【PHOTO】broomburg via getty images

民主党の新しい代表が8月29日午後に決まる。事実上の日本の総理選出であるが、あまりに選挙期間が短いので、まともな政策論争ができなかった。

 民主党の代表選挙規則には告示から2週間をとるとあるが、今回は告示日の明後日には投票という短期決戦だ。これでは政策論争よりも「人海戦術による根回し」になってしまうのは目に見えている。しかも、マスコミは、政策でなく小沢か脱小沢かという「好き嫌い」を軸にする「政治部」ならぬ「政局部」報道ばかり。政策の違いを知りたい人には興味が湧かなかった。

はじめは7人も候補者の名前があがったが、あまりに時間がなかっためマスコミ得意の7人名前を使った語呂合わせも出なかった。やっと5人になったので、あえて作れば、「海馬前野鹿(タツノオトシゴ前の鹿)」か。

 

 それにしても国民にとっては「親小沢」でも「脱小沢」でも、そんなことはどうでもいい。今の緊急課題である、1.円高をどうするか、2.復興増税があるのか、3.電力(電気料金)がどうなるのかに、明快な答えを出してもらえればいい。

 候補者たちはテレビなどにも出演していたが、時間の制約があったり、政局がらみでコメンテーターが的外れの質問をしていたりで、これらの問いにまともに答えなかったことが多い。

 その中で、民主党が主催した代表選挙候補者討論では、一人の候補者が他の候補者に質問できる機会があった。これはわりにフェアな方法だ(ただし、進行その他は事前に候補者に知らされていたらしく、名札の後ろで各候補者は原稿を用意していたようだ)。

 この民主党討論会やその他のテレビ討論を参考して、さきの経済関係の3つの問いに対する各候補者の回答を簡単にまとめてみた。

 

1.デフレ・円高をどうするか?
海江田:日銀が市場から長期国債買い入れで量的緩和
馬淵:デフレと円高は切り離せない。マネタリーベースを上げるために日銀の量的緩和
前原:思い切った財政出動と金融緩和。日銀の国債引受、その円資産で海外優良資産を買って介入と同じ効果
野田:円高活用。外為特会での1000億ドル対策。予備費活用
鹿野:欧米との連携。日銀さらなる金融緩和

この問いに対する模範解答は馬淵氏だ。海江田氏も及第点。鹿野氏も外していない。前原氏は、いいところをいっているが、円高利用論もいっている。これは円高の基本原理がわからず、その是正をしないと、外債投資と同じになって国損になる可能性がある。ちなみに、外貨準備も円高によって30兆円程度の為替差損があり、過去のクーポン収入はあるものの国民負担になっている。

 野田氏はまったく円高対策になっていない。こうしたムダ玉を撃った政策ミスは大きい。

増税については前原、馬淵がいい。海江田はまずまず

2.復興増税があるのか?
海江田:建設国債発行。復興債の早期償還には反対
馬淵:復興基本法では償還期間を決めていない。増税を前提にする償還期間の短期化は反対
前原:復興増税は禁じ手。政府資産や特別会計の見直しが先。足りなければ復興債
野田:現世代で連帯。税外収入で足りない部分は時限的な税制措置
鹿野:建設国債発行。増税は国会で決める

この問いに対しては前原氏と馬淵氏の解答がいい。海江田氏もまずまず。鹿野氏は抽象過ぎて解答になっていない。

 野田氏は財務省の意見そのものである。あくまで財務省の願望であり、復興基本法で増税措置まで決めていないし、復興債の種類や償還期間も決まっていない。それをあたかも決まっているかのように話したのは大きなミスリーディングである。

3.電力(電気料金)がどうなるのか
海江田:東電賠償法は与野党で修正済み(なので、東電に新たな負担はなく、電力料金が上がる)
馬淵:東電賠償法の見直しが必要(なので、東電負担について議論の余地あり?)
前原:電力臨時調査会を作って検討(今後の課題?)
野田:現行の法律の枠内でやる(なので、東電に新たな負担はなく、電力料金が上がる)
鹿野:現行の法律の枠内でやる(なので、東電に新たな負担はなく、電力料金が上がる)

 

 いずれの候補も明確に答えていない。海江田氏、野田氏、鹿野氏は現役閣僚なので、東電賠償法が修正協議の結果改悪になって、国民負担が増えているのは決して認めないだろう。

 馬淵氏は理解しているようだが、やはり直前まで政府にいたので批判できないようだ。そうした場合に、前原氏のように検討会議を作るというのは政治家として常套手段だ。

政治手法や資質ももちろん重要だし、総理のカバーする分野は、外交や公務員改革など多岐にわたる。極論すれば経済分野に詳しくなくてもかまわない。その場合、経済のエキスパートを大臣にして、結果責任をとるかたちで仕事は丸投げすればいい。

 いずれにしても、短期間でわかったことは、経済政策で馬淵氏の考えがもっともすっきりして筋が通っていて、その説明能力が高いことだ。経済政策では馬淵氏と今回出馬を取りやめ海江田支持に回った小沢鋭仁氏の両名だけが事前にまともなペーパーを公表していた。そして、予想どおりだが、野田氏はほとんど議論に耐えなかった。

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