事業仕分けで廃止と決まったジョブカードが存続決定!これでいいのか、蓮舫大臣!!
労組に頭が上がらない菅政権
厚生労働省HP

 菅直人政権の支離滅裂ぶりが、また一つ露呈した。

 10月の事業仕分けで廃止と決まったばかりの「ジョブカード」制度が首相自身の手によって結論をひっくり返され、存続が決まってしまったのだ。

 ジョブカード制度は職業履歴や訓練を受けた経験、資格・免許などを記載したカードを使い、企業が実施する職業訓練と組み合わせて就職を支援するのが狙いだった。協力した企業には、政府から「キャリア形成促進助成金」という名の補助金が出る。

 ところが、実際には一向に普及しなかった。

 なぜなら、求職者は別にカードを持っていなくても、転職できる能力があるなら転職できる。企業側も似たような補助金はほかにいくつもあるので、この制度に執着する理由がないからだ。

 事業仕分けでは「トライアル雇用奨励金、正規雇用化奨励金、中小企業向け訓練助成といった別の制度と重複している」とか「有期雇用型職業訓練は意義がある。ただし、ジョブ・カードを介在させる必要はない」といった批判が続出し、事業廃止と決まった。

 ところが、15日に官邸で開かれた閣僚と有識者らによる「雇用戦略対話」で一転してカードの意義が強調され、結局「より効率的・効果的な枠組みとなるよう見直しを図るとともに、関係府省が一体となって制度を促進する」と180度、結論がひっくり返されてしまった。

 菅政権はこの結論を「雇用戦略・基本方針2011」として、2011年度予算編成に反映させる構えだ。

 どうしてこんな展開になったのか。官邸に集まった有識者の顔ぶれをみれば分かる。

 日本労働組合総連合会(連合)の古賀伸明会長はじめ労働界代表が3人(すべて連合関係者)、日本経団連の大橋洋治副会長ら産業界代表が3人、それに宮本太郎北海道大学教授ら識者が3人の計9人が雇用戦略対話のメンバーになっている。労働組合が強硬に廃止に反対したのだ。

 なぜ労組が反対するかといえば、ジョブカードは労働保険特別会計の事業になっており、労組の既得権益と密接に絡んでいるからだ。たとえば、ジョブカード制度の下で実際に職業相談にあたるのは独立行政法人「雇用・能力開発機構」のアドバイザーたちだ。

 この独法は、厚生労働省の有力な天下り団体として有名である。役人にとっては、事業廃止は天下り先を減らす結果になってしまう。官僚=労組が一体となって、既得権益の維持を狙って事業廃止に抵抗する構図である。

 雇用戦略対話は菅首相自身が主宰し、仙谷由人官房長官、玄葉光一郎国家戦略相、海江田万里経済財政相、細川律夫厚生労働相が閣僚側メンバーになっている。つまり実質的に事業仕分けの結論をひっくり返したのは、菅・仙谷ラインである。

事業仕分けとはいったい何だったのか

 ジョブカードだけではない。

 同じく事業仕分けで廃止が決まった財団法人・産業雇用安定センターの運営費補助や同じく介護労働安定センター交付金についても「今後とも実施する」と続行になった。

 予算を縮減して見直すはずだった特定求職者雇用開発助成金や若年者等正規雇用化特別奨励金も「今後とも実施する」となった。さらに原則廃止と判定された社会復帰促進等事業も「今後とも実施する」に逆転されてしまった。

 こうなると、いったい事業仕分けとはなんだったのか。

 あれだけ衆人環視の中で大騒ぎして出した結論を無視するどころか、わずか2ヵ月で同じ菅政権が180度ひっくり返してしまう。無駄撲滅どころか、国民を欺く行為と言わざるをえない。

 こうなるのは初めから見えていた部分もある。

 労組の利益を害するような政策はしない。それは連合の強い支援を受けた菅政権の本質である。それがひとつだ。

 加えて、ジョブカード制度導入の旗振り役になった官僚が菅首相の秘書官に収まっている。厚労省出身の山崎史郎内閣総理大臣秘書官である。

 山崎秘書官は当時、内閣府大臣官房審議官として構想のスタート段階から中心人物としてかかわった。いわばジョブカードは「山崎プラン」なのだ。そんな官僚が菅首相の側近中の側近になっているのだから、ジョブカード廃止などという結論がそのまま承認されるわけもなかった。

 いまから3年前の07年5月に開かれたジョブカード構想委員会第一回会合の議事録をみると、山崎官房審議官は冒頭から議論の司会役を務めている。ちなみに今回の雇用戦略対話のメンバーでもある樋口美雄慶応義塾大学商学部教授も構想委員会のメンバーだった。自分たちがつくった「可愛い政策」を官邸にいる自分たちが潰すわけもないのだ。

 かわいそうなのは蓮舫行政刷新相かもしれない。

 せっかく苦労して事業仕分けで廃止の結論を出したのに、マスコミの注目が少なくなったかと思えば、さっさと菅・仙谷ラインが用済みとばかり、ずたずたに踏みにじってしまったのだから。

 蓮舫といえば「事業仕分けを含め自民党ができないことに取り組んでいるのに、国民から理解されない」と所属する野田佳彦財務相のグループ会合で涙を流したと報じられた。

 蓮舫は誤解している。

 国民に理解されないのは、菅政権が仕事をしているポーズばかりを強調して、実際には何もしていないからだ。国民はちゃんと見ている。蓮舫は都合よく菅と仙谷に使われているのである。

 蓮舫はこの際、大臣の職を賭けてでも徹底的に戦う姿勢を示したらどうか。そのくらいの覚悟で仕事をする政治家がいなければ、この政権の窮地を脱する道はない。

 (文中敬称略)

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