失速する米国携帯マルチメディア放送
日本は、本当に成功できるのか(後編)

前編 はこちらをご覧ください。

 いよいよ日本でも携帯マルチメディア放送*1 が間近になってきた。しかし、先行事例として注目されてきた米国のマルチメディア放送『フローTV(FLO TV)』は苦戦を続け、サービス終了の噂さえ飛び交っている。

 前回は、フローTV不振の原因として"サービスによる端末囲い込み"を取り上げた。今回は、有料放送モデルについて分析するとともに、日本版携帯マルチメディア放送が生き残るべき道を筆者なりに示してみたい。

フローTVは、安いか 高いか?

 米国のフローTVは、CATVや衛星TV放送と同じように有料サービスを採用した。米国ではテレビ所有世帯の約85%が有料放送サービスを利用する。とはいえ、ディバイスの囲い込みと並んで『有料モデルの採用』がフローTV不振の原因といわれている。

 フローTVにはABC、CBS、NBC、FOXという4大テレビ局を筆頭に優良番組がそろっている。米携帯業界最大手のベライゾン・ワイヤレスは、同サービスをV CAST Mobile TVという名称で、同2位のAT&TはMobile TVと称して、どちらも月額15ドルで提供してきた。ただ、2009年11月にAT&Tは契約者増加を狙って月額15ドルから9ドル99セントに値下げしている。

 この番組リストを見るとわかるが、フローTVのコンテンツはCATVや衛星TVで人気を集めているものばかりだ。選りすぐりのコンテンツではあるが、反面、多くの視聴者は家庭で録画すれば『わざわざ携帯で見なくても済む』ともいえる。

 専用携帯、既存人気番組、月額15ドル---というフローTVを米国の一般視聴者は魅力的と感じるだろうか。

*1 携帯電話向けの放送サービス。ワンセグはTV局のタワーを使うテレビ放送の拡張サービス。一方、携帯マルチメディア放送は通信事業者が主体となる携帯サービスの拡張ビデオ・サービス。日本では2012年をめどに試験放送を狙っている。
コムキャストHP

 たとえば、CATV最大手のコムキャストと比較してみよう。同社の基本契約(デジタル)はテレビ80チャンネル*2 とビデオ・オン・ディマンド(番組約1万7,000本*3 )、音楽45チャンネルで、月額約60ドルとなっている。また、コムキャストはモバイル・サービスも強化している。

 同社のホームページ(xfinity.tv)にアクセスすれば、ブロードバンドで番組(ビデオ・オン・ディマンド・サービス)を無料鑑賞できる。おかげで、タブレットやノートブック、スマートフォンなどがあれば、わざわざ録画しなくても、自宅やオフィスで様々な番組を見ることができる。

 このようにCATVなど米国の有料放送サービスは質量ともに充実し、モバイル分野にも積極的に参入している。こうした競合相手と比較すれば、フローTVが質量ともに十分で、割安であるとは言いにくい。多くの消費者にとって、新しい端末を買い、月々15ドルの費用を払う同サービスは、魅力不足だろう。

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