テロ組織を窮地に追いやる冷戦時代の"抑止戦略"
ニューヨーク・タイムズ(USA)より USA
現在の世界貿易センター〔PHOTO〕gettyimages

 いくら敵を倒しても、新たなテロリストが現れる---。泥沼化した対テロ戦争で、効果を発揮している戦略とは?

 2001年9月11日の同時多発テロが発生した後、ブッシュ政権は世界的な対テロ戦争に乗り出した。この戦いにおいて、米ソ冷戦時代の経験が生かされているという。

 米国は当初、テロ組織の指導者を標的とした武力攻撃を繰り広げたが、その結果、倒した敵と同じくらいの数の過激派を生むことになってしまった。

 こうしたなか、冷戦時代のやりかたが有効だと気づいたのは、9・11から何年も経ってからだった。それ以降は、テロ組織を威嚇したり、疑念を植え付けたりする戦略に転じた。

 たとえば、米国は「ハワラ」と呼ばれるイスラム世界の送金システムが、テロ組織の資金源になっていることに注目した。このネットワークを利用している企業を閉鎖に追い込んだり脅しをかけたりすることで、テロ支援を断念させることに成功したという。

 また、米軍にとってインターネットも戦いの場となっている。テロ組織はウェブ上で人員を募集し、資金を集め、世界規模の攻撃を計画するからだ。アルカイダはウェブで声明を出す際に認証マークを載せているが、米軍はこれを巧みに偽造し、テロ組織のメンバーを混乱に陥れるような矛盾した指令を送っているという。

ニューヨーク・タイムズ(USA)より

 さらに、テロ組織の指導者の携帯電話をハッキングする戦略も効果的だ。米軍が待ち伏せている場所にテロ組織のメンバーをおびきよせたり、仲間による資金横領や裏切りなどの噂を流したりすることができる。

 冷戦時代の敵と異なり、テロリストには守るべき都市や軍事施設、工場などがないため、揺さぶりをかけにくいという部分もある。だが、指揮系統や下部組織、支援網の脆弱性を発見して攻めるという目標は同じだ。テロ組織のネットワークの一部でも断つことができれば、全体を機能不全に追い込めるかもしれないからだ。

 こうした積み重ねが、ウサマ・ビンラディンの殺害につながったという。武力攻撃より注目度は低いものの、「抑止戦略」は対テロ戦争に欠かせないものとなっている。

COURRiER Japon

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