がんになって考えたこと、思うこと


はじめて自らの「死」の予感と正面から向かい合うことに。パニック、恐怖、覚悟。自分自身の弱さと強さを発見。

 はじめて自らの「死」の予感と正面から向かい合うことに。パニック、恐怖、覚悟。自分自身の弱さと強さを発見。そして、自らにとって何が大切なことなのかに気づく。胸に去来するわが人生・家族・仕事・運命。お金という現実の問題も。

日記に「神様助けて」と

「肺がんの告知を受けたあと、どうやって家に帰ったのか記憶がないのです。頭が真っ白になっていました。少し落ち着くと、『なんで私ががんになるんだ』という無念さがこみ上げてきました。その後2〜3日は、会社にはなんと説明しよう、仕事の引き継ぎはどうしよう・・・・・・と、そればかり考えていました」

がん患者団体 支援機構副理事長/ 三浦秀昭氏

 現在「がん患者団体支援機構」の副理事長を務めている三浦秀昭氏(54歳)は、金融機関のサラリーマンだった47歳のとき、「肺腺がんのステージⅢB」と告げられた。もはや手術はできない。医師からの説明を受けて「延命治療」という言葉が浮かび、深い絶望の淵に突き落とされた。

 2人に1人ががんになると言われている時代だが、がんと告知されることは、患者にとっては唯一無二の経験。そのときの衝撃は深刻だ。仮に早期だと言われても、脳裏には「死」の一文字がよぎる。

 歌手の島倉千代子さん(72歳)もそうだった。'93年に検診を受けた際、左胸に異変が発見された。早期の乳がんだった。

「仕事中はすべてを忘れるのですが、終わると体が震えてくるんです。『手術をしないとだめです』と医師から言われ、自分の病気が乳がんだと知ったときは、もう二度と自分の家には戻れないのだと思った。帰宅してから中学生の頃から書いていた日記をすべて焼き、洋服や写真などを捨てました。

歌手/島倉千代子氏

 まるで深い暗闇の中にひとりぼっちにされたようで、どうしてよいかわからず、何も考えられなくなりました。日記の一番最後のページには、『神様助けて』とただ一言、書きました」

 自分ががんであると知ったとき、人は何を思い、どのように考えるのか---。受け止め方は様々だが、大まかな傾向が見られるという。

 がん患者やその家族の精神的なケアを専門とする埼玉医科大学国際医療センターの大西秀樹教授によると、がんを告知されたとき、多くの患者が、三浦氏のように頭が真っ白になって何も考えられなくなり、めまいを起こして倒れるほどの衝撃を受けるという。

「でも、それは正常な反応です。今年の年末は家族と温泉に行こう、年明けには会社の新規事業を成功させて昇給を狙おう、老後のためにこれから毎月貯金しよう・・・といった、これまで立ててきた計画を一気に崩し去り、生きてきた意義を根本から覆してしまうのが、がんなのです」(大西教授)

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