経済の死角

「私ならこうする」 ICT政策タスクフォース構成員が「電波オークション制度私案」を公表

政務三役が今週にも決断

2010年12月13日(月) 吉川尚宏
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立ち退きコストをベンチマークしたオークションなど設計できるのか?

 総務省の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数ワーキンググループ」が11月30日に提出した「ワイヤレスブロードバンド実現に向けた周波数再編アクションプラン」(以下、「アクションプラン」)の電波オークションに関連する記述をめぐって、依然として論争が続いている(たとえばhttp://news.livedoor.com/article/detail/5188156/)。

 筆者は、上記ワーキンググループの親部会に相当するICT政策タスクフォースの「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」の構成員である。10年ほど前に海外で第三世代携帯電話の電波オークションの制度設計にアドバイザーとして関与した経験から、周波数ワーキンググループでも参考人として意見陳述を行っている。ただし、検討時間が不足していたためか、アクションプランでは筆者が指摘した論点はほとんどカバーされてはいない。

アクションプランでは、「移行後の周波数を利用するものを国が選定する際に、移行に要する経費の負担可能額の多寡やサービス開始時期等を踏まえて事業者を決定する方法を導入すべき」、「諸外国で実施されているオークションの導入については周波数再編等具体的施策の早期実現と合わせて、周波数再編の状況も踏まえた本格的な議論を進めることが必要」と記述はしているが、具体的な制度設計像が見えない。

もともと今回の電波オークションの検討は、9月10日に閣議決定された「電波の有効利用のため、周波数再編に要するコスト負担についてオークション制度の考え方も取り入れる等、迅速かつ円滑に周波数を再編するための措置を平成23年度中に講じる」という経済対策が発端となっている。

しかし、そもそも周波数再編に要するコストとオークションで決定される電波の利用価値は金額的に一致するはずがない。立ち退きコストをベンチマークしたオークションなどそもそもできないのではないかと、筆者はICT政策タスクフォースで疑問を呈してきた。

政務三役による最終的な意思決定の時期が12月中旬に迫っていることから、今回の電波オークション制度に関する論点整理を行いつつ、実現可能な制度設計案を提示してみたい。

電波オークションの制度設計の論点

 電波の問題は土地にたとえられることが多いが、土地の場合とは異なり、基本的にはすべて国有地である。この国有地の定期借地権の売買において市場原理を導入することが電波オークションである。しかも今回の場合は、更地の土地を対象とした定期借地権の売買ではない。すでに住んでいる人がいる土地を対象として、区画整理事業も同時に行いつつ、定期借地権の売買を行うというものである。こうした特長を踏まえ、制度設計の論点を整理してみたい。

1. 区画整理に伴うコストは誰が負担するべきなのか?
住民が住んでいる土地の区画整理の方法には大きくは二つある。

(1-a)いったん、国が立ち退き者予定者の定期借地権を買い取って権利を棚上げし、更地にしてから新規利用者に対する入札を行う

(1-b) 国ではなく新規利用者が立ち退き料を負担し、それを原資として立ち退きを支援する

 1-aの考え方は米国の周波数再編においても議論されているスキームであるし、今回も検討対象とすべきであろう。ただし、国に財政負担能力があるかどうかは別途議論が必要である。1-bはアクションプランで示唆されている方式である。
 

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