民主党は「日本の理系」を殺す気か
このままじゃ、日本は2番どころか20番になる
週刊現代 プロフィール

 11月16日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は記者会見を開き、「はやぶさ」の持ち帰った微粒子が、小惑星イトカワのものであると発表した。これは、月以外の天体から微粒子を採取した世界初の偉業だ。ところが、民主党は昨年11月の仕分け第1弾で「はやぶさ2」も含めたJAXA予算の大幅削減を決めており、このままでは「はやぶさ2」の打ち上げ('14年度予定)も不可能と見られている。

 そして、この偉業発表から2日後の11月18日、第3弾の事業仕分けで、JAXA予算の再仕分けが行われた。世論の「はやぶさ」支持を前に、枝野氏らはこれまでの舌鋒の鋭さはどこへやら、「宇宙開発の重要性は理解している」などと繰り返すばかりだった。

 ちなみに「はやぶさ」が持ち帰ったイトカワの微粒子は今後、大型放射光施設「スプリング8」を使って更なる解析作業が行われるが、こちらも予算削減対象。世界的に有名な施設にもかかわらず、この夏などは電気代の節約のため、稼働を停止せざるを得なかったほど、運営費は逼迫している。

 民主党政権の「日本の理系」に対する無理解は、事業仕分けだけではない。

 民主党は当初、「健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト」として232億円余りの予算を組んで、iPS細胞を用いた再生医療やワクチンを使ったがん最先端治療の研究などに充てる予定だった。

 ところが、この予算をいったんゼロにし、代わりに、菅総理の肝煎りで「元気な日本復活特別枠」という形で政策コンテストを行うことになった。要するに、iPS細胞研究やがんワクチン研究も、コンテストで認められないと予算が削減されてしまうのだ。

 そのため、山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所でさえ、予算獲得のため、政府に研究の必要性を訴える投書(パブリック・コメント)をしてほしいというお願いを行ったほど。常識的に考えて、日本のキラーコンテンツであるiPS細胞の研究予算が削られるとは想像しにくいが、この仕組みではそれもあり得るというから驚く。

 内科医で東京大学医科学研究所の上昌広特任教授が解説する。

「民主党の厚労部門会議が政策コンテストに推薦したのは、最低賃金補償、地域の医師確保などバラ撒き型のものばかりです。iPS細胞やがんワクチンのような、これからの日本の成長戦略に必要なものをまったく理解していません。だから、厚労省の最優先課題にも入りませんでした。

 経産省も一応、ライフ・イノベーション関連の予算を要求しましたが、省として本筋ではない。その結果、iPS細胞もがんワクチンも政策コンテストでは下から2番目の評価しか得られなかったのです。

 iPS細胞の山中氏、がんワクチン・ゲノム研究の東大ヒトゲノム解析センター・中村祐輔教授は、ともにノーベル賞候補。世界の研究者たちは、『あのヤマナカやナカムラがやっている研究を、日本がコンテストで落とすなんて大笑いだな』という思いで見ているはずです」

 このコンテストでは、先の「はやぶさ2」の開発費約30億円も対象になり、上から2番目のB判定に。ちなみに米軍への「思いやり予算」や地デジ普及のためのチューナー支援などがA判定だった。この結果は来年度予算に反映されるが、世界のトップを競っている研究者たちが、国内のコンテストで敗れるなど、シャレにもならない。

ダメージは10年後に出る

 それがどれくらい日本の損失になるか、がんワクチン研究について考えればよくわかる。

 内閣府に首相直轄の総合科学技術会議という組織がある。'01年の省庁再編の際に作られたもので、その年にどういう科学政策に重点を置くかを決める重要な会議だ。