旬を過ぎたロートル政治家ばかりが騒ぐ「大連立の亡霊」
大きな政府、官僚主導、増税路線で一致
〔PHOTO〕gettyimages

 永田町が一挙に流動化してきた。

 菅直人首相が8日に森喜朗元首相と官邸で会談したかと思えば、自民党の谷垣禎一総裁は読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長・主筆と党本部で会談した。同じ8日夜には小沢一郎元民主党代表と鳩山由紀夫元首相、無所属の鳩山邦夫元総務省、新党改革の舛添要一代表が4人で会食した。

 渡辺や森の狙いはなにか。

 新聞はじめマスコミは「民主党と自民党を軸にした大連立によって、局面の打開を図ろうする動き」と解説している。渡辺と森は福田康夫政権のときも小沢との会合を仲介して、大連立に動いた。今回も同じ流れという見立てである。

 渡辺に近い「たちあがれ日本」の与謝野馨共同代表も11月18日、菅と公邸で会談した。12月19日には小沢とも囲碁対戦する予定だ。与謝野も渡辺、森の大連立工作に加わっているのは間違いない。

 登場人物の顔ぶれには共通項がある。

 いずれも高齢で影響力を残してはいるが、ここ数年の政局でキーマンになりきれなかった人たちばかりである。ずばり言えば、とっくに「旬を過ぎた役者」なのだ。

 そんなオールドパワーが表舞台に飛び出してきた狙いを「国家、国民を考えて大連立を唱えている」とみるのは、あまりにナイーブすぎる。

 政治の世界も人間が動く世界だ。ひと皮むけば、そこらの会社や組織で演じられているドラマとたいして変わらない。

「夢よ、もう一度。なんとか流れをつくって自分たちの影響力を残したい」。これに尽きるとみていい。

 はっきり言えば、大連立がなろうとなるまいとどっちでもいいのだ。それよりも「生き残りを賭けて、政局の主導権を握る」。これが彼らの真の狙いである。

 こういう政局の節目で、新聞をはじめマスコミで働く記者たちには「取材相手や同業者には嫌われたくない」という心理が働く。

 相手や仲間に嫌われて、次の会合スケジュールや場所を教えてもらえなくなったりしたら一大事である。他社が全部取材しているのに、自分だけが知らずに「特オチ」する事態にもなりかねない。そうなったら、デスクに怒鳴られるどころか政治部から飛ばされたっておかしくない。政治取材の現場はそういうところである。

 だから、間違っても「大連立構想は旬を過ぎた人たちの影響力維持が真の狙い」などという、相手に嫌われる記事は書かない。一方でなにか動きがあれば、たいした意味がなくても、つい書いてしまう。

 だいたい、それぞれの会談を大勢のカメラが撮影していること自体、事の本質を物語っている。記者たちには事前に会合の時間と場所を伝えている。彼らにとっては、初めから「撮られる」ことが最大の目的なのだ。

 それが、オールドパワーたちのもっとも得意とする政治ゲームである。

カメラの前で嬉しそうな老政治家たち

 事が成就しようとしまいと、新聞はじめマスコミが自分たちに注目する。それによって存在感が高まる。記者たちに囲まれてコメントするときの表情を見ればわかる。なんと嬉しそうなことか。笑いをかみ殺しているのが手にとるようだ。

 それもこれも菅政権の求心力が衰え、にっちもさっちもいかなくなってきたからだ。菅政権は仙谷由人官房長官の処遇はもちろん、衆院での再議決に備えて社民党との関係をどうするか、など大問題をいくつも抱えている。

 予算編成と税制改正が待ったなしであるにもかかわらず、いまだに法人税引き下げ問題一つとっても着地点は見えてこない。

 民主党内も騒がしい。谷亮子参院議員ら小沢を支持する参院議員9人のグループが党本部に乗り込んで、小沢の国会招致反対を唱えて岡田克也幹事長と直談判した。小沢支持グループは逆に両院議員総会の開催を要求し、党内を二分する騒ぎになっている。

 大連立構想を進める勢力は、渡辺喜美みんなの党代表が9日のコラムで明確に指摘したとおり「大きな政府・官僚主導・増税路線」である。

 政策路線はそれなりに一貫している。そういう勢力が大同団結を唱えるのは、いいことだ。国民の目に、政策の対立軸がはっきり見えてくるからだ。

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