ガイナーレ鳥取 「田んぼの中の敗者復活戦」
念願のJ昇格! 月給20万円弱の若手、
戦力外通告を突きつけられた元日本代表の男たち
10月24日、ガイナーレ鳥取は栃木ウーヴァFCに勝ちリーグ初優勝を飾った 〔PHOTO〕安田健示

[文:小宮良之(ノンフィクションライター)]

「町が元気になった。みんなが注目しているのよ」

 鳥取市内にある老舗寿司屋の女将さんは嬉しそうに語った。快進撃に地元は沸いている。試合の翌日は地元紙の1面を飾り、テレビ4チャンネルはこぞってニュースを流す。今シーズンは1試合最高で9500人以上の観客を集め、県民の関心がこの上なく高まっている。

 11月29日、プロサッカークラブ「ガイナーレ鳥取」のJリーグ加盟が決まった。

〔PHOTO〕安田健示

 挑戦の先頭に立つのは、Jリーグのクラブで戦力外通告を受けた面々だ。その中には、かつて日本代表としてJリーグを鮮やかに彩った二人のベテラン選手もいた。

「サッカーから離れられないんすよ」

 笑い皺を作り、彼らは言う。

乱暴な刺激で選手を鼓舞"野人"いまだ疾走中!

「サッカーは心臓みたいなもんですよ。止めてしまったら、俺も終わってしまう。今は体力的にも若手に負けていないと思っているし、辞められない。心臓が動く限りは」

 38歳になる岡野雅行は心意気を語った。愛称は"野人"。風を切るようなスピードが魅力だった。日本史上初のW杯出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」の決勝点は今後も語り継がれるだろう。

 しかし、そんな野人も'08年を最後にJ1浦和レッズから戦力外通告を受け、香港リーグのペガサスを経た後、'09年途中にJFLのガイナーレと契約している。浦和時代、最高年俸7000万+試合勝利給80万円、さらには商品メーカーとの契約も含め、夢の職業を謳歌したが、現在の年俸は男性サラリーマンの平均年収と変わらない約500万円までダウンした。家族を東京に残し、「妻や子供に会えるのは一ヵ月に一度」の単身赴任生活だ。

 それでも、彼は迷わず現役続行を選択した。