白熱激論! 田原総一朗×孫正義「第3のパラダイム転換を迎えた日本」
電子教科書は日本を救うか 第1回

田原:孫さんが最近、しきりにおっしゃってる「光の道」というのがあります。ただ一般の人には(どういう問題なのか)よく分からない。

 もう一つ、90年代はビル・ゲイツの時代だったといわれています。これはいわばコンピュータ、パソコンを動かすソフトが中心でウィンドウズの時代でした。

 で、今はスティーブ・ジョブスの時代だといわれる。まさに孫さんがやってらっしゃるiPhone、iPadもそうですが、これからクラウドの時代だという。

 日本でいちばんクラウドの最先端にいらっしゃるのは孫さんでしょう。今日はそのへんからまずお話をお聞きしたいと思います。

孫:クラウドの時代と最近はいわわれはじめていますね。一言でいうなら、インターネットの雲の上のようなイメージです。

 これまでは会社でいえば社内にサーバーがあって、それにパソコンが繋がっていた。自宅でいえば自宅にあるパソコンで、その中のソフトやデータを使ってそのまま仕事をするということでした。これが変わった。

 ネットワークの上に、たとえばグーグルのサーバー群がズラッとある、ヤフーのサーバー群がズラッとある、そういうネットワークの上に全部まとめてある情報の固まり、それを世界中の人々が、まるで直接、会社の中でアクセスしているように、自宅の中でアクセスしているように、一瞬でその情報を手に入れることができる。これがクラウドコンピューティングだと思うんです。

田原:クラウドとは日本語で「雲」ですね。

孫:「雲」です。

田原:コンピュータの世界ではパソコンを100台繋ぐと、スーパーコンピュータ以上の力が出ると言われてますね。

孫:ありとあらゆる情報が入る。たとえば医療でいえば、日本国民全員の健康診断の情報、いろんな検査の情報、それがすべて格納されている大きな巨大なデータベースセンターみたいなものですね。

田原:今は別の病院に行くと、また一から診察しなきゃいけない。

孫:そうなんですね。だから、一つの大きな、例えば虎ノ門病院なら虎ノ門病院の中で検査結果は全部終了してその中にデータはあるんですけども、慶応病院に行ったらまたもう一回ゼロから検査をしなくてはいけない。

田原:今はそうなっています。

孫:これが「医療クラウド」という形でできると、日本中の病院、しかも大病院だけではなくて、小さな町のクリニックで受けた検査も、共通の一つの巨大なデータセンターにすべての病院の情報が入っている。いまは、小さな町のクリニックでは、いくら腕に自信のあるお医者さんでも、優れた機械、高い何億円もする機械がないから複雑な診断ができない。

田原:わざわざ東京に来なきゃいけない。

孫:ところがこれからは、検査なら検査ばかりする巨大な高い何億円、何十億円する検査システムがあるところで人間ドックとか受けて、その結果を町のお医者さんがクラウドから引き出して、そこでホームドクターのような形で検査結果を見ながら診断できる。

 また、セカンドオピニオンで別のお医者さんに聞きたいといったら、またそっちへ行けばいい。

 医療の世界一つでも、それが言える。教育の世界でもそれが言える。あるいは企業の中でも自分の取引先とのデータだとか、業界全部の情報が入っているとか。

情報を活用する力さえあれば大資本に負けない

田原:企業でいうとどういうことができますか、クラウドになると?

孫:個人情報については伏せなくてはいけないところはいろいろありますけども、個人情報に関わらないところで、例えば自動車業界で言えば自動車業界全部のあらゆる部品がすべて入っている。どこの整備工場でいま車検のスロットが空いてますとか、整備担当者の誰々が空いてます、なんて情報が共有できる。

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 旅行に行くのでも、ゴールデンウィークの三日前なのに、まだ空いている部屋はどことどこだ。いままでなら、例えばヤフートラベルならヤフートラベルの中だけ閉じている。もし旅行業界全部の「旅行業界クラウド」というのができれば、楽天トラベルもヤフートラベルも、JTBもHISも、いろんな情報が全部「旅行業界クラウド」で調べることができる。例えば・・・。

田原:それはユーザーにとってはとってもいいですね。

孫:うん、そうですよ。

田原:でも、企業にとって見るとね、優劣がなくなっちゃうと商売にならないんじゃないですか。

孫:だからそれを上手に使いこなせる企業と、後ろからついて行く企業の差が出てくるとは思います。でも少なくとも今までは大資本で多くのお客さんを持っている企業だけが差別化できる、大企業であるが故のメリットだったのが・・・。

田原:大きいことがいいことだと。

孫:今まではですね。だけど今度は町の工場だとか町の中小企業でも、大企業と同じだけの情報武装ができる。同じように病院だって、大病院でも必ずしも力のある先生ばかりとは限らないわけですね、案外、大病院ほど若いお医者さんだったりするわけですよね。

田原:つまり情報も、ユーザー、患者に分かるわけだね。

孫:そうですね。

田原:例えばがんセンターならこの医者はいいと。

孫:そうそうそうそう。

田原:でもこの医者は大したことないよと。

孫:そうです。だからやっぱり「見える化」が始まるっていうことですよね。とにかく20世紀というのは、ものづくりでも大きな資本、大きな工場を持っているところが全部有利。これはまさに資本主義の世界ですけども。

田原:今でもまだ残ってますね。

孫:でもこれからは資本があるところが強いというより、情報を上手に活用できる人々が強い。情報の民主化みたいなものができて、従って中小企業でも、あるいは個人のお医者さんでも優れた能力さえあれば、あるいは情報を活用する力があれば、大資本と互角に戦える時代が来たということだと思いますね。

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